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「期待」と「不安」、どちらが強い?-新入社員とのコミュニケーション(その前に)

「期待」と「不安」、どちらが強い?-新入社員とのコミュニケーション(その前に)

原田 由美子

HRD(人材育成)サービスを提供するコンサルティング会社の代表です。

当ブログ「ひといくNow! -人材育成の今とこれから-」は、2015年4月6日から新しいURL「​http://blogs.itmedia.co.jp/harada6stars/」 に移動しました。引き続きご愛読ください。


報道によると、2014年は約86万人が新社会人になったそうです。そして、今まさに新入社員研修を実施している企業も多い時期ですが、もしかしたら誠ブログの読者の中に、「新入社員研修で話をして」と頼まれている方もいらっしゃるのでは?

そこで今回は、ここ数年の新入社員の傾向について、私自身が感じていることをお伝えいたします。新入社員に関わる方が、今後、コミュニケーションを取る上でのご参考になれば幸いです。

さて、早くも2014年入社の新入社員の傾向を示すデータが出ています。それは、明治安田生命保険相互会社が2014年入社予定の新卒男女1,056人に、2月下旬にインターネットで実施した意識調査です。その調査結果の一部をご紹介いたします。

◆「社会に出ることへの期待と不安」
 社会に出ることへの期待(選択項目9項目、複数回答)
 1位:経済的に自立できる     (2014年49.1%/2013年54.6%)
 2位:仕事を通して自己成長できる(2014年46.2%/2013年51.2%)
 3位:たくさんの人と出会える   (2014年24.2%/2013年30.3%)
 4位:人生の目標が達成できる  (2014年21.0%/2013年21.3%)
 5位:日本経済の一翼を担える  (2014年18.8%/2013年16.9%)

 社会に出ることへの不安(選択項目12項目、複数回答)
 
1位:仕事に対する自分の適性      (2014年37.3%/2013年43.5%)
 2位:先輩や上司とのコミュニケーション (2014年36.0%/2013年42.8%)
 3位:違法な長時間労働や、サービス残業(2014年24.8%/ ―)
 4位:配属先・職務内容が希望と違う   (2014年21.9%/2013年24.1%)
 5位:収入が期待通りでない(安定しない)(2014年18.8%/2013年22.1%)

上記は、「期待」と「不安」の上位5項目ずつをピックアップしたものです。

「期待」については、2人に1人ぐらいの割合で「自立」と「成長」という結果です。やはり、自分の働いたお金で、自分の望む生活を手に入れる=経済的に自立できる、のは嬉しいものですよね。あと数週間もすれば初任給を貰える。その時に、よりそのことを強く感じる人も多いかもしれません。

しかしその一方で、本調査結果内のコメントによると、「期待」項目の「1位」と「2位」は、2009年の該当項目調査以来、初めての50%割れとのこと。多い年で60%だったので、1割減となっているそうです。

そこで、「不安」の項目に目を移し前年と比較すると、全体的に3~5%ずつ減少しています。但し、今年新たに追加された「違法な長時間労働や、サービス残業」について、約4人に1人の割合で「不安を感じる」と回答しています。

この結果から、どのようなことが言えるのでしょうか?

◆「失敗」を恐れる?新入社員世代
ここ数年、新入社員研修やフォローアップ研修などで新入社員世代と接していると、あることについて、必要以上に過敏になっているように感じることがあります。

それは「失敗」です。

「失敗」には、2つの種類があります。
1つは、自分が要因となり引き起こすものです。例えば、仕事のミスなど。忙しい上司や先輩に時間を取ってもらうことをためらい、確認が出来ずにミスにつながるもの。認めてもらいたくて、頑張りすぎて、行き過ぎが生じ、結果として迷惑をかけてしまうもの。

そして、もう1つの失敗は、その時の自分に対応しきれないものです。例えば、入った会社の経営に不安がある(行き詰る)、組織に倫理観がない、問題ある言動を繰り返す上司や先輩がいるなどです。

彼らと接していると、2つの種類の「失敗」を同じカテゴリーの「失敗」というフォルダーに入れ、とにかく「失敗しないように」、「失敗しないように」ということに意識を向けているように見えます。その結果、任された仕事も「失敗しないように」ということが先に立ち、その結果、自分から進んで何かをすることよりも、受け身で、望まれた範囲の中で対応しようとする意識が感じられます。

研修で接する彼らの「失敗をしないように」ということと、アンケート結果に反映されている「不安」に、共通の要因を感じるのです。

◆まずは「不安を持つ人が増えている」ことを知っておく
以上の事から、最近の新入社員世代は、不安を持つ人が増加していると、私は感じています。その不安も、自分の努力で対処可能なものから、自分にはどうにもできないものまでを一緒にし、「不安」というフォルダーの中でごちゃごちゃになっているように見受けられます。

人間誰しも、不安は抱えているものです。上司や先輩になったからと言って、不安がなくなるかと言ったら、そんなことはありません。逆に増えたり、大きくなることもあります。

しかし、社会人経験が長くなってくると、その不安と付き合えるようになってきます。

その不安との付き合い方こそ、伝えてほしいことの1つです。

もし、「新入社員研修で話をして」と言われたら、ご自身が不安だったこと、心配だったこと、失敗した出来事、或いは、同期の仲間が不安を感じていたこと、心配していたことなどを、ちょっと思い出してみてください。

次回は、そうした経験を伝える上でのポイントをお伝えします。

【参考記事】
明治安田生命保険相互会社 2014年3月25日発表
2014年新入社員アンケート調査
http://www.meijiyasuda.co.jp/profile/news/release/2013/pdf/20140325_01.pdf