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「欧州債務危機!無関心ではいられない世界経済」~ドル・スワップ協定で円高は大丈夫か?~

「欧州債務危機!無関心ではいられない世界経済」~ドル・スワップ協定で円高は大丈夫か?~

川瀬 太志

ハイアス・アンド・カンパニー取締役常務執行役員。都市銀行・大手経営コンサルティング会社・不動産事業会社取締役を経て現職に。住宅・不動産・金融の幅広い経験を元に、個人の資産形成支援事業を展開中。

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こんにちは!ハイアス&カンパニーの川瀬です。

今回は『欧州経済危機』についてです。
遠い海の向こうのことではなくて、私たちの生活にも影響を与えることです。無関心ではいられませんね。


ギリシャのお陰で今年のボーナスなし!?

先日、地方都市の不動産会社社長が冗談まじりにつぶやいていました。
「ギリシャのお陰でこの辺で家を買う人が減ったんだよ。今年のボーナスはなしだね。ギリシャの経済なんて気にしたことなかったけど、まさかウチみたいな所にも影響があるなんてね~。」
この会社のお客様には欧州向けの輸出メーカーの従業員が多いそうです。欧州経済危機の影響で業績が落ち込んだとのことです。
リーマン・ショックでもわかったように、今世界の経済はつながっています。もはや世界中で起きていることで私たちの生活に関係のないことの方が少ないくらいなのです。


■EU債務危機は深刻な局面に!

さて、そのEU債務危機ですがますます深刻な局面を迎えつつあります。
先月、ギリシャだけでなく、イタリアやスペインの国債も価格が下落したことで、それらの国の国債を大量に保有する欧州の金融機関の信用不安が一気に拡大、一部の銀行は金融市場でドル資金が取りにくい状況になりました。
銀行は信用がなくなって市場で資金の確保ができなくなると資金繰りに行き詰まり、倒産します。
そこで12月1日、EU、アメリカ、日本、イギリス、スイス、カナダの6つの中央銀行が協調して緊急対策を打ちました。
↓↓↓
『ドル資金供給で協調 日米欧の6中銀が緊急策 欧州銀の調達支援』
(日本経済新聞2011年12月1日付)
<国際金融市場での緊張の高まりをふまえ、日米欧の主要中央銀行は30日、市場へのドル資金供給を拡充するための協調対応策で合意した。米国が各中央銀行にドル資金を供給するときの金利を0.5%引き下げ、金融機関がドル資金を容易に調達できるようにする。(中略)アメリカの連邦準備制度理事会(FRB)が他の中央銀行にドル資金を融通するスワップ協定を延長し、2013年2月1日までとした。欧州の債務危機がグローバルな信用不安を招き、金融機関の資金繰りが行き詰まるのを防ぐ。> 

アメリカと各中央銀行がドルをより融通しやすくしますよ、これで当面資金不安はありませんよ、というメッセージを市場に発信したわけです。

12月1日の発表を受けて、翌2日、市場は安定しました。
↓↓↓
『ドル供給 市場不安一服 世界株高、金利は低下』 
(日本経済新聞2012年12月2日付)
<欧州債務危機を発端とする金融システム不安がひとまず和らいだ。日米欧の中央銀行の外貨融通拡充で、1日の金融市場ではドル資金の調達金利が大幅に低下。新興国の金融緩和も重なり、世界的に株価が上昇した。>
 
中国やブラジルなどの新興国も相次いで金融緩和策を発表しました。これらにより世界の金融システムへの不安は、一旦は薄れました。当面の危機は回避されたのです。


■「通貨スワップ」ってなに?

今回のニュースに出てくる「通貨スワップ協定」って何かご存知でしょうか?
「通貨スワップ」とは、異なる通貨を交換できる取引のことです。
現在、欧州市場ではユーロ危機でドルが不足し、外貨での決済がしにくくなっています。
今のユーロのように通貨としての信用が落ちるとドルを調達しようにも高い金利がかかります。そこを特別な通貨スワップ協定を結ぶことでドルを低い金利で調達できるようにしたのです。これで欧州各国はEU中央銀行にユーロを渡せば、簡単にドルを受け取ることができるようになります。
信用度の低いユーロが信用度の高いドルに変わることが保証されたのですから、ユーロへの安心につながります。しかも金額は無制限です。

実は、この各国中央銀行が協調して安定的にドルを供給するという施策は、すでに2年前のリーマン・ショックの時から実施されています。2010年の2月にリーマン・ショックの危機は脱したということでいったん終了しましたが、今度はユーロ不安だということで2010年5月に再開されて、現在まで続いています。このスワップできる金額は無制限ですからすでに世界は大量のユーロを保有しています。
この先ユーロがもし大暴落したら、当然世界の中央銀行は大きな損をこうむりますよね。世界同時恐慌にもなりかねません。
そういう事態にならないようにとことん支え続けます!という意思表示をしたわけですね。
要は、アメリカや日本が欧州ユーロの保証人になっているとも言えますね。


■明らかに心配なこと=円高!

保証人なのですから心配なことはいろいろあります。何とか安定に向かっていただきたいものです。その中でも、直接的に影響が出るんじゃないかな、と思われる心配事は、「円高」です。
リーマン・ショック以降、ドルの供給量は約2.5倍に増えています。イギリスポンドはなんと約3倍です。よく「お金を刷りまくった」と表現されるように、この間、世界各国はマネーストックを増やし続けてきました。ただ日本だけはなぜかまったく円の供給量を増やしませんでした。
日銀のホームページにある「円の供給量を示すマネーストック統計」によるとリーマン前後の2008年と2011年のマネーストックはほぼ変わっていません。

「世の中に大量にあるものの値段は下がり、少ししかないものの値段は上がる。」という資本主義の当たり前の原則が働いたのが今の円高の要因のひとつです。少しばかり市場介入したくらいで効果があるわけがありません。そしてさらに今回、世界の中央銀行がドルを大量に市場に流すわけです。
円高、大丈夫なんでしょうかね。


■「12・9」EU首脳会議がヤマ

今回の中央銀行の対策は言うまでもなく応急措置です。
欧州中銀によるイタリア国債の引き受けるのかとか、ユーロ共同債の道筋がつくのかということを市場はかたずを飲んで見守っています。欧州中央銀行理事会が12月8日、EU首脳会議が12月9日です。はたしてドイツは主導権を発揮するのでしょうかね。

いずれにせよ、今の世界の金融市場はすごく不安定です。
欧州問題が解決に向かうことが確認できるまでは、株も通貨も債権もどうなるかまったくわかりません。
今はあまり動かない方がいいんでしょうね。
年末年始にかけ不安定な日々が続きますが、世界がよい方向に向かうことを祈りたいと思います。

今回は以上です。
次回、もっと日本が良くなっていますように。





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