誠ブログは2015年4月6日に「オルタナティブ・ブログ」になりました。
各ブロガーの新規エントリーは「オルタナティブ・ブログ」でご覧ください。

「通年採用は是か非か?」~大学秋入学で予測される就職環境の変化とは?~

「通年採用は是か非か?」~大学秋入学で予測される就職環境の変化とは?~

川瀬 太志

ハイアス・アンド・カンパニー取締役常務執行役員。都市銀行・大手経営コンサルティング会社・不動産事業会社取締役を経て現職に。住宅・不動産・金融の幅広い経験を元に、個人の資産形成支援事業を展開中。

当ブログ「世の中の動きの個人資産への影響を考えてみる」は、2015年4月6日から新しいURL「​http://blogs.itmedia.co.jp/hyas/」 に移動しました。引き続きご愛読ください。


こんにちは!ハイアス&カンパニーの川瀬です。
新年度になり街には初々しい新入社員があふれていますね。
今回は今話題の企業の通年採用についてです。


■大学の入学・卒業時期は秋に移行?

昨年、東京大学が秋入学移行構想を発表しました。
その背景には、経済のグローバル化の進展に対応できる人材の育成が急務であることや国際的な大学間競争を乗り切らねばならないといった危機感があるようです。
東京大学では「世界の7割が導入する秋入学への移行は不可欠」としています。

東京大学の秋入学移行構想を受け、私立大学を含めた他の大学でも秋入学移行の検討を始めています。
日本私立大学連盟が加盟123校に尋ねたアンケートでは約8割の大学が移行の是非を「検討中」なのだそうです。
「秋入学移行」の課題としては、高校卒業から大学入学までの半年間のギャップタームの経済的負担などが挙げられていますが、ギャップタームの間に学生に多様な体験を積ませるためのプログラムや奨学金を出すことなどの対策が検討されているようです。


■産業界の反応は? 通年採用の意義とは?

大学の秋入学移行に対して産業界の反応はおおむね好意的なようです。
大学の秋入学移行は、年間を通じて採用活動をする「通年採用」が広がる契機になる可能性が高いからです。経団連の調査によると、通年採用に「賛成する」「どちらかといえば賛成する」は合わせて77%にのぼります。

もともと産業界は新卒者の採用において、現在までの主流である新卒一括採用だけではなく、1年を通じて新卒採用を行う「通年採用」を志向してきました。
企業が通年採用を支持する理由としては、「新卒一括採用だけでは新卒時に採用されない人が厳しい環境に置かれるから」です。
就職選考活動を特定の時期に集中させないことで、企業が学生をじっくり選べるようにし、学生の就職の機会をも増やすのが狙いです。

すでに「ユニクロ」のファーストリテイリング社では、新卒・中途を区別せずに年間を通じて選考しています。報道によりますと、同社の柳井正会長は「秋入学は東大1校からでも始めるべきだ。通年で採用した方が企業と学生がお互いをじっくり選べる。より良い人材を採れる可能性が高まる。」と語っています。

経済界経団連の調査では、本年度の新卒者採用で通年採用を実施した企業は26.5%。
前年対比で+5ポイント増加しました。
通年採用実施企業はまだまだ少数派ですが、今後、企業が採用の選択肢を複数設ける動きは広がっていきそうです。


■通年採用で失業率が高まる?

ただ、注意すべきこともあります。
通年採用が一般的になることで若者の雇用環境が良くない方向に変化する可能性があるからです。

労働経済学が専門の慶應義塾大学の清家篤塾長は、
「在学中に就職先が決まり、卒業と同時に正社員で採用される一括採用の仕組みは日本の若年者失業率を先進国の中で著しく低い水準にしてきた。」と指摘しています。

また以前、討論番組で安倍晋三元首相が、この20年で日本の借金が増えたことに対して以下のようなことを語っていました。
「1990年前半のバブル経済崩壊後、日本は低成長時代に突入しました。90年代後半には不安定になった金融システムを維持するために公的資金も入れました。その後もアジア金融危機やITバブル崩壊、9・11アメリカテロと、日本のみならず世界の経済を揺るがす出来事が相次ぎました。そういった経済危機に直面したときの政府の対応は欧米と日本では大きく異なります。欧米では経済が危機的状況になっても政府が借金をして経済を維持するのではなく、各企業に責任を取らせます。欧米の企業は採用ストップや大量の社員解雇をするなどして危機を乗り切ろうとします。
しかし、新卒一括採用システムの日本で同じことをするとその年度の4月の新卒者は就職ができなくなってしまう。だから日本ではそういうドラスティックな雇用調整方法は採るべきではないのです。今、失業率が5%台なのは日本だけ。今、日本は安定した雇用を維持できている。そのかわりに政府の借金が増えた。これは国の仕組みの違いと政府の選択の問題なのです。」
(※記憶に頼って書いていますので要約・意訳です)


実際、通年採用を行っている欧米の大企業では一部のエリートを除いて、若者をインターンやアソシエ、トレーニー(見習い)といった非常に不安定な立場で働かせています。
数年後に正社員になれるのはほんの一部。
企業の業績次第で簡単に解雇されてしまう可能性もあります。
結果、欧米の若年層の失業率は日本よりずっと高くなっています。ですから決して、欧米の就活が正しいわけではないという見方もありますね。
(だからと言って国が借金をこんなに増やしていいわけではないですけどね)


■いついかなる時も雇用されるチカラを!

年度の途中で入社できる通年採用は転職を促すことにもなります。
通年採用を支持する企業の約6割は、「通年採用になると、中途も含めて幅広い人材を採用しやすくなる。」と考えています。
ひとつの会社に勤め続けるのが当たり前と思う人はだいぶ減っている中、採用改革とともに人材の流動化もより一層進む可能性がありますね。

採用時期や形態が多様化することは決して悪いことではないと思いますが、それが企業の雇用調整に都合よく使われることにならないようにしていただきたいものです。

まー、結局、私たちはいつ、いかなる状況でも企業側から「欲しい」と思われるように自己のスキルと経験を高めるしかないのですけどね。
みなさん、がんばりましょう!


今回は以上です。
日本がもっともっと良くなりますように。






-------------------------
今回の記事はいかがでしたか?
「ハッピーリッチ・アカデミー」の「カワセ君のコラム」では、過去のバックナンバーをご覧頂けます。
また、ハッピーリッチ・アカデミー会員に登録して頂くと隔週でメールマガジンにてお届けします。
是非あわせてご覧ください。