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『真の安定を得るにはどうすればいいか?』~「人並みでいい」が大変な時代に生きる新入社員のみなさんへ~

『真の安定を得るにはどうすればいいか?』~「人並みでいい」が大変な時代に生きる新入社員のみなさんへ~

川瀬 太志

ハイアス・アンド・カンパニー取締役常務執行役員。都市銀行・大手経営コンサルティング会社・不動産事業会社取締役を経て現職に。住宅・不動産・金融の幅広い経験を元に、個人の資産形成支援事業を展開中。

当ブログ「世の中の動きの個人資産への影響を考えてみる」は、2015年4月6日から新しいURL「​http://blogs.itmedia.co.jp/hyas/」 に移動しました。引き続きご愛読ください。


こんにちは!ハイアス&カンパニーの川瀬です。

1969年から続く「新入社員意識調査」が今年も発表されました。

「人並みでいい」が過去最高水準になったとか。

今回は働くということについて考えてみたいと思います。

 

■「人並みに働けば十分」が過去最高水準に

ひと月ほど前に日本生産性本部が発表した「平成26年度新入社員意識調査」の結果が話題になりました。

 

今回の意識調査の結果のポイントは以下の通りです。

(2014年6月26日付 公益財団法人日本生産性本部リリース資料より抜粋)

  • 「人並みか人並み以上か」では、「人並みで十分」が今年度さらに増加(昨年49.1→52.5%)。

    「人並み以上に働きたい」(昨年42.7→40.1%)を大きく上回り過去最高水準に。

  • 「どのポストまで昇進したいか」では、昨年度「社長」が過去最低(12.7%)を更新したが、今年度は「専門職(スペシャリスト)」が過去最低(19.9%)を更新した。昨年からもっとも増えたのは、「主任・班長」で、5%→10%に。

  • 「残業は手当てがもらえるからやってもよい」が急増し、昨年度の63.0%から69.4%と過去最高を更新。昨今のブラック企業・残業未払いのニュースをみて、残業はいとわないがそれに見合った処遇を求めている傾向がうかがえる。

 

これらの結果を受け、新聞などでは、

  • 今年の新入社員は悟り世代 出世意欲なく人並みでいい

  • 会社に大きく貢献したいという意欲よりも、「ほどほど」に頑張るという志向が見受けられる

  • ...仕事はほどほどでいい。定時には帰りたい。自分の生活を重視したい。求められるものには対応するが自らは率先しない...「今年の新入社員像」

 

といったちょっとネガティブな感じで報道されていました。

 

■就職活動が緩いと新入社員意識も緩くなる?

こういう調査をみると、「最近の若い者は覇気がない!」なんて嘆く先輩方がいっぱいいそうです。

ただ、私は個人的には、「新人なんだから、まだ人生のビジョンもぼんやりしているだろうし、チームでやりがいのある仕事もしていないでしょう。仕事の仕方も意義もまだわからないだろうからこの結果は仕方がないのでは? 逆に新人の頃からあまりグイグイ来られるのもちょっとな...」などとちょっと新入社員に感情移入している自分を感じながら、生産性本部の過去の調査データを見て驚きました。そしてなぜ自分が今の新入社員に感情移入できるのかがわかりました。

 

今回「人並みでいい」が「過去最高水準」とありましたが、「過去最高」ではありません。ではいつが過去最高だったのかというと、......「平成2年」です。

私が新入社員だった年ですね。いわゆるバブル入社世代ですが、このバブル世代の頃はもっとひどい結果でした。

「人並みでいい」が過去最高なだけでなく、逆に「人並み以上働きたい」は過去最低の30%。

「仕事中心か生活中心か」では圧倒的に「生活中心」。

 

生産性本部はこの結果を「その年の新入社員の就職活動が順調であったかどうかで結果は変化する。景況感や就職活動の厳さによって、「人並み以上」と「人並みで十分」が相反した動きを見せる。」と分析しています。

つまり、就職活動がラクだった時の新入社員の意識は緩いということです。

確かに就職が厳しくなった平成12 年以降は「人並み以上働きたい」が上回っています。

 

実際、私が就職した時は超売り手市場でした。かなり世の中をなめていたと思いますし、新入社員の頃の意識は、確かに...ユルかったと思います(反省)。

 

■真の安定を得るにはどうすればいいか?

ただそんな緩い考え方も社会人になれば変わらざるを得ません。

仕事をやるからには評価されたいと思うのが普通だし、責任ある仕事を任されれば残業もします。職階が上がって行けば大きな仕事も増えてきて、次第に野心も芽生えます。

「人並み」を志向することが緩いと言われますが、人並みに給料をもらい、人並みに子育てをして、人並みに家を買ったりすることがとても大変なことだということも次第にわかってくるはずです。

 

こんな私でも25年間社会人をやってきた経験から「思うこと」を若い方にお話しすることがあります。

「本当の安定を得るにはどうすればいいか?」ということについてです。

安定とは大手企業に入ることでも公務員になることでもありません。価値ある仕事をするためにその仕事に就くならいいが、安定のためだというならそれは正しい選択にはならない可能性が高いと思います。なぜなら世の中に安定した職場などはないからです。

ましてや今は人口が減っていき、すべての市場が緩やかに縮小している時代です。大したことをしなくても市場自体が成長しているお蔭で会社も自分も大きくなっていけるような、いわば「昇りのエスカレーター」に乗っているような時代ではありません。

 

縮小する時代はみんなが「下りのエスカレーター」に乗っているようなもの。

「下りのエスカレーター」に乗っている時代では、成長するために頑張って、エレベーターを逆向きに昇る努力をして初めてその場にとどまれます。何もしなければ下っていくだけです。

大手の銀行でも日本有数の大手メーカーでも倒産する時代です。安定した仕事を得て、安定してお金を稼ぐには相当な努力が必要です。もはや、会社も国も私たちに安定をもたらしてはくれません。

 

「人並みの生活」をするために働いて収入を得続けることを安定というならば、自分自身が「どんな状況になっても働くことができるチカラを持つこと」が安定するために一番大事なことです。

 

今の労働市場の中で自分の価値を高めて、年齢や性別や地域にかかわらず稼げるようになることです。そのために仕事をして、勉強をして、多くの経験を積むことです。コミュニケーション力や営業力や専門スキルを上げて、いずれ「自分はもうどんな状況になっても食っていけるチカラがある」という自信が持てたとき、精神的にも収入的にも本当の安定を得たことになるのだと思います。

 

■「人並み」生活への戦いは50歳からが勝負!

偉そうに言っていますが、私もまだまだそんな境地にはまったく至っておりません。

「人並みの安定」を目指す戦いはまだまた続きます。50歳を前にしたこれからが本当の勝負かもしれません。

私たちと私たちより下の世代はこの先、老後を迎えるにあたり不安があります。年金不安もあって自分たちの老後は「安定していないのではないか?」と思っています。

ただこの「老後不安」への一番の対策は、国に文句を言うことでもなく、企業年金をあてにすることでもありません。

 

まずは、「働いて稼ぐ額を増やし、貯蓄を増やすこと」。

次に「働く期間を長くすること」。

 

これからは年金受給が始まる65歳まで働くのが普通の光景になるでしょう。65歳以降も可能な限り長く働くという生き方が当たり前の時代になります。そうならざるを得ないと思います。

定年後はリタイアして悠悠自適の隠居生活なんて価値観はもうなくなるでしょう。

いつまでも働ける意欲とスキル、そして健康が必要になります。

「人並み」というのがどのレベルかわかりませんが、家族を養い、財産を築き、老後を安心して暮らすためには頑張って長く働くことになります。

 

新入社員の皆さん。

人生は長いです。今は緩いと言われても、いずれ本気を出す時は来ます。その時に備えて、焦らず、真面目にスキルを上げる努力をコツコツ続けていきましょう。

これから人生を切り拓いていかれる新入社員のみなさんへ「ゆるい世代」の先輩からのお話しでした。

 

今回は以上です。

もっと日本がよくなりますように。

 

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