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「銀行の好業績を市場が評価しない理由とは?」~銀行は本業で稼ぎましょう!~

「銀行の好業績を市場が評価しない理由とは?」~銀行は本業で稼ぎましょう!~

川瀬 太志

ハイアス・アンド・カンパニー取締役常務執行役員。都市銀行・大手経営コンサルティング会社・不動産事業会社取締役を経て現職に。住宅・不動産・金融の幅広い経験を元に、個人の資産形成支援事業を展開中。

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こんにちは!ハイアス&カンパニーの川瀬です。
今回は銀行決算についてです。
一見業績は良いようですが、その実は・・・・。


■銀行の業績は好調!でも評価は・・・

「経済の血液」とも言えるお金の流れを握る銀行。
銀行の動向を見れば経済の先行きも見えてきます。
さて、今年度3月期の決算見通しによると銀行の業績は好調だったようですね。

<5大銀行、前期最終益2.3兆円 前年対比30%増益>(2012年5月8日付  日本経済新聞)
『5大銀行グループ(みずほ、三菱UFJ、三井住友、りそな、三井住友トラスト)の2012年3月期の連結最終損益は合計で2兆3000億円程度の黒字となったもようだ。5大銀の最終利益が2兆円を超えたのは07年3月期以来5年ぶり。1兆7627億円だった前期比で30%増益となる。』

普通、利益が予想より多く出れば株価は上がります。
でも逆に上記5大銀行のこの1か月間の株価は軒並み12~16%程度下落しました。
なぜでしょう?
日経平均株価全体が欧州不安の再燃などの外部要因もあって下がってはいますが、それでもこれだけの好業績に対してこれほど下落するのはちょっとおかしいですよね。
これは、市場が銀行の決算を評価していない、またこの先の銀行の収益力に対して疑問符をつけているということだと考えられますね。


■銀行が増益になった理由は?

では今回の銀行が増益になった理由を見てみましょう。
銀行が増益となったのは、『中小企業対策の政策効果で与信費用が減ったことや、長期金利の低下で多額の国債売買益を計上したのが主な要因』(日本経済新聞)だそうです。
まず、(1)不良な貸出金を棚上げにする「金融円滑化法」などによって引当金等の費用が減ったこと。
そして、(2)貸出に回らない余剰資金で運用している国債の売買益が業績を押し上げたこと。
ということです。国債売買益は、3メガバンク合計でなんと5700億円も計上しました。

金融円滑化法は来年3月で終わります。ですからこれから先は今隠れている不良債権予備軍や要注意債権がどんどん表に出てくるでしょう。
また国債売買益は一過性のものです。むしろ前期に益出しをした、ということはもし今後金利が少しでも上昇(=価格は下落)すれば逆に大きな損失を抱えるリスクもあります。
そして銀行の本業ともいえる貸し出しによる資金利益は逆に3%ほど減少しています。
これでは確かに銀行の前期の業績が評価されないのも仕方がないですね。


■銀行は今年が正念場か

大手銀行の本業は貸出金です。
預かった預金を、事業資金を必要している企業などに融資をして、その預金と貸出金の利ざやで収益を稼ぐのが事業の基盤です。
銀行の国内貸出残高はずっと減少していて、貸出金から得られる資金利益は2年連続の減少です。
そして貸出金利回りから預金利回りを差し引いた「総資金利ざや率」は平均でなんとたったの「0.19%」(全国銀行協会 23年度中間期時点)。
1億円融資しても実質の儲けはたったの20万円弱程度ということです。
これでは銀行もやっていけませんね。
全国銀行協会によると、かつては90%ほどあった「預貸率」(貸出金÷預金 預金が貸出に回っている割合)は全銀行平均で70%を切っています。理由は企業の資金需要が盛り上がっていないからですし、銀行もリスクを取って融資を積極的に行っていないからですね。
そしてその余った資金でせっせと国債を買っています。
その国債の金利がたまたま下がった(価格は上昇)から、たまたま運用利益が出たというだけですね。

大手銀行は今年正念場でしょう。
頼みの国債はすでに益出し済みです。融資先はと言えば、先行きがまったく見えない東電をはじめとした電力業界、巨額の赤字に苦しむ家電業界など、大手銀行の融資先には今後問題となりそうな企業がいっぱいです。中小企業向け融資も金融円滑化法の期限切れが目前となり減速は避けられないでしょう。(もともと既存の中小企業には今あまり健全な資金需要はありませんし)

日本経済全体がぱっとしない今、銀行は本腰を入れて新産業育成に力をいれていただきたいものだと思います。国債でちまちま稼ぐのではなくて本来の役割である資金を市場に回す機能をしっかり果たしてもらいたいものです。

今回は以上です。
日本がもっともっと良くなりますように。







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