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分解して分類して関連づけるという単純な習慣の威力
技術屋のためのドキュメント相談所
分解して分類して関連づけるという単純な習慣の威力
IT技術者経験をバックグラウンドに、技術系の専門的な情報を「分かりやすく書く」スキルの指導を得意とするドキュメント・コンサルタント。技術者向け文書作成研修経験多数。
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技術屋のためのドキュメント相談所・所長の開米です。
前々回・前回と、「特性・効果・用途」あるいは「仕組み・機能・用途」というパターンについて書いたところで、この例文を見てみましょう。
【化学気相成長法の特徴】
(a) 高真空を必要としないため、製膜速度や処理面積に比して装置規模が大きくなりにくいメリットがある。
(b) 製膜速度が速く、処理面積も大きくできる。このため大量生産に向く。
(c) PVD、MBEなどの真空蒸着法と比較すると、凹凸のある表面でも満遍なく製膜できる。
(d) 基板表面と供給する気相の化学種を選ぶことで、基板表面の特定の部位にだけ選択的に成長することが可能である。出典:Wikipedia日本語版「化学気相成長」の項、2010年12月10日 (金) 00:03 UTC
(Wikipedia情報ですので正確さは保証されません)
たとえば、
「高真空を必要としない」・・・これは特性、ですね。
「製膜速度や処理面積に比して装置規模が大きくなりにくい」・・・その特性によって得られる効果、ですね。
したがって、「製膜速度が速く、処理面積も大きく出来る」・・・同じことを逆から言っているので、「効果」です。
だから要するに何に使えるのか? というと
「大量生産に向く」・・・用途、です。
そういう目でもう少し整理してみた結果がこうです。
赤字の部分は、元の文中には情報が無い部分です。
(6)の「特殊な形状の薄膜形成」は、(5)と(8)の意味はこういうことなのではないか、ということを私が推定して書きました。
(4)(7)はそれぞれ(5)(8)という効果をもたらす特性で、おそらく何かあるのでしょうが、原文だけではわかりません。
何をやっているかというと、分解して分類して関連づけをしているわけです。
一文で書かれていた情報を「分解」し、特性と効果と用途に分類し、それぞれ因果関係があるものを関連づけた結果がこうです。
ただし、専門知識が無いのでわからない部分があります。でも、自分ではわからなくても、こういう形で整理をすると、「ここがわからないので教えてください」と聞きに行けますよね。
「(5)凹凸のある表面でも満遍なく製膜できるのは、なぜなんですか?」
とか
「(8)特定の部位にだけ選択的に成長させられるということは、特殊な形状の薄膜を作れるという意味に考えていいんでしょうか?」
のように、詳しい人に質問することが出来ます。
質問される方としては、そうやって分からない部分を特定して質問してくれると非常に答えやすいので、たとえ忙しいときでもわりと親切に答えてくれることが多くなります。しかも、「ああ、こいつはちゃんと自分で調べて考えてるんだな」ということがわかるので、良い印象を与えられるわけです。
なので、できるだけこういう努力をしたほうがいいんですよね。
「文章」で書かれた説明文を単にそのまま読んでわかった気になるのではなく、分解して相互の関連性を見極め、穴があったり矛盾がある部分を見つけて詳しい人に聞く、ということをするべきなのです。
そういうことをしていると、「特性・効果・用途」のようによくあるパターンが何度も出てきます。3回ぐらい同じパターンを見つけるとだいたい覚えますから、4度目以降は「あ、いつものアレだな」でわかるようになります。
「分解して分類して関連づける」という単純な習慣をつけることで、報告書やら企画書やら事務連絡やら、あらゆるビジネス文書をわかりやすく書けるようになっていくわけです。
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