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「2011年度 税制改正大綱決定!」~今年最後のしまらない話~

「2011年度 税制改正大綱決定!」~今年最後のしまらない話~

川瀬 太志

ハイアス・アンド・カンパニー取締役常務執行役員。都市銀行・大手経営コンサルティング会社・不動産事業会社取締役を経て現職に。住宅・不動産・金融の幅広い経験を元に、個人の資産形成支援事業を展開中。

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こんにちは!ハイアス・アンド・カンパニーの川瀬です。

2011年度の税制改正大綱が決まりましたね。翌日、某大新聞は今後の改善策を提示しつつも以下のように一定の評価をしていました。

『税制改正閣議決定 企業は減税:雇用拡大が名目、個人は増税:高所得者照準』『<解説>来年度税制改正では12年ぶりとなる法人税率引き下げと富裕層により多くの税負担を求める所得・相続税の見直しが決まった。いずれも自民党政権下では本格的に出来なかったことだ。(中略)菅首相が掲げる「経済成長と格差是正」に向けた小さな一歩を踏み出した。(後略)』

確かに「小さな一歩」ですね。ただ小さすぎませんか?個人的には「しまりがないなぁ・・・」という印象です。


■これって本当に民主党政権がやりたかったこと?

多くのメディアが指摘しているように、今回の税制改正を主導したのは民主党ではなく完全に財務省です。

自民党政権時代には自民党税制調査会が握っていた税制改正の権限が、昨年民主党政権になって以降、政府税制調査会に移りました。つまり、税制に関しては完全に「政治主導」ではなく「官僚主導」になったということです。

今回の「相続税控除の改正」や昨年の「小規模宅地の評価減改正」など、自民党政権下では実現できなかったことが、するっと通ってしまいました。
今回の税制改正大綱も、財務省がずっとやりかったことを挙げてみました、という感じですね。

では「個人増税→格差是正、法人減税→経済成長」となるのかどうか?ざっと見て行きましょう。


■まずは取れるところから!個人・富裕層は大増税

社会保障費の増大が見込まれて、中長期的に歳入が不足する中、個人の所得税や相続税を課税強化するのは間違ってはいないとは思います。今後も増税傾向は続くことでしょう。

ただ、多くの新聞が「抜本的改革は先送り」と指摘していたように、やはり「取りやすいところから取った」という感じなんですよね。「給与所得控除を縮小」といっても今回は年収1,500万円超の人や高額報酬役員が対象です。年収1,500万円超って、給与所得者のわずか3%程度しかいません。そりゃ選挙への影響はあまりないでしょう。

一方で、「これをやったら春の統一地方選で勝てない!」と反対が根強かった「配偶者控除の廃止」は見送られました。やはり、高額所得者や富裕層への課税を強化するなら消費税引き上げと一緒に打ち出すべきだったのではないでしょうか。

以前、コラムに書いたことがあるのですが、消費税には逆進性があるので、

「低所得者いじめ+金持ち優遇」とみられがちです。消費税だけ上げるのはかなり大変だからこそ、今回の富裕層課税強化と一緒に消費税を打ちだしてしっかり議論すればよかったのに、と思います。

そもそも富裕層から税金を取って「格差是正」というのは正しくないと思いませんか?低所得者層の人たちにも雇用を創出し、国民の所得全体を増やすことこそが格差是正の本筋であり、だから経済を成長させる政策を議論するというのが正しい姿だと思うのですが・・・。


■経済成長には程遠い?法人はちょっとだけ減税

法人税の実効税率は「5%の引き下げ」案です。先進国最高の約40%の法人税の引き下げは産業界の悲願でしたから、まず第一歩として評価する声が多いようです。ただあくまで「第一歩として」であり、これで終わってはなんの効果もありません。法人税を減税するだけでは歳入減です。

法人税を減税することで国内設備投資が増えたり、外国企業が日本にやって来たりして雇用が生まれて、それで経済が成長してはじめて減税効果があったと言えます。30%以下が普通の諸外国と比べたらまだまだ日本は高水準です。これでは外国企業にとっては魅力的ではありません。

また国内企業にとっても今回、法人税は減税するものの、減価償却制度や研究開発減税などは増税方向だし、環境税の創設もあって、実質的な減税効果は「3%もない」と言われており、とても大きな整備投資をするほどの減税インセンティブはありません。

そもそも法人税減税は「大企業向け」であり、日本の98%を占める中小企業は約半数が赤字と言われています。つまり中小企業の多くにとっては法人税を払っていないのだから法人税減税はあまり意味がありません。

中小企業にとっては大企業が競争力を高め、国内で設備投資や生産を強化してくれることで間接的に効果が出てくるはずですから、この5%程度の法人税減税で胸を張られても困ります。まさに「第一歩」としてのみ評価されているということです。


■そしてなにより「しまらない話」

なにより今までと大きく異なる点があります。それは「今回の税制改正大綱は国会で通らない可能性がある」のです。通常は12月に大綱が決まると、翌年1月の国会で審議されて、予算関連法案とあわせて3月末までに成立、4月から施行という段取りになります。

ただ今の国会は参議院では野党の方が多数派をしめる「逆転国会」です。今のところ自民党をはじめとする野党の協力が得られる見通しはまったく立っていないようです。

例年なら税制改正大綱が決まると来年度の改正に備えて、各業界いろいろ動き出すのですが、今回は様子を見つつの対応となりそうです。

税制改正の背景には中長期的に不足する財源確保の意味合いがあります。それと両輪の歳出削減に関しては今の政府はまったく関心がなく、むしろ歳出は来年も増えそうです。この来年度予算をめぐっても年明けの国会でしっかりモメることでしょう。そんなことも含めて、なんだか「しまりがないなぁ」と感じるのです。



今回は以上です。次回もお楽しみに!



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