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「2012年度税制改正大綱発表」~今後の住宅政策はどうなる?~
»2011年12月20日
世の中の動きの個人資産への影響を考えてみる
「2012年度税制改正大綱発表」~今後の住宅政策はどうなる?~
ハイアス・アンド・カンパニー取締役常務執行役員。都市銀行・大手経営コンサルティング会社・不動産事業会社取締役を経て現職に。住宅・不動産・金融の幅広い経験を元に、個人の資産形成支援事業を展開中。
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こんにちは!ハイアス&カンパニーの川瀬です。
去る2011年12月10日(土)に政府は2012年度税制改正大綱を発表致しました。
気になる住宅関連税制はどうなったでしょうか?
■今回の税制改正大綱は・・・「小粒減税の寄せ集め」
今回の税制改正大綱は翌日の新聞各紙を見ましても、「目玉がない」「小粒減税の寄せ集め」といった感じであまり評価は高くありません。
実は、増税路線が鮮明になった前回の2011年度税制改正の項目の多くは実現していません。増税に慎重な野党との調整が難航していたところに震災が起きました。もともと財政再建のためだった増税論議が、復興財源議論となり政府は完全に迷走、復興増税対策の詳細が決まったのがなんと11月。震災から8か月もかかりました。
今回の2012年度税制改正では2011年度の「積み残し項目」が実施されるのかなと思っていましたが、検討期間が短かったためか再び先送りされた項目がかなりありました。
所得税や酒税、たばこ税などは早々に先送りを決定、配偶者税額控除の廃止や相続税の基礎控除縮小なども来年度以降の検討ということになりました。
増税慎重論の強い野党に配慮しつつ、年明けから本格化するであろう「消費税増税論議」に絞り込んだのでしょうかね。
■住宅関連税制はどうなる?
私の仕事の領域である住宅関連に関するところは以下のようになりました。
<住宅、贈与税特例を延長 住宅ローン減税 、「省エネ」に上乗せ>
(2011年12月10日付 日本経済新聞)
『政府は2012年度税制改正で、住宅購入への税優遇を拡充する。親や祖父母から購入資金を援助してもらう際の贈与税を非課税とする措置を延長。省エネや耐震性能の高い住宅には非課税枠を上乗せする。省エネ住宅については住宅ローン減税も上乗せし、優良住宅への投資促進を狙う。』
「住宅購入の税優遇を拡充する」とありますが、感覚的には拡充された感じはありません。
住宅ローン減税などはもともと決まっていた内容とほぼ同じです。廃止しなかったという程度なんですね。
それでも住宅取得資金の贈与税非課税の延長などには、政府税制調査会の「意思」のようなものを感じます。
それは、「家を買うなら性能の良い家を、そして早く買った方がいいですよ!」ということです。
贈与の非課税枠についてご説明します。
今年までの制度では、2011年中に親などから住宅資金の贈与を受けた場合の非課税枠は1,000万円(基礎控除110万円とあわせ、最大1110万円まで)でした。
2012年度の改正では、これを3年間延長します。
非課税枠は以下の通りです。
2012年度:1,000万円 (省エネ住宅は1,500万円)
2013年度:700万円 (同 1,200万円)
2014年度:500万円 (同 1,000万円)
省エネ住宅などの性能の高い住宅は非課税枠を500万円上乗せします。
また2014年度まで徐々に非課税枠を縮小していきます。つまり前倒しでこの贈与の制度利用を促しています。
「性能の良い家を、早く買え」と言っていますでしょ。
総務省の家計調査年報によると、日本の貯蓄の7割以上は60歳以上の高齢者が保有しています。
この資産を若年層に移転させて住宅市場の活性化、引いては経済活性化を図るのが政府の狙いですね。
実際、今住宅購入を検討している30代を中心とした現役世代の所得は低迷していて、多くの方は住宅予算の不足に頭を悩ませています。私も住宅ローン相談の場面で必ずこの贈与税非課税枠の話をして「お父様、お母様のご支援の可能性はありませんか?」と聞いています。
国土交通省によると2010年には約7万1,000人がこの贈与特例を利用したそうです。
■家を買うなら・・・キーワードは?
「高齢者資産の若年層の移転」という方針は明らかです。
今回見送られた「相続税の基礎控除の縮小」(=相続税の実質的増税)については、「社会保障と税の一体改革による消費税増税とあわせ、13年度以降の改正で議論する方針。」(政府税調)としています。
1年前の税制改正大綱が発表されたときにこのメルマガで書いたように、
(ハッピーリッチ・アカデミー第110号『相続税課税強化、高齢者資産はどうなるか?~大増税時代の動向に注意しよう~』
相続税の基礎控除が縮小されますと課税資産5000万円弱程度で相続税がかかってきます。そうなるともはや相続税は富裕層や地主だけが心配するものではなくなります。老後を安心して暮らしていけるくらいの預金と都市周辺部にちょっとした不動産を持っている人なら相続税の対象になってくる可能性があります。
「それならこれを機会に住宅について考え直そうか」という人は当然増えるでしょう。
実際、最近の住宅ローン相談会には親子連れの方が増えています。
先日も親子で来られた方が、お父さん所有の古い自宅を売って、その売却資金を息子に贈与して二世帯住宅を建てようかという相談がありました。
こういう方にはまさに来年2012年がチャンスですね。
来年2012年度中なら贈与税は、省エネ住宅なら1,500万円まで非課税です。住宅ローン減税も最大で400万まで返ってきます(2013年は最大300万円)。
再来年の2013年になると相続税が課税強化される可能性が大ですし、住宅ローン減税は300万までしか返ってきません。
2014年になると住宅ローン減税は終わっています。その時にはかなりの確率で消費税も上がっているでしょうしね。
今回の大綱は小粒減税の寄せ集めで、日本経済と財政をどうしたいのかがよく見えない戦略性に欠けるものでした。
でも住宅を買おうかどうしようかと思っている人には改めてはっきりしたメッセージが出たのではないでしょうか。
この「性能の高い住宅を、早めに買った方がいいでしょう!」という方向性はここ数年の住宅業界のメインストリームになると思います。
今年はこれで最後です。
来年はもっと日本が良くなっていますように。
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