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「銀行から見た住宅ローン(その1)」~銀行が金利優遇キャンペーンをやめない理由とは?~
»2011年2月23日
世の中の動きの個人資産への影響を考えてみる
「銀行から見た住宅ローン(その1)」~銀行が金利優遇キャンペーンをやめない理由とは?~
ハイアス・アンド・カンパニー取締役常務執行役員。都市銀行・大手経営コンサルティング会社・不動産事業会社取締役を経て現職に。住宅・不動産・金融の幅広い経験を元に、個人の資産形成支援事業を展開中。
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こんにちは!ハイアス・アンド・カンパニーの川瀬です。
最近、少し上がったこともあって住宅ローン金利についてよくお客様から聞かれます。
今回は銀行側の視点から住宅ローンについて見てみたいと思います。
これから住宅を購入しようという人や住宅ローンの借り換えを考えている人には敏感になるテーマ、「住宅ローン金利」。ちょっと上がったりしていますが、それでもまだ変動金利で2.5%程度です。
水準としてはまだまだ低いですよね。
「では、これからどうなるのか?」という話ですが、「それほどすぐには上がらないよ」という見方の人は多いようです。確かにまだまだ景気の回復も本格的ではなさそうだし、日本も世界も金融緩和は続くだろうから金利も急騰することは考えにくいでしょう。
ですから、すぐに住宅ローン金利が0.5%とか1%とか、するするする~と上がっていくようなことはない、と私も思います。
ただ、住宅ローンを借りる人にとっての問題は「店頭表示金利」ではなく、実際に借りる「適用金利」です。
つまり、銀行ごとの金利優遇、いわゆる「金利優遇キャンペーン」の状況をよく見ておく必要があります。
店頭表示金利がすぐに上がらないとしても、銀行が金利優遇幅を縮小したり、場合によっては止めてしまったりすることは十分考えられますからね。
■今、金利優遇はどうなっている?
では改めて「金利優遇」について考えてみましょう。
店頭表示金利から▲1%とか▲1.5%とかの幅で金利を下げてくれるのが「金利優遇キャンペーン」です。
住宅ローンを獲得するために銀行間で競争が激化しています。
変動金利でいうと店頭表示金利はだいたい「2.2~2.5%」くらいですが、そこから銀行によって違いますが「1.0~1.5%」くらい引いてくれます。最大「1.8%優遇」なんていう金融機関もあります。
変動金利でいうと店頭表示金利はだいたい「2.2~2.5%」くらいですが、そこから銀行によって違いますが「1.0~1.5%」くらい引いてくれます。最大「1.8%優遇」なんていう金融機関もあります。
そうすると適用金利は「1.0~1.2%」くらいになります。中には「1%」を切る銀行もありますね。
これってすごい水準だな~と思います。
これってすごい水準だな~と思います。
もう銀行同士の体力勝負になっていて、すでについていけていない金融機関もありますね。
適用金利が「1.5%」を切る水準というのはもうギリギリなのです。
適用金利が「1.5%」を切る水準というのはもうギリギリなのです。
おそらくもうこれ以上、下がることはまずない水準だと思います。
なぜなら今の銀行にとって収益を上げられるギリギリの貸出金利の水準は「1.2%」だからです。
■金利はこれ以上下がらない!銀行の収益性を見てみると・・・?
■金利はこれ以上下がらない!銀行の収益性を見てみると・・・?
なぜ「1.2%」がギリギリだと言い切れるのか?
それは銀行の収益構造を見ればわかります。
銀行がどのように儲けているかというと・・・
銀行がどのように儲けているかというと・・・
まず、預金を預かりますね(=銀行にとっては資金調達)。
そこに経費率を乗せて、預かったお金を企業への融資や個人への住宅ローンなどで貸出しします(=銀行にとっては資金運用)。
その「調達(預金)」と「運用(貸出)」の差額が銀行の「利益」になります。
全国120行の経営データによると「収益性」の平均は以下のようになっています。(全国銀行協会平成21年度統計より)
全国120行の経営データによると「収益性」の平均は以下のようになっています。(全国銀行協会平成21年度統計より)
1)運用利回り : 1.45%(内訳: 貸出1.8%、有価証券0.8%他)
2)調達利回り : 1.20%(内訳: 預金・債権0.2%、経費率1.0%他)
1)-2)総合利ざや率 : 0.25%
1.20%のコストでお金を調達して、1.45%で運用しているわけですから、その差額の0.25%が銀行の儲け(利ざや)です。結構小さいですよね。
銀行の資金調達コストが1.20%ということは・・・、
銀行は預かったお金を1.20%以上で運用できなければ赤字になるということです。
だから現在のように適用金利が1.2%を切っているような水準では、銀行は「住宅ローンはすでに赤字」なのです。だからもうこれ以上は下がらないだろうと思うのです。
■金利優遇を止められない銀行の事情とは?
そんなに金利を下げてまで銀行が住宅ローンを推進しているのはなぜでしょうか?
理由のひとつは「お金が余っているから」です。
平成21年度の銀行全体の貸出と運用の合計金額をみると、以下の通りです。
平成21年度の銀行全体の貸出と運用の合計金額をみると、以下の通りです。
・貸出残高:451兆円(法人と個人の合計)
・預金残高:615兆円(譲渡性預金・債権などを含む)
「預かった預金の内、どれだけ貸出で運用できているか」、この割合を「預貸率」(貸出÷預金)といいますが、上↑の額でいくと全国の銀行平均では預貸率は「73%」(=451兆円÷615兆円)ということになりますね。
「預かった預金の内、どれだけ貸出で運用できているか」、この割合を「預貸率」(貸出÷預金)といいますが、上↑の額でいくと全国の銀行平均では預貸率は「73%」(=451兆円÷615兆円)ということになりますね。
つまり預金の残り約27%は貸出で運用できずに余っているわけです。貸出で運用できない預金の多くは国債など有価証券で運用されています。
銀行はお金を預かっているだけでは儲かりません。
でも世の中不景気で特に企業の資金需要が乏しい中、企業向けの融資が伸び悩んでいます。そんな中、銀行は「法人がダメなら個人!」というわけで必死に住宅ローンで貸出を伸ばそうとしているのです。
そして各行が競って赤字スレスレの水準まで金利を引き下げて住宅ローンを増やしていることで、ここ数年、貸出(運用)利回りはずっと低下してきています。一方、調達コストは下がっていませんので、結果として総合利ざや率は少しずつ小さくなってきているのです。
そのダンピング幅ももう赤字スレスレの水準に来ています。もうこれ以上は下がらないでしょう。
この先、景気が回復して、企業融資も回復してくれば、銀行も金利ダンピングをしてまで住宅ローンで運用しなくてもよくなるかもしれません。
この先、景気が回復して、企業融資も回復してくれば、銀行も金利ダンピングをしてまで住宅ローンで運用しなくてもよくなるかもしれません。
「景気が回復してきた」、「銀行の法人貸出が伸びてきた」、「日銀が金融緩和政策を止めた」
こんなニュースが巷に出てきたらその時こそ銀行が金利優遇キャンペーンを縮小したり、止めたりする時になるんだろうと思います。その時はまだまだ先かもしれませんし、意外にすぐかもしれませんね。
さて銀行が赤字を覚悟してまで住宅ローンを伸ばしたい理由は他にもあります。
その理由とは・・・・それは次回に書きたいと思います。
今回は以上です。次回もお楽しみに!
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