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「リバースモーゲージは高齢化社会の救世主になれるか?」 ~その課題と留意点~

「リバースモーゲージは高齢化社会の救世主になれるか?」 ~その課題と留意点~

川瀬 太志

ハイアス・アンド・カンパニー取締役常務執行役員。都市銀行・大手経営コンサルティング会社・不動産事業会社取締役を経て現職に。住宅・不動産・金融の幅広い経験を元に、個人の資産形成支援事業を展開中。

当ブログ「世の中の動きの個人資産への影響を考えてみる」は、2015年4月6日から新しいURL「​http://blogs.itmedia.co.jp/hyas/」 に移動しました。引き続きご愛読ください。




こんにちは!ハイアス&カンパニーの川瀬です。

最近よく見聞きする「リバースモーゲージ」。
年金不安の中、高齢化社会の救世主となれるのでしょうか?



■高齢化社会の救世主?リバースモーゲージとは?

高齢化社会が到来しています。日々の生活費、医療費、介護費、老人ホームの入居費用など、今後ますます老後の生活資金への不安は大きくなっていきそうです。そんな中、自宅を担保にして老後資金の融資を受ける「リバースモーゲージ」が注目されています。
さて、高齢化社会の救世主となれるのでしょうか?


<みずほ銀、リバースモーゲージに参入 メガ銀で初>
(2013年5月20日付 日本経済新聞)
『みずほ銀行は7月から、戸建住宅の土地を担保に融資するリバースモーゲージの取り扱いを始める。高齢化の進展で高齢者の生活資金への不安が高まっているのに対応する。メガ銀行が参入するのは初めて。顧客数の多いみずほ銀の参入で、普及に弾みがつく可能性がある。』


 「リバースモーゲージ」とは、自宅などの不動産を担保に入れ、その評価相当額を一括もしくは毎月一定額を年金のように受け取るローンのことです。ローンの返済は、契約者がお亡くなりになった時に、担保となっている不動産を売却して回収する仕組みです。

 老後資金が必要になった時にローンが終わった自宅を売却すれば資金は得られますが、住むところがなくなってしまいますね。でも、リバースモーゲージなら自宅に住み続けながら老後の資金を受け取ることができる、というのがメリットですね。

 みずほ銀行はリバースモーゲージの潜在需要を5兆円規模とみて、「そのうち1~2割のシェアを目指す。当初はまとまった資産のある層を念頭に置いている。」とのことです。

どれくらいのローンになるのかイメージしてみます。例えば、都内一戸建てに住む60歳の方がいるとします。

土地の評価が4,000万円あるとすると、元金と利息込みで評価の50%相当である2,000万円の融資が受けられます。平均金利を2%弱程度とすると、おおよそ元金1,600万円+利息400万円になります。その元金1,600万円を85歳まで(25年間)毎月受け取るとすると、月々およそ5万円程度になります。

年金に加えて、月5万円あれば何とかやっていけます、かね? 



■リバースモーゲージの課題

政府もリバースモーゲージの普及に力を入れ始めています。
その背景には、言うまでもなく高齢化社会の進展があります。2020年には65歳以上の世帯が30%を超える見通しです。
まずリバースモーゲージで老後の生活不安の解消につなげるのが狙いです。また、自宅が現金化されることで消費を促す効果やローン終了後の不動産流通市場の活性化も期待されています。

でも、実際のところリバースモーゲージには制度上にまだまだ課題が多くあります。


リバースモーゲージのリスクは大きく4つ。

1.   金利上昇リスク:途中で金利が上昇すると受け取れる額が少なくなります。

2.  地価下落リスク:担保の評価額が下がると追加担保が必要になる、もしくはローンが途中でストップしたり、場合によっては返済を迫られたりする可能性があります。

3.   長生きリスク:存命中にローンの受け取り総額が評価額に達してしまう可能性があります。

4.   相続人リスク:ご本人が亡くなった後、自宅が無くなりますので、配偶者やお子さんがいる場合には住む場所が確保されていないといけません。


リバースモーゲージは、最終的に自宅を売却してそれまでに行った融資の利息と元金と手数料を回収する仕組みですから、現実的にはある程度地価の高い地域に限られてしまいます。

また金利変動や地価下落などのリスクを考えた時に、皮肉なことですが、リバースモーゲージに頼って生活しようとするような方には向きません。ある程度財産的に余裕がある人でないとダメという金融機関もあります。これらのことからリバースモーゲージを扱っている金融機関はまだまだ少ないのが現状です。

 リバースモーゲージの日本でのさきがけと言えるのが、1981年から自治体として取り組んできた東京都武蔵野市です。その武蔵野市は今、リバースモーゲージの存続を見直しているそうです。


<東京・武蔵野市、リバースモーゲージ見直し 貸付金回収できず>
(2013年8月20日付  日本経済新聞)
『武蔵野市では81年から現在までに119件、17億円の利用があった。13年3月末時点での利用は18件で約3億円。しかし、地価下落や長寿命化などで、10年度には担保を処分しても貸付金を回収できない例が発生した。これまでに2件、約2500万円が回収不足となっている。』


 回収不足が発生するのはある程度仕方がありませんが、約30年の間でたったの119件しか利用されていないというのは驚きですね。やはり制度上使いにくさがあるのだと思います。



■家を買うなら資産価値の高い家を

しかし、中古住宅市場が整備されていて、かつ住宅の資産価値が下がらないアメリカなど欧米諸国では自宅担保のモーゲージローンはごく当たり前に広く利用されています。
モーゲージローンは、自宅を売却して得られる価格近くまでは借りられます。つまり不動産に資産価値があるというのが大前提です。

この数十年間、日本は資産価値が下がっていくデフレ状態でした。建物には価値が認められず、さらに土地の値段も下がり続けました。リバースモーゲージの導入時期としては最もふさわしくなかった時期だったと言えるでしょう。

今はまだ使い勝手が悪いですが、今後は良くなっていくかもしれません。まず、デフレ脱却を目指して政府が動いています。今、日本の土地価格はバブル前の水準まで下がっていて、すでに安定しています。保険との組み合わせで長生きしても終身で受け取れる商品も出てきています。また戸建だけでなく、資産価値があればマンションでもいいという商品もあります。

今、日本の不動産評価は土地の評価が中心ですが、建物も一体として捉えて資産価値が下がらないような仕組みを政府も検討しています。皆さんがもしこれから家を買うのなら、将来のことも見据えて、立地と建物をよく吟味した方がいいですね。

是非、いつ売り出しても相応の価格で買い手がつくような資産価値のある家を目指してください。


今回は以上です。

もっと日本が良くなりますように。

 


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