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行きつけのカーショップの躍進に見る「選択と集中の」大切さ

行きつけのカーショップの躍進に見る「選択と集中の」大切さ

波多野 謙介

コラボリズム株式会社 代表取締役で文系プログラマー。超朝型へのスイッチで、仕事と家庭の両立を目指す二児の父。

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10月か11月の頭くらいに、行きつけの車屋さんで注文したスノータイヤがいつまで経っても届かないので、問い合わせをしてみると、どうも、手配漏れがあったらしい。

こちらとしては12月の頭にも一度念押ししてる事もあり、電話越しに困りますねえ、みたいな事を言ってたところ、お願いしていた社長さんが忙しくてショールームにいるとか埼玉にいるとかでこっちの店舗には居ないとか、タイヤの経が特殊で手配が難しいとか、まあ、いろんな理由を話してくれるので、ふむふむなどと聞くともなしに聞いてたのですが、徐々に「埼玉?」という単語が僕の心の中で、でっかいクエスチョンマークになっていきました。

Junkyard Dog
Junkyard Dog / TheGiantVermin

確かこのお店、僕が車を買った一昨年は、兵庫県の外れ、小さな道沿いのガレージ営業で、社長が直接対応してくれて、ガレージの隅には毛ボサボサの可愛い犬が手作りの犬小屋からしっぼを振ってるような家族的な雰囲気のお店だったはず。そんな急に店舗が拡大するかな。しかも埼玉?埼玉っぽい兵庫県の地名との聞きまちがい?

電話では聞きそびれてしまったので後からインターネットで調べてみると、そのお店はこの1年半程の間に大型の4WD車が10台程並ぶ立派なショールームを構え、埼玉にも店舗を出店。元の店と合わせて合計3つに店舗を持つ店に事業を拡大していたのでした。

もちろん、いくら事業が拡大して忙しくてもオーダーを忘れることの言い訳にはならないと思うので、もっとクレームをつけるべきなのかも知れませんが、僕の頭の中にはクレーム心よりもむしろ、キャメル色にペイントしたナローボディのハイラックスサーフを「いい色ですねえ」と言った時の社長の嬉しそうな顔が浮かんできていて、なんか知り合いが一旗上げたような、よく頑張ったなあみたいな感慨だけがあり、こんな事を書くと妻に怒られるかも知れませんが、正直ちっともクレームをつける気にはならなかった。それにこのお店、あとづけで言うのも何ですが、前から成功しそうな気配はあったのです。それは「選択と集中」です。

信念と技術力が可能にする「選択と集中」

「選択と集中」というのは得意分野を明確にして、そこに経営資源を集中させる戦略です。このショップの場合はトヨタの「ハイラックスサーフ」という車種に特化し、他の車はほとんど取り扱わないという「選択と集中」を行なっています。

「ハイラックスサーフ」自体はもう製造中止になっているモデルですが、昔はかなり売れた車なので、市場に出回っている数はまだまだ多く、仕入れに困ることはありません。中古の中心価格帯は2000年式で70万円~100万円くらいで、このお店はそういった中古のサーフを仕入れて、ペイントしなおしたりホイールをゴツくしたり、フロントグリルをメッキにしたり、内装を革っぽくしたりして、カスタマイズして販売します。

これってどんな人が買うかというと「他の人とは違う車に乗りたい」人で、でも「外車を買う程のお金も出せない」人でしょうか。つまり僕のような人間です。このカスタマイズ版ハイラックスサーフ、2000年式くらいなら1300CCの新車のファミリーカーくらいの値段で買えて、さほど高くもないですし、また中古ではありますが安定していた時期のトヨタの車ですから故障はほとんどありません。つまり購入者のメリットも多くて、ニーズがありそうな商売なのです。

一方、カーショップとしての立場から見れば、取り扱う車種が絞られるのでメンテナンスが楽だし、技術も蓄積しやすいし、プレミアを付けて販売することで利幅も増える。ホイールとかリフトアップの加減で渋めのデザインにしたり、イケイケにしたりと色々なラインナップを揃えられる。客層は元々変わったものが欲しい人だから、購入時だけではなく、購入後にも継続して内装を改装したり、ホイールを変えたりとちょくちょくお金を払う人も多いといった感じで、多くのメリットがある訳です。

しかしこの選択と集中、誰にでもできる事ではありません。このカーショップが、元々「変わったものを作りたい」という信念があって、その信念の中で失敗を繰り返しながら、技術力を磨き、方向性を模索してきたから今があるのです。実際、昔はベース車両にハイラックスサーフではない別の車両を使っていた時もあったと聞きます。

そしてなんかこれは、他人事ですが他人事では無い感じ。ジャンルは違っても僕とやっている事が近い気がします。だから、このお店の成功が嬉しかったのかも知れません。このカーショップの社長、僕と同い年ですし。


その後タイヤは無事届きました。受け取りにショールームに行ってみると、思ったよりも遥かに立派なショールームでビックリしましたが、約束の時間の少し前に行ったらお店には誰もいませんでした。(昼飯?)そんなところは以前と変わってないな、と思ったりして...その辺も含めて立派なお店になるよう、これからも頑張って欲しいと思います。