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「日本国債は日本人が買っているから大丈夫ってホント?」~一番の問題点は何か?~

「日本国債は日本人が買っているから大丈夫ってホント?」~一番の問題点は何か?~

川瀬 太志

ハイアス・アンド・カンパニー取締役常務執行役員。都市銀行・大手経営コンサルティング会社・不動産事業会社取締役を経て現職に。住宅・不動産・金融の幅広い経験を元に、個人の資産形成支援事業を展開中。

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こんにちは!ハイアス&カンパニーの川瀬です。

新総理が誕生しますね。
経済にもしっかり手を付けていただきたいものですが・・・。

■借金したっていい?資産があれば!

先週末に自民党の麻生太郎元総理がテレビ番組に出演されていました。
自民党政権時代に借金を積み上げたことを問われ、このように答えていました。

『日本の国債残高が当時およそ450兆円。今やおよそ900兆円になった。経済危機だ!となって日本国債の格付けは格下げになった。つまり信用がなくなったわけだ。じゃ~国債金利は上がったか?むしろ長期金利は下がった。当時の金利は2.3%くらいだったのが、今や1%だ。危機だ!危機だ!とあおっているのは簿記がわかっていない人、マクロ経済がわかっていない人だ。』(要約)

麻生元総理がおっしゃっているのはどういうことかというと、

・通常、国債残高が増える(=政府の借金が増える)と、財政悪化を懸念して国債が市場で売れにくくなる。
・国債が売れないと国債価格は下がる(=長期金利が上がる)。
・しかし、日本では、借金が倍ほど増えたのに金利は上がるどころかむしろ下がった。
・つまり国債の信用は落ちていない。
・なぜ、国債が売れ残らないかというとそれは日本には国民の個人預金だけでも1,400兆円もあるから。
・簿記でいえば、貸方に「国債900兆円」となっても借方に「現金1,400兆円」なんだから全然財政危機ではない。

・・・ということでしょう。

関西ローカルなので安心していたのかもしれませんがずいぶんと思い切った物言いをするものだな、と思いました。

■国債はどこまでも出してもいいのか?

そもそも国債を発行して公共投資をするのは何のためでしょう?
景気を回復させるため、経済を大きくするためですよね。
でも、今、借金が倍くらいになって景気はどうなったでしょう。
いまだに景気は回復していませんね。デフレも解消していません。
国債が450兆円だったときも今も日本のGDPは500兆円前後で増えていません。

国債暴落で金利急上昇というのは「悪い金利上昇」です。
確かにそうはならなかったものの、経済成長で金利が自然に上がってくる「良い金利上昇」もなかったということです。
景気が良くなってきていれば、長期金利は上がってきているはずです。
つまり、「金利は上がっていない!」というのはこれまでに増やした借金は経済効果的には意味がなかったということを言っているのに等しいわけです。とてもではないですが自慢できることではないと思いますね。

■日本人が買っているから大丈夫?

国民資産があるんだから、国が借金をしたって問題ない!と財政出動をしたい政治家は言います。
では、貸借が合っている限り国債を出し続けてもよい、というのは正しいでしょうか?
いうまでもなくダメですね。限度があります。もしかしたらもう限度は超えているのかもしれません。

日本の国債は95%を日本人が保有していますので、「国債が日本の中で消化されているうちはいい」という話をよく聞きます。
これ実は全然よくないし、何の安心材料でもありません。
「日本人が保有している」=「国債価格は下がらない」というならいいです。
でもそんなことはありません。
日本人なら黙って国債を買い続けてくれる、そして買ったら決して売らない、とでも思っているのでしょうか?
すでにGDPの2倍以上の借金があって先進国でダントツに多いのです。
「もういっぱいいっぱいだな」、「何かあったら暴落するかもな」、と皆が思い始めています。これはすでに危険な水準です。

外国人が日本国債を買っていないのはあまりにも金利が低くて投資魅力が低いからです。
国債の価格が下がったら金利は上がります。
金利が上がって儲かるなと思ったら外国人だって入ってきます。
言うまでもなく、国債価格が下がったら今の価格で持っている人は損をします。
下がり続けたら損失はどんどん膨らみます。
その時にはさすがの日本の金融機関も売らざるを得ません。
さらにもっと価格が下がるな、と思えば投資収益を狙って先物で売りが先行するかもしれません。
(外国人投資家なら先安とみれば先物の売り浴びせは十分あり得ますね。これが一番怖い)
こうなったら・・・・もう暴落のスパイラルですね。

だから今は膨らみきった風船みたいなものでちょっとしたきっかけで価格が下がったり、売れ残ったりしたら、パーン!と破裂するかもしれない状況にあると思っておいたほうがいいと思います。

■一番の問題点は何か?

日本の財政の根本的な問題は今でも毎年の歳入(税収)より歳出の方が多いこと。
借金を減らすには毎年の収支を合わせなければなりません。
でも高齢化が進み社会保障費が膨らむ日本では歳出削減は難しい。
ですから歳入を増やさなければいけません。
そのために増税は避けられないでしょうが、税金を上げるだけではとても1,000兆円近い借金は返せません。
国民が耐えられないでしょう。
であれば、合わせて経済成長させて税収を上げるしかありません。
日本の一番の財政的問題点は「経済成長が止まっていること」なのです。
やはり大事ですね。経済成長戦略。

今回は以上です。
次回、もっと日本が良くなっていますように。

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