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「外国人旅行者激減の衝撃」~政府は世界の風評被害の解消に全力を~

「外国人旅行者激減の衝撃」~政府は世界の風評被害の解消に全力を~

川瀬 太志

ハイアス・アンド・カンパニー取締役常務執行役員。都市銀行・大手経営コンサルティング会社・不動産事業会社取締役を経て現職に。住宅・不動産・金融の幅広い経験を元に、個人の資産形成支援事業を展開中。

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こんにちは!ハイアス&カンパニーの川瀬です。

東日本大震災により被害を受けられた皆さまには心よりお見舞い申し上げます。

■外国人旅行者激減でサービス業がガタガタに・・・

今、全国的にホテルや旅館、食品や外食産業などのサービス業がガタガタになっています。
<都内ホテルの稼働率5割切る 3月、キャンセル相次ぐ>
 (日本経済新聞4月16日付夕刊)
『国内のホテルが東日本大震災で大きな打撃を受けている。東京都内の主要ホテルの3月の客室稼働率は、前年同月比33.6ポイント減少し、49.8%と調査記録が残る1991年以降、過去最低となった。外国人を中心に予約取り消しが急増し、レジャー需要も縮小。4月に入っても低迷は続いている。』

平常時の主要ホテルの平均稼働率は75%程度。
そして「これを下回ったら赤字になる」という損益分岐稼働率はだいたい60%程度と言われています。ですから50%を下回った3月は大赤字だったということです。

私は仕事の関係で全国に出張しますが確かに空港や駅は空いています。
人の移動が少なくなったなと感じています。
特に外国人旅行者の方々を見かけなくなりましたね。

<3月の来日外国人は半減 過去最大の落ち込みに>
 (朝日新聞4月14日付)
『3月に来日した外国人は35万2800人と、前年同月より50.3%減少したことが分かった。落ち込み率は、大阪万博の反動が出た1971年8月(41.8%)を上回る過去最大。東日本大震災と原発事故で、「日本は怖い」というイメージが世界に広がった。(中略)
地域別では、韓国からが47.4%減の89,100人、中国は49.3%減の62,500人、台湾も53.0%減の42,100人。日本離れはアジアにとどまらず、米国も45.6%減の38,900人と総崩れの状態だった。
日本政府観光局は、外国人客の急減は「震災の状況が報じられ、世界に衝撃を与えたため」と指摘。とりわけ、原発事故で日本の安全・安心イメージが崩れ、渡航自粛を打ち出す国が相次いだことが響いた。今回は自然災害に加え、影響が長く続く原子力事故がのしかかり、「放射能漏れへの懸念が消えない限り、外国人客は戻らない」(大手旅行会社)との見方が多い。』

外国からの旅行者が半減したそうです。
確かに私がよく宿泊している都内のホテルでも震災前はアジアの旅行者の方ばかりでしたが今はぱったりといなくなりました。

私は京都在住ですが、毎年多くの外国の方をお迎えするこの季節でも今年はほとんどみかけません。ある京都の旅館は3月の売上が例年の7割以上も減少したそうです。
外国人旅行者激減の影響は東日本だけではなく全国的に波及しています。

ホテルや外食などのサービス業は人の移動や消費がなくなるとすぐにダメになります。
サービス業は95%以上が中小事業者です。大きな資本を持たないホテルや旅館、外食店舗などは売り上げがいつもの3割程度になっている状態で一体何カ月営業を続けることができるのでしょうか・・・。

■世界各国の支援意識の実情は?

海外各国首脳の支援の声明と実情はかなり異なっています。

<G20、日本復興へ連帯>
 (日本経済新聞4月15日付)
『米ワシントンで開いていた日米欧と新興国からなる20カ国・地域(G20)の財務相・中央銀行総裁会議は15日夕(日本時間16日朝)、共同声明を採択して閉幕した。東日本大震災や福島第1原子力発電所の事故を世界経済の新たな不確実要素としたうえで、日本の復興へ各国が連帯して支援する姿勢を打ち出した。(中略)
「日本の人々との連帯意識」「いかなる協力も提供する用意」「日本の経済・金融の強じんさへの信認」――。
今回のG20の共同声明の冒頭はまさに「日本支援ムード」一色となった。
日本の働きかけではなく、議長国フランスの強い提案で盛り込まれた。

震災後、ほぼ初めての国際的な大舞台。野田佳彦財務相と日銀の白川方明総裁は「国を背負う覚悟」(関係者)で参加し、かなりの時間を割いて復旧・復興の取り組みや金融面などインフラの健全性を説明した。
とくに野田財務相は福島第1原子力発電所の事故後に世界に広がる日本製品への「風評被害」の解消を呼びかけた。野田財務相は閉幕後の記者会見で「基本的には理解していただき、所期の目的は達成した」と胸を張った。』

野田財務大臣が一生懸命説明されたのはわかります。
各国首脳が「日本を支援する」と言ってもらったのはありがたい限りです。
でもそうは言いつつも、このG20の中で今現在も日本への渡航規制をしている国は12カ国もあります。

「支援する」と思ってくれるなら、是非日本へ来ていただきたい。
日本の製品や農産物を受け入れていただきたい。

でも、「支援したい気持ちはあるけど・・・放射線が怖いからムリ・・・」
というのが本音でしょう。
原発が爆発して放射能が漏れているとなったら、風評が出るのは当たり前です。
でも日本の発表がしっかりしていればここまでの海外での風評被害は起きなかったという批判の声もあります。

今起きている「世界に広がった風評被害の解消」は完全に政府の仕事です。
民間にはできません。今、日本の原発問題に対する世界の国々の懸念はむしろ強まっていると考えた方がいいと思います。
日本政府が原発問題にきちんと対応して世界が感じている不確実性を一刻も早く払拭していただきたい。
今も放射線におびえながら避難生活を余儀なくされている方々のためにも。
明日の営業をどうするか悩んでいるサービス業の方々のためにも。

早くしないと日本が持ちこたえられなくなってしまいます。
心よりお願い申し上げます。

今回は以上です。
次回、もっと日本が良くなっていますように。
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