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「景気回復はホンモノか?」~消費者物価指数と日銀の金融政策のポイント~
»2012年4月17日
世の中の動きの個人資産への影響を考えてみる
「景気回復はホンモノか?」~消費者物価指数と日銀の金融政策のポイント~
ハイアス・アンド・カンパニー取締役常務執行役員。都市銀行・大手経営コンサルティング会社・不動産事業会社取締役を経て現職に。住宅・不動産・金融の幅広い経験を元に、個人の資産形成支援事業を展開中。
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こんにちは!ハイアス&カンパニーの川瀬です。
今回は景気判断にも、そして私たちの生活にも重要な数字である「消費者物価指数」についてです。
■2・14金融緩和発表で潮目が変わった
最近、少し景気が回復してきた感じがしますよね。
明らかに潮目が変わったのは2か月前の2月14日、日銀の「持続的な金融緩和方針」の発表の時からでした。
「安定的な物価安定の目途をインフレ率1%として、1%到達が見通せるまでゼロ金利政策を解除しない。」(日銀 白川総裁)という発表に市場はすぐに反応しました。
翌15日から円安が進み、円高修正による業績回復への期待から、日経平均株価も上昇基調が続きました。2月当初からみると3月末までに日経平均株価は10%以上も上昇しました。
「いよいよ日銀が円高の是正と株価の上昇を通じてデフレを脱却しようと本腰を入れ始めたな」と市場が感じた結果ですね。
■引き締めと緩和、日銀は好きなのはどっち?
景気が良くなって、物価が上がりすぎたら(インフレ)、金融政策は「引き締め」。
景気が悪くなって、物価が下がりすぎたら(デフレ)、金融政策は「緩和」。
金融政策を担う日銀がやることは、
「金融引き締め」、と言ったら政策金利を引き上げるとともに通貨供給量を減らす。
「金融緩和」、と言ったら政策金利を引き下げるとともに通貨供給量を増やす。
これが常識です。
今の日本の不況の原因のひとつは「デフレ(持続的な物価の下落現象)」ですね。
デフレというのは多分に金融的な現象なのでまずは金融政策で対処すべき、と言われています。
ですが、(もともと金利を上げておきたい傾向の強い)日銀はなかなかスキあれば金利を上げようとしたりして、腰を据えてデフレが解消するまで金融緩和を続けるといった姿勢を打ち出してきませんでした。
それが、日銀が「物価が1%上昇するまで頑張る!」と言っただけで円高と株価が是正されました。
金融政策のもつ力をまざまざと見せつけられた思いです。
■今の消費者物価指数はどうなっている?
では今、物価はどうなっているのでしょうか?
物価の動向を見るメインの指標としては、総務省統計局が毎月発表している「消費者物価指数(CPI)」があります。
総務省統計局平成24年3月30日発表の「消費者物価指数速報(平成22年基準)」によると、
平成24年2月分の総合指数は・・・
平成22年を100として、「99.8」 (前月比+0.2%の上昇、前年同月比+0.3%の上昇)
3か月連続の上昇です。
物価は上がってきているんですね。
じゃあ、このまま上がっていって「大体1%くらいは上がったね!」となったら金融緩和を止めていいか、さらに引き締めに転じてもいいか、というとそうではありませんね。
なぜなら、今の物価上昇の要因が「エネルギー価格の上昇によるものだから」です。
2月分の発表でも、ガソリンは前年同月比で3.4%上昇、電気代は前年同月比でなんと6.9%も上昇しています。
■物価判断でみるべきはコアコアCPI
消費者物価には3つの指数があります。
ひとつは、「総合消費者物価指数」(CPI)。
次に、「総合消費者物価指数から生鮮食品を除いたもの」(通称:コアCPI)。
そして、「食料(酒類を除く)及びエネルギーを除いたもの」(通称:コアコアCPI)。
デフレかインフレかというのは、景気が回復しているのかどうか、つまり需要が供給を上回って物価が上昇してきているのか、そうではないのか、とういうことを判断しないといけませんね。
でも生鮮食品というのは景気以外に天候などの条件によって左右されやすいので、それを除いたのが「生鮮食品を除いた指数(コアCPI)」です。
以前はこの「コアCPI」が景気判断によく使われていました。
さらに最近では、値動きの激しいエネルギー価格も考慮しようということで「コアコアCPI」が判断指数として使われています。(←もともと海外ではこちらのコアコアが標準で使われていました)
この3つの指数の平成24年2月分を見ますと・・・(平成22年度=100)
・総合指数(CPI) :99.8(前月比+0.2%↑、前年同月比+0.3%↑)
・生鮮食品除く指数(コアCPI):99.5(前月比+0.2%↑、前年同月比+0.1%↑)
・エネルギー除く指数(コアコアCPI):98.5(前月比+0.2%↑、前年同月比▲0.6%↓)
総合CPIとコアCPIの動きは似ていますが、実はエネルギー価格を除いたコアコアCPIの動きはずっと下げ基調です。つまりエネルギー以外の一般的なモノの価格は依然としてデフレの傾向なのです。
今、原油などのエネルギー全般の価格が上昇していることを考えるとはっきりとデフレであると言えそうです。
■日銀はコアコアで判断して腰を据えてデフレ脱却を!
海外の原油価格が上がると国内のガソリンや電気代などのエネルギーコストが上がります。だからと言ってインフレになるといけないから金融を引き締めよう、というのは間違いですね。
海外の物価(原油やガスなど)が上がるということは海外にお金を取られるわけです。つまり海外の物価が上がることは国内の所得が減るということと同じですね。
だから国内から流出した所得を穴埋めする分だけお金をさらにつぎ込まなければいけないのです。
つまり、ガソリンのような海外エネルギーの輸入価格が上がった時には金融は逆に緩和すべきなのです。
だからインフレ判断で日銀が見るべきなのはエネルギー価格の除いたコアコアCPIです。
コアコアで国内物価を見て金融政策を行ううちにデフレが脱却できれば景気回復は達成できるはず。
総合CPIで見て本当はエネルギー価格が上がっているだけなのに物価が上がった、インフレだ、と言ってデフレが解消する前に金融緩和を止めたりするといつまでたっても景気は回復しません。
繰り返しますが、日銀は金融引き締めは好きですが、金融緩和は好きではありません。
日銀の白川総裁は今回の金融緩和の時に、「インフレ率1%到達が見通せるまでゼロ金利政策を解除しない」と言っていますが、どのCPIが、いつからいつまでで1%なのか、などはっきり明言していません。景気の本格回復を願う者として、少なくとも実際には1%よりも低いのに、「だいたい見通せた!」として引き締めに転じることのないようにしていただきたいものです。
「日銀は金融緩和に本気じゃないな!?」というような気配が見え隠れするだけで市場は反転したりしますからね。
今回は以上です。
日本がもっともっと良くなりますように。
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