誠ブログは2015年4月6日に「オルタナティブ・ブログ」になりました。
各ブロガーの新規エントリーは「オルタナティブ・ブログ」でご覧ください。

2012年に人事として成長するための6つのコンピテンシー(本家によるさらに詳細な解説)

2012年に人事として成長するための6つのコンピテンシー(本家によるさらに詳細な解説)

クレイア・コンサルティング

人事・組織領域を専門とする経営コンサルティングファーム、クレイア・コンサルティングの広報・マーケティングチームです。

当ブログ「未来の人事を見てみよう」は、2015年4月6日から新しいURL「​http://blogs.itmedia.co.jp/creiajp/」 に移動しました。引き続きご愛読ください。


クレイア・コンサルティングの調です。こんにちは。本日のエントリはイギリスの人事専門雑誌、HR Magazineより。
12/28のエントリで概要を、1/5のエントリでやや詳細版をお届けしましたが、もう少しボリュームの増えた解説記事が、研究を行ったD. Ulrichらによって書かれています。


Exclusive: The six competencies to inspire HR professionals for 2012
(限定記事) 2012年に人事プロフェッショナルにインスピレーションを与える6つのコンピテンシー

http://www.hrmagazine.co.uk/hr/features/1020649/exclusive-the-competencies-inspire-hr-professionals-2012


研究の詳細は前段の記事などに譲るとして、今回まず紹介されていたのは「バランス」の問題。
よく人事はバランス感覚に優れている必要がある、と日本でも言われますが、そのバランスはどのような二項対立の中でとられるべきものなのか。
Ulrichたちは以下の6点を挙げています。

  • outside/in: HR must turn outside business trends and stakeholder expectations into internal actions
  • business/people: HR should focus on both business results and human capital improvement
  • individual/organisational: HR should target both individual ability and organisation capabilities
  • event/sustainability: HR is not about an isolated activity (a training, communication, staffing, or compensation programme) but sustainable and integrated solutions
  • past/future: respect HR's heritage, but shape a future
  • administrative/strategic: HR must attend to both day-to-day administrative processes and long-term strategic practices.

短期/長期の部分をイベント/永続性と言っているあたり、単発イベントのみで長期視点に立っていない施策が多く見られることに警鐘を鳴らしているように思われます。


さて、その上での6つのコンピテンシーですが、今回はそれぞれのコンピテンシーについてさらに長文の定義と解説がついています。詳細は原文を読んでいただくとして(平易ですが一文がひたすら長いところがUlrichの文章の難点...)、特に気になった部分を見てみましょう。

Strategic positioner. High-performing HR professionals think and act from the outside/in....
They understand the general business conditions (eg social, technological, economic, political, environmental and demographic trends) that affect their industry and geography....

先ほどの二項対立でいえばoutside→inという部分にあたるかと思いますが、実際のところ、自社の事業や事業環境、競合の状況などについて熟知していたり、興味を持って常にキャッチアップしている人事担当の方は、印象論ではありますが、それほど多くないように思います。採用担当の方は学生の方に説明するためにもこのような事項を幅広く押さえておく必要がありますが、それ以外の方ももっと自社や市場のことを知ることで、さらに自社の強みを見出すことが出来るのではないかと思います。個人的にもお客様の会社や事業環境のことを調べていくうちに、よりその会社のことが好きになり、さらに解決へのイメージが膨らんでいくものだと感じています。

Credible activist....Credibility comes when HR professionals do what they promise, build personal relationships of trust and can be relied on....
Some have called this 'HR with an attitude'. HR professionals who are credible but not activists are admired, but do not have much impact. Those who are activists but not credible may have good ideas, but not much attention will be given to them....

「行動する人事」という言葉をよく聞きますが、行動と信頼性のセットが重要、という話ですね。また、信頼性の基点がチームというよりも"personal"であることにも留意が必要かと。人事を担当する一人ひとりの信頼性が、人事全体の信頼の基盤になっています。前回までのコンピテンシーの階層では、この項目が最上位にいましたが、今回は再び全てが並列に並んでいるようです。

Capability builder....Organisation is not structure or process: it is a distinct set of capabilities....
Capabilities have been referred to as a company's culture, process, or identity....
Capabilities include: customer service, speed, quality, efficiency, innovation and collaboration.

組織とは構造やプロセスではなく、独立したCapability(能力)の集合体だ、という考え方のようです。一方で能力とはしばしば企業の文化やプロセスやアイデンティティとして参照される、とのこと。ここに掲げられた、いわばバリューなどとも近い能力について、貴社はその能力を保有し育てているでしょうか?

Change champion....As change champions, HR professionals help change happen at institutional (changing patterns), initiative (making things happen) and individual (enabling personal change) levels. To make change happen at these three levels, HR professionals play two critical roles in the change process. First, they initiate change, which means they build a case for why change matters, overcome resistance to change, engage key stakeholders in the process of change and articulate the decisions to start change. Second, they sustain change by institutionalising change through organisational resources, organisation structure, communication and continual learning.

3段階での変革の推進、そしてそのためには2つの必須役割がある、とのこと。とはいえ、変革管理は個別に背景や現象も異なり、起業家育成やイノベーションと同様公式がないもの。この3段階のどこに効くように、またどちらの役割で各施策を行っているのかを常に自問することに意義がありそうです。


Human resource innovator and integrator. Effective HR professionals know the historical research on HR, so they can innovative and integrate HR practices into unified solutions to solve future business problems. They must know the latest insights on key HR practice areas related to human capital (talent sourcing, talent development), to performance accountability (appraisal, rewards), organisation design (teamwork, organisation development) and communication.


futureの部分について少しでもお役立ちできれば、というのが本ブログの主旨ではありますが、当然ながら人事にまつわる過去の理論的研究も同様に重要です。past "and" future。他社の事例は先進的なものも伝統的なものもそれぞれ役には立ちますが、それを活用しつつも自社に本当に適した、かつ、eventではなくsustainabilityのある仕組みにしていくことが重要ですね。とはいえ、agile(鋭敏)な時代でもあり、思考錯誤しながら進めていくという、agile開発やプロトタイプ的な進め方も求められており、人事というセンシティブな分野を扱う上では難しい時代に入ったと感じます。


Technology proponent....Technology plays an increasingly important role in improving communications, organising administrative work more efficiently and connecting inside employees to outside customers. An emerging technology trend is using technology as a relationship-building tool through social media....
Those who understand technology will create improved organisational identity outside the company and improve social relationships inside the company.


日本においてアメリカと同じレベルまで人事関連のテクノロジー活用が延びてくるとはあまり思えないところもあるのですが、特に採用面でのソーシャルメディアの活用をはじめとして、人事におけるITリテラシの重要性は徐々に高まってきていると思います。Salesforce社が、Facebook社も社内で活用しているRyppleを買収したのがこの年末の大きなトピックでしたが、いかにITを工夫して活用することで現場を支援できるか、future lab(未来を実験する場)として人事が率先してITを活用しながら考えていくことが必要だと思います。



さらにこの記事では、人事が知るべきこと、やるべきことについてもまとめられていますが、基本的には上記6コンピテンシーの裏返しなので割愛。最後に6人の人事実務担当者による、それぞれのコンピテンシーについての感想や期待感についてのインタビューが書かれていますので、お時間のある方は是非そちらもお読みになってくださいませ。


人事・組織の課題解決を通じて各社の経営をよりよくしていけるよう、当社としてもさらに研鑽して参ります。

ご一読感謝です。



この後メルマガを配信します。原則木曜午後配信(新年一発目だけ金曜になってしまいすみませんでした)。追って登録されても最新号が届きます。さすが手動!