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"理想の組織づくり"を目標に、新入社員育成を考える

"理想の組織づくり"を目標に、新入社員育成を考える

原田 由美子

HRD(人材育成)サービスを提供するコンサルティング会社の代表です。

当ブログ「ひといくNow! -人材育成の今とこれから-」は、2015年4月6日から新しいURL「​http://blogs.itmedia.co.jp/harada6stars/」 に移動しました。引き続きご愛読ください。


こちらが期待する行動を、なぜ新入社員が取れないのか―経済産業省『社会人基礎力』の調査から考えられる仮説(前回記事参照:http://blogs.bizmakoto.jp/harada6stars/entry/1968.html)から言えることは、"目指しているものが違う"ということのようです。それでは、"目指すものを1つにする"=組織目標とベクトルを合わせるために、どのように新入社員を育成していったらよいか、今日から数回に分けてご紹介します。

理想の組織づくりは、新入社員育成をきっかけにするのが近道

"新入社員育成"というと、"組織風土になじませて、必要な知識を教えれば良い"と、お考えになるかもしれません。そう考えているとしたら、とてももったいないです。なぜもったいないか。新入社員育成は、見方を変えると、組織風土改革に非常に適しているからです。組織風土改革ーというと、ちょっと大げさかもしれません。しかし"会社が(次のように)変わればよいな~"と、感じたことはないでしょうか?

 ・自分のアイデアや考えを伝えやすく、活かされやすい、風通しの良い職場

  (その反対:意見を言っても無駄、言うと大変になる職場)

 ・皆が共通の目標を持って、一丸となって取り組む、一体感のある職場

  (その反対:各人が個別に会社に対する要求をもっている職場)

 ・お互いが得た知識や経験を共有することで、フォローし合えたり、成果が早く出る職場

  (その反対:自分の業務範囲外の仕事はしない、タコツボ化した職場)

会社を少しでも良い方向に変えたい・・・と、感じ、何かしらの取り組みをしたい方にとって、新入社員育成は、職場を変えるビッグ・チャンスです。その理由は誰もが感じる"イマドキの・・・"感を上手く使うことができるからです。特にこれから入社する新入社員は、"ゆとり教育"という私たちが経験したことがない教育環境で育成されてきたこと。また、物ごころついた頃から進化したITツールに囲まれ、コミュニケーションに対して、上司世代とは異なった感覚を持っていること。こうしたギャップが大きいからこそ、受け入れる側も新しい取り組みの必然性を感じ、それをおぼろげながらも認識しつつある、そこを上手く活用するのです。

さて、それではこのビッグ・チャンスを活かすために、何ができるかーを考えていきましょう。

学生から社会人になるための基礎を身につけてもらう・・・仕事を覚えてもらう前の配属前『新入社員教育』

まずはここで、職場で受け入れる配属前までに、新入社員がどのようなことを学んでいるのかお伝えします。下記は、主に人事部門(人材育成、教育担当部署)で企画・運営している、"新入社員教育"と言われているものです。

新入社員教育にかける期間は、企業によってまちまちです。一般的には、2週間、GW明けまで(約1ヵ月半)、6月いっぱい(約3カ月)が多いようです。近年では、配属後に基礎的な教育をしている余裕がないため、教育部門で長期間(3カ月~半年)指導しているケースも増えています。

それでは、一般的な教育テーマをご紹介します。 

教育時期

目的

テーマ[学び方]

 

内定期間

会社とのつながり

ビジネスマナー、語学、資格取得

[課題図書(レポート提出)、通信教育]

配属前

入社時

会社を知る、期待を知る、

求められる水準を知る

社長や事業部門トップからのメッセージ

-経営ビジョン・理念、方針、事業の方向性、新入社員への期待

会社について

-歴史、具体的事業内容、商品・サービス紹介

-コンプライアンス(リスクマネジメント)、環境方針

-社内規定等ルール、給与や福利厚生、社内システム

仕事を進める上での基本

-組織感覚、取り組み姿勢、ビジネスマナー、チームワーク、論理思考 など

[講義、実習 など]

専門

業務の基礎を体験学習

基礎知識や技術の習得

[実習、演習、見学 など]

配属前

入社時から学んだことの復習

配属前の心構えづくり

職場でのコミュニケーションの再確認

-報連相、チームワーク など

配属前までに学んだことの成果発表

今後の抱負発表

 

目に見えない、我慢強く、粘り強い、人材育成担当者の取り組みとは?

学んだことを定着させるために、挨拶や返事、報連相、日報などの文書の書き方、書類の渡し方など、日々訓練が必要な基礎テーマを人材育成担当者が繰り返し指導しています。

 

また、上記のような項目にならない指導テーマに、"公共マナー"があります。オフィスビル内での挨拶、エレベーターや化粧室の利用上のマナー、ゴミの捨て方、移動交通機関でのマナー(新入社員同士が一緒になると声が大きくなったり、横にひろがったりする)、宿泊施設でのマナー(公共スペースでの身だしなみや挨拶、食事の片づけ、部屋の清掃など)もあります。

 

"えっ!?、こんなことまで?"と思われることも、気が付けば指導を行い、配属時には"専門業務の習得と、基礎業務(電話応対、来客応対、 単純業務:コピー取り、他部門への資料のお届け、会議や打合せのセッティングなど)が確認しながらでも出来るレベルまでにして送り出すことを目標に、配属前までの教育を行っています。

 

新入社員の中には、人材育成担当者を、会社内の上司や先輩社員としてではなく、"お手伝いさん"のように思い接する人もいるので、そういう人にプチっ!となりながらも(笑)、立場・役割を理解させ、我慢強く、粘り強く接し、土壌をつくる。

 

とにかく配属後に、『業務を学べる土壌と、基礎業務を聞きながら出来るレベルに送り出す』・・・ことを目標に、入社~配属までの期間、日夜努力しているのです。

 

まずはこのような努力があることを知っておいて下さい。或いは、自社の配属前の教育機会がここまで手厚くないなければ、受け入れ段階で、"社会人としての意識・行動を教育する"ことが必要です。表を参考にしながら、職場で指導が必要な項目を、ピックアップするといいでしょう。

 

振り返れば、私たちも気付かないうちに、社会人としての基本を指導されてきたのかもしれません。今まで関わってくれた、教育担当者や上司・先輩に感謝しつつ、理想の組織づくりを目標に、新入社員育成を考えていきます。