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「資産価値の高い家づくり22の知識」(幻冬舎)より~家は資産か?耐久消費財か?~

「資産価値の高い家づくり22の知識」(幻冬舎)より~家は資産か?耐久消費財か?~

川瀬 太志

ハイアス・アンド・カンパニー取締役常務執行役員。都市銀行・大手経営コンサルティング会社・不動産事業会社取締役を経て現職に。住宅・不動産・金融の幅広い経験を元に、個人の資産形成支援事業を展開中。

当ブログ「世の中の動きの個人資産への影響を考えてみる」は、2015年4月6日から新しいURL「​http://blogs.itmedia.co.jp/hyas/」 に移動しました。引き続きご愛読ください。


こんにちは!ハイアス&カンパニーの川瀬です。
この度、私、家づくりに関する本を出版いたしました。

川瀬太志・柿内和徳 共著

「どうせ家を建てるなら資産価値の高い家をつくっていただきたい」というのが本のテーマです。
今回は少しだけその紹介をさせていただきます。


■家は資産か?耐久消費財か?

私たちにとって家とは何でしょう?
「日々の暮らしの基盤」
「家族が集い、憩い、育つ場所」
「大切な家族の生命・財産を守るための場所」
などなどいろんな捉え方があると思います。
ただ、一般的に「家とは?」と問われたら主に家の「住まい」としての役割・機能に注目しがちです。

家にはもうひとつの側面があります。
それは「資産」という側面です。預貯金などと同じく、土地や家屋は大切な財産です。少なくとも欧米ではそう考える人が多くいます。しかし日本では、家を買ったり建てたりしたときに「財産を手にした」と考える人は少ないでしょう。

なぜでしょうか?
住宅の購入には、普通数千万円という大金が必要です。そのため多くの場合は数十年にわたって返済し続ける住宅ローンという負債と交換でやっと手に入れられるものです。
しかし住宅ローンが完済される30年数年後には、住宅の建物としての価値はほぼゼロになっています。
「不動産」という言葉の意味からしても本来であればそれは私たちの立派な資産でなければなりません。でも日本の家はわずか30年でその資産価値を失ってしまうのです。これでは家を「資産」と考えない人が多いのも当然です。むしろ「負担の大きい耐久消費財」と言ってもいいくらいです。

■日本の住宅の平均寿命は30年!

日本では家を建てたとたんに急激に資産としての価値を落とし、それからも徐々に評価額を下げながら住宅ローンが完済されるころにはまったく無価値になっています。30年経過するとその頃には建て替えなければ快適な生活ができないほどにまで住宅自体が傷んでしまっているということもこれまでにはよくあったことです。

国土交通省の住宅・土地統計によると、日本の住宅の平均寿命は30年です。
国際比較でみると、アメリカでは55年、イギリスでは77年。
日本の住宅寿命は欧米と比べても著しく短いと言えますね。
欧米では100年以上にわたり長く住み継がれている家もザラにあります。30年以上経過してから中古市場に売りに出しても十分な価格で売買されています。
しかし、日本の中古市場で築30年の物件ともなるともはや建物の価値はなく、ほぼ土地の価格で売買されています。

例えば、土地:1,000万円+建物:2,000万円=合計3,000万円で新築の一戸建てを買ったとします。
ローンを組んだとするとローン利息も合わせて、家計から支出する総額は4,500万円くらいになります。(35年返済、金利2.5%として)

それを30年後に売りに出すと、売り出し価格はその時の土地の価格のみ。
つまり土地の相場が下がっていないとしても売却価格は土地価格のみの1,000万円。
土地の価格相場が下がっていたら目も当てられませんね。
欧米なら3,000万円で買った家は、30年後に売ってもそれほど価格は変わりません。むしろ上がるケースもあるくらいです。
欧米では自宅は文字通り「不動産」。
でも日本では「耐久消費財」。

この違いは何なのでしょうか?

■日本の住宅が価値を落とす理由とは?

日本の住宅の建物が、購入後急激にその価値を落とし、30年もすると無価値になってしまうのはなぜでしょうか?
まずひとつめの理由は、「日本の住宅はそもそも高い」ということです。
新築住宅の価格の中にはかなりの割合でムダなコストが入っています。
少しも改善が進まない流通コスト、不必要なほど多種多品目の建築部材を利用する現場、非効率がまかり通っている工期や工賃など。
これらが本来的な家そのものの資産価値に上乗せされてしまっています。
住宅が完成したとたんそういった余計な費用部分は霧散霧消して素のままの家の価値だけが残ります。だからこそ資産価値は完成直後に急落するのです。

もう一つは、「本当に30年以上長持ちしない家が多い」からです。
欧米では家の構造はしっかりしているので、表面的に傷んだ箇所に手を加えながら長く維持していきます。
でも日本の住宅は構造そのものがダメになってしまう家が少なくありません。
築後30年以上経って、リフォームしようかと思っても、壁の中はカビだらけ、根太も垂木もボロボロ・・・。こんな状態では手の加えようがありません。
だから、「建て替えた方がいいですね~」などと業者さんに言われてしまうのです。
日本の住宅はこれまで耐久性に関する考え方が甘く、基本性能が低かったのです。
しかも性能が低いから年を追うごとに維持費がかかります。またエネルギーのロスも増していくので光熱費も上がっていきます。そういうランニングコストの持ち出し増加分がさらに家の価値を下げていきます。

■家の資産価値を高めるにはどうすればよいのか?

高度経済成長の時代に広まったのが、家も電気製品やクルマなどと同様に古くなったら建て替えればいいという考え方です。
ただし、そんなこれまでの奇妙な常識はいまや大きく変わろうとしています。

まず政府が古くなれば壊して新しいものを建てればいいというフロー型の住宅政策を改めました。これからは長期にわたって快適に暮らせて効率的なエネルギー消費が必須とされる住宅を積極的にバックアップする方針を打ち出してきたのです。
また住宅施工の面でもこの方針を現実のものにすることができる高性能な建築部材が開発され効率的でムダを省けるいくつもの工法も登場してきています。
それらを組み合わせて耐久性や省エネルギー性の高い高性能な家を建てることが可能になってきているのです。
長期的に資産としての価値を保ち続ける住宅が建てられる環境が整いつつあるといっていいでしょう。

・・・ということで、
「では、資産価値の高い家をつくるにはどうすればよいのか?」ということをこの本の中で書いています。
資産価値という点に注目すれば家は予算をかければかけた分だけ確かに価値が上がります。ただし家計の予算には限りがあります。できるだけコストを抑えながら高性能を実現しなければなりません。
そんなコストパフォーマンスの高い家を作るための知識をまとめています。

30年後に後悔することのない家を建てるためにぜひご一読いただければ嬉しく思います。


【おまけ】
私はここ数年、真面目に資産価値の高い家づくりに取り組んでいる全国各地の工務店さんに出向いて、「後悔しないための賢い家づくり勉強会」というようなタイトルで、住宅購入を考えていらっしゃる皆さんに色々とお話をしています。

住宅購入は最も大きなライフイベントのひとつです。でもお客様はいつも藪の中。「家」にはわからないことが多すぎるのです。世の中にあふれる情報や住宅会社のセールストークに皆さん右往左往していらっしゃいます。

そんな皆さんに家づくりの「モノサシ」のひとつにでもなればと思い、いつも勉強会でお話ししていることを中心に本を書きました。今日、本文で書いたことがより詳しく書いてあります。

2~3時間で簡単に読める本です。是非ご一読いただければ幸いです。

今回は以上です。
日本がもっともっと良くなりますように。





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