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「70年以上生きてきて、何もやってこなかった男の寂しさが分かるか」

»2011年6月23日
メディアとWebと人材と

「70年以上生きてきて、何もやってこなかった男の寂しさが分かるか」

中嶋 嘉祐

理系学生向け就職情報誌『理系ナビ』初代編集長。ベンチャー2社で事業責任者として上場に向けて貢献するも、ライブドアショック・リーマンショックで未遂に終わる。現在はフリーの事業立ち上げ屋。副業はライター。現在は、MONOistキャリアフォーラムMONOist転職の編集業務等もお手伝い中。

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日本テレビ会長の故・氏家 齊一郎氏の発言です。溜め込んでいたポッドキャストの「鈴木敏夫のジブリ汗まみれ」でこの台詞を聞いて、思わず心を打たれました。

スタジオジブリを語る上で欠かせない故・徳間康快社長が亡くなった時、氏家氏が弔辞を担当されたそうです。鈴木プロデューサーがその御礼に伺った時、氏家会長は徳間社長のことを振り返り、「すごいプロデューサーだった。立派な仕事を次から次にやってのけた。『もののけ姫』だってそうだ。あんな大金をかけて1本の映画を作るなんて、小心者の俺にはとてもできない」とため息。

その後、出てきたのが冒頭の台詞。「俺の人生、振り返ると何にもやっていない。70年以上生きてきて、何もやってこなかった男の寂しさが分かるか」というもの。

これに対して、鈴木プロデューサーはマスメディアの中で氏家会長が果たしてきた役割や、日テレの経営を立て直したことについて言及されたそうですが、氏家会長は「バカ野郎」と一喝。「読売グループのあらゆるものは正力松太郎さんが始めたもので、それを後輩たちが守ってきた。俺だってその1つを任されているに過ぎないんだ」と答えたそうです。

そして続けて口から出てきた言葉が「死ぬ前に何かやりたい」。その後、『千と千尋の神隠し』がヒットした時には、お祝い会の音頭を取ったということです。


私は愛知県出身。生まれた時からのアンチ読売グループなのですが、この話を聞き、過去30年ちょっとの人生の中で読売グループに対して最も好感を抱きました。社会的に成功したと言われている立場の人でも、そんな気持ちを抱いていたんだな、と。

私自身、「せっかく生きているんだから、何かを残したい」と強く思いつつも、これといったものを残せないまま今に至っています。今でもフリー生活を続けながらも、仕事で何かを残せる機会はないかとあがいているような状況です。

年収や福利厚生、ワークライフバランスなど、そういったものも大事です。でも、それ以上に人間として生まれたからには、何かを残して死にたいじゃないですか。

故・氏家会長は、70歳を過ぎてからでも動かせるお金や人に恵まれていました。けれど、普通の社会人生活を送っている人が、晩年になってから「何もやってこなかった」と後悔しても遅いんですよね。

その何か、が別に仕事じゃなくて、家庭や趣味、子育てでも価値は変わりません。けれど、仕事で何かを残したいのなら、環境を変えないと、どうしようもないこともあるのです。

待遇や環境の変化を求めての転職を否定するつもりはありませんし、同情することもありますが、応援する気はあまり湧いてきません個人的には転職するのなら、「死ぬ前に何かやりたい」という思いを持って転職してほしいと願っています。

※ 前回の次回予告と違う内容ですが、忘れないうちに、と思わず書いてしまいました。次回は予定通り、過去2回分のまとめ的な話を書こうと思っています。

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