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「家賃並みで買えるマンションって本当?」~マンション購入時の注意点とは?~

「家賃並みで買えるマンションって本当?」~マンション購入時の注意点とは?~

川瀬 太志

ハイアス・アンド・カンパニー取締役常務執行役員。都市銀行・大手経営コンサルティング会社・不動産事業会社取締役を経て現職に。住宅・不動産・金融の幅広い経験を元に、個人の資産形成支援事業を展開中。

当ブログ「世の中の動きの個人資産への影響を考えてみる」は、2015年4月6日から新しいURL「​http://blogs.itmedia.co.jp/hyas/」 に移動しました。引き続きご愛読ください。




こんにちは!ハイアス&カンパニーの川瀬です。

最近、低金利や充実した税制優遇などのためかマイホーム購入を検討される方が増えているようです。今回はマンションを買う時の注意点をまとめてみました。


「今の家賃並みの支払いでマンションが買えます!」といったマンション広告を目にすることがあります。
賃貸マンションは毎月家賃をずっと払っても決して自分のものにはなりません。
家賃の支払いがもったいないな、と思っている方がこういう広告を見て、「家計の負担が同じならいっそのこと買っちゃおうか!」という気になることもあるかもしれません。
ほとんどの方はお分かりだとは思いますが、当然家賃並みの支払いでマンションを買うことはできません。
新築でも中古でも、マンションを買うにあたって気を付けた方がいいことを3点あげたいと思います。


■注意点その1 『住宅ローン金利の設定は?』

最近「家賃並み支払い」という広告表現ができるようになった大きな要因は、住宅ローン金利が低いからです。「家賃並み」という広告をよく見ると、大体小さな字で「支払例」と書いてあるところがあります。そこには住宅ローンの返済例として大体こんな感じ↓↓↓の条件が書いてあります。
<35年返済、変動金利0.875%で計算しています>

つまり、特別優遇の一番低い水準のローン金利で、最長の35年返済を前提として計算しているわけです。この条件なら仮に「3000万円」の住宅ローンを組んだとしても毎月の支払額はおよそ「8万3000円」になります。
これなら確かに家賃並みに見えます。

でも、この0.875%というのは「変動金利」です。変動金利は上昇する可能性がありますね。
現実的には史上最低金利の水準である「0.875%」のようなレベルが35年間ずっと続くという前提でローンを組むことは危険極まりないですね。
金利が上がった時に返済額がどれくらい上昇するのか、ということをよく考慮しておいた方がいいですね。


■注意点その2 『売却時にローンは残らないか?』

「賃貸よりお得そうだから」という軽い感覚で、ローンを組んでマンションを買うと後々ライフスタイルが変わって引っ越そうと思った時に思わぬ事態におちいることがあります。
売却しようと思っても売りたい価格で売れずにローンの残債が残ってしまうようなケースです。

例えば、3000万円のマンションをほぼフルローンで買ったとします。
金利0.875%でローンを組んで、5年後に売却しようとします。その時のローン残債はおよそ2500万円。
その時の売却価格が2500万円を下回るようなことになると売った後にローンが残ってしまいます。こうなると売るにも売れません。
マンションは一般的に築年数が経過するにつれ結構速いスピードで価値が落ちていきます。

ですから、将来の売却価格の下落を見通して、購入時に頭金を多めに入れておくことが大事になります。
また売却しやすい(=買い手がつきやすい)マンションを買うこともポイントです。
マンションの一番のメリットは「利便性」です。ですから、例えば中心市街地の駅に近いマンションなどは買い手がつきやすいかもしれません。
間違っても、価格が安いからという理由だけで利便性の悪い郊外にあるようなマンションを、フルローンで買うといったことは止めておいた方がいいでしょうね。


■注意点その3 『毎月のランニングコストは?』

ローンの返済額だけをみれば金利が安いうちは家賃より低くなる時もあるかもしれません。
でもマンションを買って毎月支払う金額はローンの返済額だけではありません。管理費や共益費、修繕繕積立金、駐車場といったいわゆる「ランニングコスト」も考慮しておかないといけません。
「戸建は高くて買えないからマンションを買おう」という方がたまにいらっしゃいます。
でもマンションにかかるランニングコストを考えると必ずしもマンションが割安になるわけではありません。

例えば、管理費や駐車場代などで毎月3万円のランニングコストがかかるマンションだとします。
前出の条件(物件価格3000万円、金利0.875%、35年)とすると毎月のローン返済額は「8万3000円」でした。
そこに3万円のランニングコストを加えると、毎月の支払額は「11万3000円」になります。
これを管理費などがかからない戸建で考えてみます。
毎月の支払額11万3000円は金利0.875%で逆算すると、約4000万円の戸建が買えることになります。

つまりマンションと戸建では1000万円くらいの物件価格の差があっても、ランニングコストを考えると総支払額はそれほど変わらないということになります。

マンションが戸建と違うのはそれが共同生活であるということです。
共同生活ですからみんなで使う部分、例えば、エントランス、廊下、外壁、エレベーターや立体駐車場、ゴミの収集なども含めて共用部分の維持管理はマンションの入居者みんなで負担しなければなりません。
この維持管理費などのランニングコストはローン返済が終わってもそこに住み続ける限り支払は続きます。
仮に3万円のランニングコストを40年間支払うとすると総額はおよそ「1400万円」にもなります。

通常は築年数が経過して共用部分の老朽化が進むにつれて維持管理費や修繕費はかさんでいきますので、通常ランニングコストは上昇していくことを想定しておいた方がいいと言われています。
仮に3万円のランニングコストが物価上昇率並みに毎年1%ほど上昇するとして計算すると、総額は「1700万円」を超えてきます。こうなるともう戸建一軒分ほどの金額と言ってもいいですね。

これほどの金額を払うわけですから、管理費の使われ方はしっかりチェックしておくべきですね。またどうせ買うなら「安かろう、悪かろう」のマンションよりも、ガタがこない耐久性の高いマンションを買った方が後々お得になるかもしれませんね。

「安かろう、悪かろう」はダメというのは戸建でも一緒。戸建でもマンションほどではありませんが、当然維持管理費はみておかないといけません。ですから耐久性の高い長持ちする家を建てる方がいいでしょう。30年くらいで建て替えが必要になるような家は結局損しますから。


■まとめ

以上のポイントをまとめますと、
・将来的に金利が上がっても返せるような資金計画をよく考えてから買うこと。
・マンションの価値は利便性。いつでも買い手がつくような立地の良いマンションを買うこと。
・支払計画にはランニングコストも考慮すること。(管理費は上昇しやすいということも!)

よくよく考えると家賃並みでマンションが買えるなんておいしい話はないことがわかります。
むしろどうせ買うのであれば資産価値の高いマンションを買った方が後々得になることの方が多いと思います。私は個人的にはマンションを買うなら自分の年収で買えるもっともグレードの高いマンションを買うべきじゃないかなと思っています。マンションは共同生活ですから少しでも年収水準の高い人たちと一緒に住んだ方がいいという考え方です。

今、老朽化していても修繕や建て替えが進まないマンションが社会問題化しています。
修繕ができないのは修繕費用がないからです。入居者の皆さんが修繕一時金の負担ができない所得水準の方が多い場合にそういうケースになります。
くれぐれも安易に安いマンションを買って後々後悔なさらないようにお気を付けください。



今回は以上です。

もっと日本が良くなりますように。



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