誠ブログは2015年4月6日に「オルタナティブ・ブログ」になりました。
各ブロガーの新規エントリーは「オルタナティブ・ブログ」でご覧ください。

「3年待ってほしい」ー可能性にあふれる新入社員

「3年待ってほしい」ー可能性にあふれる新入社員

原田 由美子

HRD(人材育成)サービスを提供するコンサルティング会社の代表です。

当ブログ「ひといくNow! -人材育成の今とこれから-」は、2015年4月6日から新しいURL「​http://blogs.itmedia.co.jp/harada6stars/」 に移動しました。引き続きご愛読ください。


4月2日より、2011年の新入社員研修担当がスタートしました。厳しい就職環境、入社直前の大震災。たび重なる苦難を乗り越えて入社した彼らは、一体どんな思いで入社を迎えたのでしょうか?彼らとの会話を通じて気付いたことをお伝えします。

今までの大人のツケを払う?世代

進学率が増加したため、就職(内定)率が低下したとの見方もありますが、それでも、リーマンショック直後の年よりも厳しい就職状況だった2011年入社組。(以下のグラフは、厚生労働省発表のデータを基に作成。制作:Garbagenews.com より転載)。1クラス30人だとしたら、6人が就職できていないことになります。0000018512-img-20110319-1.gif既にこれだけでも、今までの経済・社会のツケをまわされている感がありますが、今回の震災、そして2次災害の原子力発電問題に端を発したエネルギー不足、経済基盤の沈下。今後、更に大きな問題となってくるであろう、エネルギー、食糧、環境、金融、経済・・・。こうした全てのツケを、入社した直後から背負っていかなければならないのは、今年の新入社員であり、今の20代の世代。そして、これから社会人になる世代です。

そんなことを思いながら研修に立ちあっていると、"今までの20年、自分は一体何をしてきたんだろう?"と、虚無感に襲われました。社会人としての20年で、次の世代につながる仕事をしていくことが年長者の役割であるにも関わらず、その逆だったのではないかと感じ、悲しさと申し訳なさでいたたまれない気持ちに。

そんな気持ちを抱えながら、新入社員の役に立てることはないか、考えながら彼らと接していると、思いがけない言葉を彼らから聞くことになります。

意思ある選択

彼らと接し聞いたのは、「入社動機」です。"なぜこの仕事を選んだのか?"を、休憩時間中に立ち話しで数人に聞きました。(グループ企業なので、採用元となった会社、仕事は全員バラバラです)すると、彼らに共通した傾向が3つありました。それは次の3つです。

 1)10代半ばぐらいで、今の仕事に繋がる原体験を持っている(例えば、家族からの強い影響、自分の生活に起こった印象的な出来ごとなど)

 2)その原体験を元に、学校を選び、専門の勉強をしてきている

 3)自分の専門領域を活かせることを前提に、就職活動をしてきた、入社後にやりたいことも、はっきりしている

私たち40代の世代が就職活動をしていた頃は、"会社のステイタス"や"収入"といったものが、会社を選ぶ際の前提としてあり、より条件の良いところに入るために、「何でもやります」という意欲を買ってもらうことが主でした。そのため、大学時代に学んだことと会社での仕事が一致している人の方が稀でした。

しかし今は、自分なりの意思をもって学生生活を送り、その延長線上で仕事を探す人達が増えている。それは景気に関係なく(彼らが大学に入学した頃は、リーマンショック前だったため)、"何となくこうしよう"という自然な気持ちで、自発的に行動をしてきた人達が選ばれ、社会に入りはじめている。

「3年待ってほしい」

更に、彼らに今回の震災などのことについて話を聞いてみると、まだ続きそうな自然の影響には、不安感があるのは否めないけれども、仕事については、"自分達が学んできたことが活かせる機会"と捉えている。震災で影響を受けたところほど、新しい社会づくりに貢献できるーと感じているようなのです。彼らのうちの一人が、「といっても、すぐに自分ができるわけはないと思っているので、"3年待って欲しい。3年あれば、自分が学んできたことや研究してきたことが、カタチに出来そうな気がする」と話していました。

その言葉を聞き、"彼らなら出来るのかもしれない"と、可能性を感じました。

彼らはそのうち、就職できなかった自分達の友達の分まで仕事をつくり、結果として皆が就職できる環境を作り出してしまうかもしれません。そんな風に感じ、彼らの思いを上手く引き出しカタチにするサポートこそが、私たちの役割なのかもしれない・・・と、思ったのでした。

世の中を包む、暗雲に目がいきがちでしたが、足元にはしっかりした根を持つ芽が育っているようです。 嬉しい春の訪れでした。