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「住宅ローン低金利時代は終わるのか?」~期限があるから人は動く!~

「住宅ローン低金利時代は終わるのか?」~期限があるから人は動く!~

川瀬 太志

ハイアス・アンド・カンパニー取締役常務執行役員。都市銀行・大手経営コンサルティング会社・不動産事業会社取締役を経て現職に。住宅・不動産・金融の幅広い経験を元に、個人の資産形成支援事業を展開中。

当ブログ「世の中の動きの個人資産への影響を考えてみる」は、2015年4月6日から新しいURL「​http://blogs.itmedia.co.jp/hyas/」 に移動しました。引き続きご愛読ください。




こんにちは!ハイアス・アンド・カンパニーの川瀬です。


今回は金利の上昇についてです。低金利時代は終わったのでしょうか?


■購買促進に必要なものとは?

11月下旬にかけて家電量販店は大賑わいでしたね。何が売れたかと言えば・・・例えば、薄型テレビ。販売台数は11月のたった1カ月だけで例年の6割の売り上げに匹敵。販売価格も需給のひっ迫により3カ月前の9月に比べて1~3割程度上昇したそうです。

その原因は、皆さんもご存じの通り、「家電エコポイントのポイント付与額が12月1日から半減になる」ということが世間に知れ渡ったからですね。

もともとアナログ放送の終了に伴って、いずれにせよ来年7月までには買い替えが必要なものの、「まだまだ時間もあるし、もっと価格も下がるかもしれないし」と先送りにしていた人は多くいました。そんな中、買い替えのインセンティブでもあったエコポイントが半減する、となって多くの人が動いたわけです。

やはり人は「期限があると動くもの」なんですね。
逆にいえば、「期限がなければなかなか購買意思決定ができない」、とも言えます。

そう考えると、「なぜ、人はデフレの状況下では価格が下がってもモノを買わないのか」がわかります。
「デフレ」は「物の価値が下がる経済状態」のこと。「デフレのお陰でモノの値段が下がったら、消費が増えていいじゃないか。」という類の話を耳にしたりしますが、それは根本的に間違っていますね。モノの値段が下がったとしても、それがデフレの状態では人はあまりモノを買いません。モノの値段が下がって消費が増えるのは、それはバーゲンセールの時などです。


■デフレとバーゲンセールの違いとは?

デフレとバーゲンセールの違いは何でしょうか?大きく違う点は、「期限があるか、ないか」です。バーゲンセールは期間限定です。終わりの日が決まっています。

ずっと、「欲しいな~」、「買わなきゃな~」と思っていたものが期間限定で安くなる。そして期限を過ぎると高くなる(かもしれない)。皆がそう思っているだろうから、バーゲンになったら私が欲しいアイテムが無くなってしまうかもしれない。

・・・などといった心理が働くから皆バーゲンセールの時にはモノを買うのです。

でも、今日より明日の方がもっと安くなる、そして今日あるものが明日もある、と思えば誰も動きません。

デフレの状態はまさにそれ。つまり、今日より明日、今年より来年の方が価格が下がるという状態です。デフレではモノの価値が下がるかわりにお金の価値が上がります。だから「モノを買わずに貯蓄しておいた方が得」ということになるのです。


■住宅ローンの低金利時代も期限が来た?

さて、日本経済は株価が1万円台に戻るなど、少し回復してきました。それにともなって国債金利が1.2%台まで急上昇。そして、12月に入ると大手銀行数行が住宅ローン金利を0.05~0.2%程度引き上げました。
住宅ローン金利は2年前のリーマンショック以降、ずっと下がってきました。

ここ数年はずっと最低水準に張り付いていましたよね。それが、「ついに住宅ローン金利が反転して、上昇局面に入った!」と思えばどうなるでしょうか?このまま待っている間に金利がどんどん上がってしまうなら、ローン利息を多く払わなければならなくなるわけですからマイホーム購入予備軍の人たちは動くでしょう。

つい先日も、住宅購入セミナーで「住宅ローン金利が上がったのでもう買った方がいいでしょうか?」という質問をいただいたりしました。住宅ローン金利がずっと低いままの状態だったところに「もう上がりますよ」と「期限」がついたからですね。


■さて・・・本当に「期限」が来たのか?

それでは、急に皆が住宅を買い始めるのか?というとそれはまだまだわかりません。

それは今回の金利上昇が反転局面に入ったのか一時的なものなのかがまだわからないからです。明らかに住宅ローン金利がこの先ずっと上がり続ける局面になった、と誰もが判断したとき、皆が住宅を買うようになると思います。

本当に住宅ローン金利は上昇局面に入ったのでしょうか?
個人的には、住宅ローン金利が上昇局面に入ったと言うには時期尚早かな、と思っています。

なぜなら、住宅ローン金利が上がった要因が本格的な景気回復に伴うものではないからです。今回の引き上げ要因は国債金利が急騰したからですが、国債金利が急騰したのは株価が上がったからです。なぜ日本の株価が上がったかと言えば、アメリカの株価が上がったからです。なぜアメリカの株価が上がってきたのかと言えば、これはアメリカが大規模な金融緩和を実施してきたからです。米政府が市場にどんどんお金を供給したからですね。

日本も金融緩和を実施しています。
ただ金融緩和は景気刺激のための一時のカンフル剤にすぎません。金融緩和はいずれ終わりますが、それでも株価が下がらず景気が回復基調になっていれば金利は本格的に上昇局面に入っていることでしょう。

ただ金利の動きは早いですから気がついた時にはすっかり上がってしまっていたということもあり得ます。家を買おうかな~と思っている皆さんはしばらく気を付けて金利の動きを見ておいた方がよいでしょうね。


それでは今回は以上です。次回もお楽しみに!


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