誠ブログは2015年4月6日に「オルタナティブ・ブログ」になりました。
各ブロガーの新規エントリーは「オルタナティブ・ブログ」でご覧ください。

「今年も勝手に展望 どうなる2012年」~国際情勢から目が離せない一年に~

「今年も勝手に展望 どうなる2012年」~国際情勢から目が離せない一年に~

川瀬 太志

ハイアス・アンド・カンパニー取締役常務執行役員。都市銀行・大手経営コンサルティング会社・不動産事業会社取締役を経て現職に。住宅・不動産・金融の幅広い経験を元に、個人の資産形成支援事業を展開中。

当ブログ「世の中の動きの個人資産への影響を考えてみる」は、2015年4月6日から新しいURL「​http://blogs.itmedia.co.jp/hyas/」 に移動しました。引き続きご愛読ください。


あけましておめでとうございます。ハイアス&カンパニーの川瀬です。本年もよろしくお願い申し上げます。
年明け第1回目の今回は、今年も勝手に日本経済を展望してみます。

毎年、年明けにはその一年の経済を(誰に頼まれたわけでもないですが)勝手に展望しています。
昨年の年初には、「2011年は本格的な景気回復の年になるのでは・・・」という明るい雰囲気が漂っていました。世界経済がリーマンショックから立ち直る過程にあって、日本の景気回復も確かなものになると期待されていましたね。
そんな淡い期待は3・11で吹き飛びました。東日本大震災、原発事故、円高、欧州債務危機、タイの洪水など、まさに「想定外」な事態がずっと続き、経済的にもいいことがなかった一年でした。

さて、「今年(こそ)は良くなる!」という明るい展望を見出したいところです。
明るい材料としては震災復興需要があります。ようやく予算が動き始めることである程度は期待できるものの、それは建設業界など一部にとどまるでしょうし、一過性のものだと思います。客観的に見ると、今年の日本経済は昨年より厳しくなりそうだと考えざるを得ません。


■懸念材料その1:「欧州債務危機」

今世界は懸念材料に満ち溢れています。
日本もグローバル経済の一員である以上、確実に世界の影響を受けます。
まずひとつめは、昨年世界経済を揺るがしたユーロ圏の債務危機。
これはむしろこれからが本番でしょう。イタリアの国債が一斉償還期を迎える2月以降に早速正念場を迎えそうです。ギリシャやイタリアの国債が「いよいよヤバイ」ということになりますと、国債を多く保有する欧州の金融機関の信用度が問題になってくるでしょう。すでに欧州金融機関の何行かは資本不足が懸念されています。
「債務危機」→「金融システム不安」と来れば、次に来るのは「貸し渋り」ですね。
そうなると欧州各国の企業は防衛に走るでしょうから、すぐに雇用不安が出てきます。失業が増加しつづけると欧州が本格的な不況になりかねません。
「債務国救済」、「金融機関の資本安定化」、「雇用対策」、「経済成長策」・・・。こういったキーワードが飛び交うことになると思いますが、そういった施策を利害が複雑に絡み合う欧州各国がどう調整し、乗り越えていくのか。とても半年やそこらで片の付く問題ではないと思います。ユーロ安は当分続くでしょうね。


■懸念材料その2:「新興国の景気減速」

先進国が足踏みを続けている中、いつも経済のけん引役として期待されるのは新興国です。
IMFによると今年のGDP成長率の予測は、中国9%、インド7.5%、ブラジル3.6%。軒並み高成長を期待されていますね。でも欧米先進国がヘタっているのに新興国だけがいい、なんてことはあるんでしょうか?
例えば、中国。
中国は機械部品の輸出などで稼いでいますが今年は欧米諸国への輸出は期待できません。すでに中国の少なからぬ工場が大幅な売上減少と在庫の増加に直面し始めているそうです。
国内に多くの諸問題を抱える中国は高い経済成長でそれらを覆い隠してきました。経済成長が鈍化するのに伴って、中国で国内問題が発生しないかは要注意です。中国はすでに日本の最大の貿易相手国ですから中国の動静は私たちにとっては大きな関心事です。
それに中国は国内問題が起きそうになるとだいたいその矛先を日本に振り向けて何かと厳しく出てきますからね。


■懸念材料その3:「中東情勢不安」

一番心配なのは中東情勢です。中でもイランの動きは不穏です。

<イランと欧米の緊張一段と、イラン副大統領 「ホルムズ海峡封鎖も」> 
(日本経済新聞2011年12月28日付)
『イラン国営通信によると、ラヒミ・イラン第1副大統領は27日、欧米がイランの原油輸入削減につながる制裁を続ければ、世界への中東原油供給の大動脈であるホルムズ海峡を封鎖する可能性があるとの見方を示した。ラヒミ氏は「制裁を科せば、重要なホルムズ海峡から石油が一滴も流れなくなるだろう」と述べた。』

核開発疑惑があるイランに対して、欧米は包括的な制裁を実施しています。その欧米をけん制する狙いだと思いますが、年末からイランの海軍はホルムズ海峡で軍事演習を開始しました。それに対して、アメリカ国防総省パネッタ長官も「ホルムズ海峡封鎖なら軍事介入も辞さず」と表明し、年明けから空母やイージス艦をインド洋に集結させています。ホルムズ海峡はすでに一触即発の状態です。

これは「海の向こうの出来事」と無関心でいられることではありません。日本が輸入する原油の85%がホルムズ海峡を通っています。
中東の緊張の高まりに伴って、すでに原油先物価格は1バレル100ドルを超えました。(可能性は低いですが)万が一ホルムズ海峡で有事となればただでさえエネルギー問題を抱えている日本経済はズタズタになりますね。エネルギーを大量に使用して生産拡大を続けている新興国経済にも大きなマイナスの影響が出ることでしょう。


■「想定外」を想定して「嬉しい誤算」を期待!?

今年は国際情勢の変化から目が離せない年になります。2012年は「選挙イヤー」でもありアメリカやフランス、韓国などのリーダー選びが行われます。自然と各国の政策は内向きになり、自国利益を優先した動きが取られることでしょう。

IMFの予測によると、2012年の日本のGDP成長予測は「2.3%」だそうです。その根拠は「復興需要」と「新興国需要の増加」とのこと。
確かに、円高やエネルギー問題などを抱えながらも日本の企業は頑張っています。震災後のサプライチェーンの回復は奇跡的なものでした。この3月決算を増益で迎える企業は数多くあります。
新年早々、暗い話ばかりになってしまいましたが、それでもまだ日本のGDPは約500兆円近くもあって、日本の上場企業は黒字決算を続けています。私たちは足腰が強いんです。海外の出来事は何か起きるかわかりません。でもそれを「想定外」と言わず、様々な事態を「想定」した上で、甘い期待をせずに、出来ることをコツコツとやっていくしかないですね。「復興需要」も「新興国の需要増」も定かではありませんが、もし様々な危機を回避できていけばひょっとすると年度後半に景気回復が実感できるかもしれません。
今年はかなり期待値が下がっています。それが、「期待していなかったけど思いもかけず景気回復!」なんていう嬉しい誤算があればいいですね。

国際情勢は予断を許さない状況ではありますが、私たちは気を引き締めて自分の持ち場で日々懸命に努力するしかありません。「嬉しい誤算」はそういう努力している人の上にひそやかに降り注ぐのでしょうね。皆さん、頑張ってまいりましょう!

今回は以上です。
今年、日本がもっと良くなる一年になりますように。







-------------------------
今回の記事はいかがでしたか?
「ハッピーリッチ・アカデミー」の「カワセ君のコラム」では、過去のバックナンバーをご覧頂けます。
また、ハッピーリッチ・アカデミー会員に登録して頂くと隔週でメールマガジンにてお届けします。
是非あわせてご覧ください。