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「住宅の駆け込み購入 消費増税の直前はダメ!?」~すでに上昇している○○費~ 

「住宅の駆け込み購入 消費増税の直前はダメ!?」~すでに上昇している○○費~ 

川瀬 太志

ハイアス・アンド・カンパニー取締役常務執行役員。都市銀行・大手経営コンサルティング会社・不動産事業会社取締役を経て現職に。住宅・不動産・金融の幅広い経験を元に、個人の資産形成支援事業を展開中。

当ブログ「世の中の動きの個人資産への影響を考えてみる」は、2015年4月6日から新しいURL「​http://blogs.itmedia.co.jp/hyas/」 に移動しました。引き続きご愛読ください。


こんにちは!ハイアス&カンパニーの川瀬です。
今回は消費税増税にからむ住宅購入のお話です。


■住宅の駆け込み購入始まる!?

住宅購入の市場が活発になってきているようです。

<消費増税にらみ、住宅駆け込み購入じわり ~見学者急増 復興と重複、工費上昇も~>
(日本経済新聞 平成24年7月16日付朝刊)
『消費増税をにらみ住宅の駆け込み購入がじわりと出始めたようだ。過去最低水準に下がった住宅ローン金利も追い風となり、モデルルームの来場者は急増。ただ、建築ラッシュが東日本大震災の復興と重なれば建設資材や人手不足がコスト増につながる懸念も浮上してきた。(中略)
土地総合研究所が150の不動産会社にモデルルーム来場者数を聞いたところ「増えた」との回答から「減った」を差し引いた比率は4月に51.7%。調査を始めた2001年以降で最高になった。野村不動産の分譲マンション「プラウド」には5月の大型連休中に首都圏の来場者が前年より6割以上増えた。』

住宅を購入すると、建物部分に消費税が課税されます(土地には消費税はかかりません)。一戸建ての建物が仮に2,000万円とすると消費税5%なら100万円。それが、消費税が8%になると160万円、10%になると200万円になります。
これは馬鹿にならない金額ですよね。

私はほぼ毎週、全国のどこかで住宅購入を検討なさっている人たちに向けた勉強会を行っていますが確かに購入時期についてのお客様の意識の変化を肌で感じています。勉強会のアンケートで「購入時期」については、以前ですと「時期未定」が一番多くて、その次に「5年後以降」などという回答が多かったのですが、最近では「1年以内」とか「消費税が増税される前に!」という人がとても増えています。
ずっと家を買いたいな~と考えていた人にとって、消費税増税というのが一歩前に踏み出すきっかけになっているのでしょうね。


■「消費税が上がるまでに買えばいいや」はダメ!工事費はすでに上昇している

消費税増税前に住宅を購入したいなら契約するタイミングは注意すべきです。
5%→8%に消費税が上がると予定されているのは2014年4月です。経過措置として半年前の2013年9月末までに請負契約を結んだ住宅に対しては、引き渡しが2014年4月以降にずれ込んだとしても現行の5%の旧税率が適用される模様です。ですのでタイミングのひとつの目安は2013年9月末までの契約ということになりますから今からですと約1年間の検討期間があるわけです。

もうひとつ気を付けたいのは、消費税が上がるとともに住宅の着工が増えると建築価格そのものも上がる可能性もあるということです。
すでに住宅の着工数は増加傾向にあります。2012年6月度の着工統計は前年同月比9.3%増加でした。これで4か月連続の増加です。復興需要のある東北だけでなく、近畿圏、中国圏、九州圏もふた桁前後の増加が続いています。そして、これから来年の秋頃に向けて、駆け込み購入で着工はますます増えていくことが予想されます。

住宅の価格はざっくりいうと『(部材費+工賃+経費)×税金』です。
着工が増えて需要が供給を上回ると部材も工賃も値段が上がることになります。東北ではすでに工事の人手不足が常態化しており工事費の上昇が起きています。

ちなみに建設工事費の年度統計で見てみますと、2005度の工事費水準を100とした場合、2010年度が104.6。2011年度が105.4です。(国土交通省建設工事費デフレータ2005年基準より)
つまり消費税が3~5%上がる前に、すでに工事費はこの5~6年で4~5%くらい着々と上がってきているのです。実質的には消費税増税前に住宅価格そのものもさらに上がる可能性が高いと予想されます。

「そろそろ・・・」と思っている人は、今は金利も最低水準ですし、早めの方がチャンスなのは間違いないようですね。


■業界が恐れている2016年問題

一方、供給サイドである住宅業界が恐れているのは消費増税駆け込み需要後の反動です。
前回消費税が増税されたのが15年前の1997年。
3%→5%という2%の増税だったのですが、大変な数の住宅の駆け込み購入がありました。増税は1997年4月からだったのですが、住宅着工戸数は増税の1年半前の1996年の年初あたりから増え始めて、1996年10月には前年同月比で2割も増えました。
最終的に、消費税が上がる前年の1996年度の住宅着工戸数は164万戸、前年対比で9.8%の増加になりました。(ちなみにこの96年度の164万戸が近年の住宅着工戸数のピークです。2011年度の着工戸数は83万戸ですから15年間で半減したわけですね。)
そして翌年1997年度は反動で134万戸(前年対比▲17.7%)まで落ち込みます。
今回は2014年度と2015年度の2段階の増税になりそうですが、2012年度に83万戸だったのが、今年の2013年度に90万戸くらいまで増えたとしても、その後2016年度にはどれくらいまで落ち込むのでしょう?
60万戸くらいになるのでは、と予想する向きもあります。
住宅会社経営者の方とお話ししていても「2015年度以降はどうしようか・・・」という話が出ない時がないくらいです。
住宅会社も何かの手を打つなら早めの方がいいでしょうね。


今回は以上です。
次回、もっと日本が良くなっていますように。



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