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失敗する事業は、失敗すべくして失敗する。

失敗する事業は、失敗すべくして失敗する。

細島 誠彦

株式会社TransamManagementSystem代表取締役。 中央大学法学部卒業後、ベンチャー企業その他企業の経営企画室長、管理本部長、CFO、取締役を歴任。経営戦略構築、マーケティング戦略構築、新規事業の立ち上げや財務戦略、M&Aなど、企業の参謀業務に従事。

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「みんなが幸せになるように、私は事業をしています」
「世の中をよくしたいので、私は事業をしています」
と、すべての人が、
「それは素晴らしいですね!」
と言ってしまうような理由を述べる人が多い。
本当にそうなら、それは素晴らしいことで、可能な限りの応援をしたいと思う。
心の底から、そう思うなら、
成功する確率を増やす努力を徹底的にしなければならない。

いかに事業をやる理由が立派でも、成功しなくては意味がない。


1)最も多い失敗

事業が失敗する最も多いパターンは「思い付き」だ。
これ、絶対にうまくいくなー!金の匂いがする!などと、
事業を始めてしまう。
最悪なのは、小さな事業で小金を持っていて、
すぐにお金を使ってしまうような環境にいる場合だ。
安易に事業をスタートして失敗する。

このケースでの失敗は、マーケティング不足が最も大きな原因だ。
マーケティングをしていないから、計画もない。
計画がないから、PDCAサイクルはD(do)しかない。
よって、検証もしないから、撤退もなかなかできない。

次に多い失敗の原因は、「人材不足」だ。
事業を実際にスタートアップしたことがある人というのは、
市場ではすごく少ない。
たまたま会社に、ベテラン社員がいて、重宝しているので、やらせてみる。
既存事業と新規事業は、使うエネルギーがまったく違うし、
使う能力も違うと言ってもいいぐらいだ。
だから、失敗する。
そして、責任は誰にあるのかという犯人探しが始まってしまう。


2)なぜ失敗するのか

失敗する理由は、所詮「思い付き」にすぎないという一点に尽きる。
「思い付き」は非常に重要だ。
理論派の人はこの「思い付き」が足りない人が多く、
経営者の人は、この「思い付き」能力が高い人が多く見られる。
「思い付き」がなければ事業はスタートしない。
問題は、「思い付き」を「思い付き」のままスタートさせることにある。
マーケティングを行い、戦略を構築し、事業計画を作る。
なぜ、たったこれだけのことができないのか?
これらをやったところで、成功が確約されるわけではない。
しかし、成功の確率は、「思い付き」のままで事業を行うよりは格段に上がる。

これらの戦略を作れば、どういう能力を持った人にやらせるべきかも見えてくる。
決して、安易に人を選んではいけない。
そもそも、できない人にやらせることで、
本業にまで影響を及ぼすことにもなりかねない。

なぜ、そんな人に大役を任せてしまうのか?
そもそも、人を見ず、事業も見ていないからだ。
要は、何も見ずに、ただただ事業っぽいことをやっているようにしか見えない。


3)当然の失敗

世の中には不思議なこともあり、
何となく成功することも可能性としてはゼロではない。
しかし、このように始めた事業が成功することは、ほぼない。
失敗する可能性の高い事業に、
そもそもできない人をあてがった事業が成功するはずがない。

新規事業のハードルは高い。
既存事業で優秀な社員だからできるということではない。
一種の特殊能力と思ってもいい。
新規事業でのマネジメントを任せるひとは、
全責任を負える人でなくてはならない。
全責任を負える人であれば、後から、
「会社がバックアップを全然してくれない」
「社長の思い付きが成功するはずがない」
「部下の能力が低い」
などといった責任転嫁はしないはずだ。

新しい事業を推進していくことは、ものすごい馬力が必要だ。
人を、部門を、取引業者を、会社を、世の中を、
大きく巻き込んでいく能力が必要だ。
そういった推進力、巻き込み力がある人でなければ、
なかなか新規事業など進めていくことはできない。


4)懲りない面々

しかし、何度失敗しても、不屈の精神(?)で何度も、
同じ失敗をする経営者が、何故か多い。
学習しないとしか思えない。
ある新規事業がどうにもならなくなり、ようやく諦めたと思ったら、
すぐに次の新規事業を始めるという猛者も多い。
撤退をすることも、ものすごい労力がかかる。
なぜなら、負の仕事を進めることに相違ないため、
やる気のある人ができる仕事ではないからだ。
だからこそ、新規事業を始めるということは余程の覚悟と準備が必要なのだ。


5)成功確率をあげる

前述したように、成功確率をあげることは難しいことではない。
当然、100%成功するということは神以外にはわからない。
「思い付き」にすぎない青写真を、
マーケティングからスタートし、戦略構築、事業計画への落とし込みを行うことで、
成功確率は飛躍的にあがる。
問題があれば、事業計画の段階で頓挫することが明確になるからだ。
計画があれば、PDCAサイクルが回り始める。
PDCAサイクルが回れば、選択肢を潰していける。
万が一、うまくいかなくても、撤退時期は明確に線が引けるので、
痛手は最小限となる。

最も難しいのは、新規事業を任せる人だ。
既存の社員でそのような人材がいればいいのだが、
中小企業ではなかなか難しいはずだ。
人事権を持つ人は、人を見れなければならない。
ただ長くやってきた人、ただ年をとっている人、
いろいろ知ってそうに見える人、・・・という「見せかけ」で判断してはいけない。
新規事業の責任者は、
・責任感
・事業推進力
・巻き込み力
の3つを持っていなければならない。
こういう人を常に会社に入社させていく必要が会社にはある。