誠ブログは2015年4月6日に「オルタナティブ・ブログ」になりました。
各ブロガーの新規エントリーは「オルタナティブ・ブログ」でご覧ください。

『相続対策は何もしていない 81.0%! それで本当に大丈夫?』~社会問題化も予測される相続市場に必要なものとはなにか?~

『相続対策は何もしていない 81.0%! それで本当に大丈夫?』~社会問題化も予測される相続市場に必要なものとはなにか?~

川瀬 太志

ハイアス・アンド・カンパニー取締役常務執行役員。都市銀行・大手経営コンサルティング会社・不動産事業会社取締役を経て現職に。住宅・不動産・金融の幅広い経験を元に、個人の資産形成支援事業を展開中。

当ブログ「世の中の動きの個人資産への影響を考えてみる」は、2015年4月6日から新しいURL「​http://blogs.itmedia.co.jp/hyas/」 に移動しました。引き続きご愛読ください。


こんにちは!ハイアス&カンパニーの川瀬です。

今回のテーマは「相続」。相続意識調査から見えてきた課題について考えてみます。

住宅・不動産コンサルティングのハイアス・アンド・カンパニー株式会社が2015年1月に税制改正を控える「相続」に関する意識調査を実施し、20歳以上の男女2,058名の回答を得ました。
今回はその結果から予測される相続における課題について考えてみたいと思います。


■自分の資産は自分と配偶者で使いたい

1)相続する資産に対する考え方は?(被相続人:相続財産を渡す側)
 ・出来る限り配偶者には残したい...47.9%
 ・出来る限り子供には残したい...31.8%
 ・出来る限り自分で使い切りたい...9.9%
 ・誰ということではないが残したい...7.0%

2)前の回答の理由は?
 ・自分の資産は自分(および配偶者)で使いたいから...40.4%
 ・相続争いの原因を作りたくないから...30.5%
 ・相続人に世話になった(なっている)代償だから...19.1%

まず、被相続人を対象に、相続する資産に対する考えを聞いたところ、
「出来る限り配偶者には残したい」(47.9%)が最も割合が高く、次いで
「出来る限り子どもには残したい」(31.8%)、
「出来る限り自分で使い切りたい」(9.9%)という結果となりました。
その回答理由で最も割合が高かったのは
「自分の資産は自分(および配偶者)で使いたいから」が40.4%ですが、
次に多かった回答は、「相続争いの原因を作りたくないから」(30.5%)
でした。
相続人である子供たちのことを考えた時に、トラブルの種になるような資産を残したくないという考えが強いようですね。


■「相続トラブルは起こらない、だから相続対策はしていない」が8割!

3)相続に際し、揉め事は起こると思いますか?
 ・起こらないと思う...34.4%
 ・おそらく起こらないと思う...48.1%
 ・おそらく起こると思う...13.3%
 ・起こると思う...4.2%

相続に際し、揉め事は起こらないと思うかどうかを聞いたところ、
「起こらないと思う(34.4%)」「おそらく起こらないと思う(48.1%)」
を合わせて8割強という結果でした。


4)何か相続対策はしていますか?
 ・何もしていない...81.0%
 ・生命保険への加入...7.5%
 ・遺言書...7.3%
 ・生前贈与...3.1%


5)相続対策をしていない理由は何ですか?
(前の質問で「何もしていない」と回答した方)
 ・対策するほどの資産がないから... 52.3%
 ・時期尚早だと思うから...36.4%
 ・対策の取り方がわからないから...10.0%


そして、相続対策について聞いたところ、「何もしていない」が81.0%と圧倒的な割合になりました。
また、相続対策を何もしていない理由は、
「対策するほどの資産が無いから」が52.3%と半数以上となりました。
資産が多くないから相続対策はしていない、という方たちが多いようです。


■相続相談は誰に・・・?

6)相続相談は誰にしていますか(しようとしていますか)?
 ・誰に相談したら良いか分からない...48.9%
 ・血縁者...15.0%
 ・弁護士...11.4%
 ・税理士...7.7%
 ・司法書士...7.5%
 ・銀行...5.5%
 ・不動産会社...3.8%


相続相談を誰にしているか(しようと思うか)聞いたところ、
「誰に相談したら良いか分からない」が約半数で最も多く、次いで「血縁者」、「弁護士」となりました。
相談したくても誰に相談したら良いか分からず、その結果何もしていないという構図が見て取れます。


■相続意識調査の結果から浮かび上がる課題

このアンケート結果をまとめると一般の方の相続に対する意識は以下のようになります。

・「自分たちの財産は自分たちで使いきるつもり。」
・「なぜなら相続トラブルを避けたいから。」
・「でも、財産が少ないから相続争いは起きないと思っている。」
・「だから特段の相続対策はしていない。」
・「そもそも誰に相談したらいいのかもわからない。」


この意識レベルの低さはとても心配になる結果です。
そもそも相続はいつ発生するかわかりません。不意に発生するのが相続です。
亡くなるまでに財産を使い切りたいと思っていても必ずいくばくかの現金や自宅などの資産は残るものです。

まったく準備をしていないところにいくらか財産を残した状態で相続が発生する。これが相続トラブルのはじまりです。
裁判にまでもつれ込む相続トラブルは年々増加していますが、司法統計年報によると、遺産分割事件の71%は5,000万円以下の遺産額を巡って争われています。
相続トラブルは相続税がかかるかかからないか、資産が多いか少ないかには関係せずに起きるのです。


■社会問題化が懸念される「相続」

2015年1月の相続税の改正を迎えるにあたって相続に対する関心は高まっています。テレビや雑誌などでも相続をテーマにトラブル事例などが頻繁に取り上げられるようになっています。

そんな昨今、「自分の場合は大丈夫だろうか?」
「相続税はいくらになるのだろうか?」
「自宅などの不動産は誰にどのように相続させたらいいのだろう?」
というような不安を持たれている方は確実に増えています。
しかし、不安はあるのでしょうが相続をする側も受ける側もほとんど何のアクションも起こしていないようです。
そしてどこに相談してどのように準備すればいいのかすらわからないのです。

日本の資産の多くは60歳以上の高齢者世帯に偏在しています。
その莫大な資産がこれから数十年をかけて高齢者世帯から次の世代に移転していきます。
その相続の際に、資産をどう評価するか、誰に引き継がせるのか、納税資金は確保できているのか、こういったことを相続の当事者たちは知らずに相続を迎えることになります。相続がこれから本格化する中、相続トラブルは大きな社会問題になるかもしれません。


相続トラブルを防ぐためには「ウチに限って揉め事なんて起こらない」とタカをくくるのではなく、事前に関係者間で相続のことを話し合っておくことが大事ですね。
また社会的には、気軽に相談できる場所を整備することが求められていくでしょうね。


今回は以上です。
もっと日本が良くなりますように。


<相続意識調査概要>
1) 調査名:「相続に関する意識調査」
2) 調査方法:ハイアス・アンド・カンパニー株式会社の運営サイト上でのアンケートにて選択式にて回答を得た。
3) 調査期間:2014年2月8日~2月16日
4) 有効回答数:2,058名
(被相続人n=546、相続人n=1512)
(被相続人:20代1.3%、30代3.3%、40代11.4%、50代28.6%、60代以上55.5%)
(相続人:20代6.9%、30代19.2%、40代31.3%、50代30.3%、60代以上12.2%)

------------------------- 
今回の記事はいかがでしたか? 
「ハッピーリッチ・アカデミー」の「カワセ君のコラム」では、過去のバックナンバーをご覧頂けます。
また、ハッピーリッチ・アカデミー会員に登録して頂くと隔週でメールマガジンにてお届けします。