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「ありたい姿」を忘れないためにーコメントへのお返事

「ありたい姿」を忘れないためにーコメントへのお返事

原田 由美子

HRD(人材育成)サービスを提供するコンサルティング会社の代表です。

当ブログ「ひといくNow! -人材育成の今とこれから-」は、2015年4月6日から新しいURL「​http://blogs.itmedia.co.jp/harada6stars/」 に移動しました。引き続きご愛読ください。


今回は、先日の記事(「相手の立場に立って考えるのは難しい」から)にコメントをいただいたpepper様より、お返事のコメントをいただき、コメント欄にお返事を書ききれなくなりましたので、それを記事に致します。

pepper様
原田由美子です。コメントをいただき、ありがとうございます。
「みんなが聖人君子になれる訳ではありませんが、違いすぎない、、、と感じることが多いです」
というお気持ちよくわかります。

そこで今回は、私の経験をご紹介させてください。
最初に入社した会社でのことです。私の部署には、2人のダントツに売り上げを上げる先輩営業がいました。
私は、自分も良い成果を出したいと考えていましたので、日頃からその2人がどのように活動しているのか観察していました。
観察していると、次のようなことがわかりました。

一人は、常に真摯にお客様に向き合って、コツコツと仕事をするタイプでした。
もう一人は、「自分以外の人は全てお財布と思えばいい」と言って活動量を結果につなげるタイプでした。

ある時、常に真摯にお客様に向き合って、コツコツと仕事をする先輩のお客様とご一緒する機会に恵まれました。
その先輩を仮にSさんとしましょう。そのお客様はS先輩について次のように言っていました。
「Sさんはさ、観察力が凄いんだよね。ちょっとした情報から、俺が必要とすることを察して、それをふまえて提案してくれる。提案された段階では、(それ、頼んだことと違うんだけどな)と思っても、説明を聞くと(なるほど、そこまで考えてくれてたんだ!)とわかるんだよね。だから、Sさんになんでも相談しようと思うし、自分と同じようなことを考えている人がいると、Sさんを紹介しようと思うんだよね」

私はS先輩のスケジュールが1日ぎっしり詰まり、S先輩にかかってくる電話の多さも人の倍ほどであったことを不思議に思っていたので、このお客様のお話から、ようやく理解ができました。お客様が自然と次のお客様を紹介する流れができていたのです。

さらにS先輩は、お客様からいただく契約の継続率がダントツに高く、世界中で同じ仕事をする人が表彰される場で、何度か表彰を受けていました。

ということから、私は、同じ営業をするならS先輩のようなスタンスでいたいという考えを持っていました。

状況が変わって、ある時、S先輩と、もう一人の先輩も指導リーダーになり、部下を持ちました。

さてどうなったか。
常に真摯にお客様に向き合うリーダーの部下は、じっくり営業に取り組むことができていました。
「自分以外の人は...」と言っていた人の部下は、常に数字に追い立てられ、意欲を失くし、業績があがらなくなっていきました。(この中に、私の同期も数名いました。同期はもともとは一生懸命取り組んでいましたが、リーダーの考え方についていけず、常に「もう、やってられない・・・」とつらさを吐露していました)

その中で私はどうだったか。
できるだけS先輩を意識しながら仕事をするものの、部署全体は「仕事のプロセス」については関与しません。それよりも「結果(業績)」のみを問う環境でした。私はそれに疲弊してしまいました。
今思えば、自分の考えの甘さや、努力の足りなさを環境のせいにしていたところもありました。ただ、20代半ばの私は、それに気が付くことができませんでした。

このような経験から、組織環境から受ける影響は、はかりしれないものがあると思います。
ただ、私の場合で言えば「S先輩」というモデルと、「お財布」というモデル、2つがあったわけなので、そのスタイルのどちらを選択するかの権利は、私にあったわけです。そして、会社としては「S先輩」をより高く評価していたという事実もありました。(世界中での表彰にノミネートされるように働きかけるなど)

そのようなことは分かっていても、私たちは、身の回りの環境にとても大きく影響を受けます。なので、時折「ありたい姿」を思い出し、立ち止まって考えていただけるように、記事をご紹介しています。そして、それは私自身のためでもあります。

今回、pepper様がコメントをくださったことで、あらためて今の組織環境の深刻さに気づくこともできました。
コメントを寄せて下さってありがとうございます。
お互い厳しい環境で大変ですが、お客様や自分の周りの人に少しでも喜んでしていただけるお仕事を、していきたいですね!