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「企業の倒産が激減!でも今後は・・・?」~今、中小企業経営者がすべきこととは?~

「企業の倒産が激減!でも今後は・・・?」~今、中小企業経営者がすべきこととは?~

川瀬 太志

ハイアス・アンド・カンパニー取締役常務執行役員。都市銀行・大手経営コンサルティング会社・不動産事業会社取締役を経て現職に。住宅・不動産・金融の幅広い経験を元に、個人の資産形成支援事業を展開中。

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こんにちは!ハイアス&カンパニーの川瀬です。
今回は企業の倒産についてです。
起業の倒産が減っているようです。景気がいいんでしょうか?


■企業の倒産が激減!

企業の倒産がこの20年間で最も少なかったそうです。

<企業倒産件数 上半期、20年間で最少> (日本経済新聞2012年7月10日付)
『東京商工リサーチが9日発表した2012年上半期(1~6月)の企業倒産件数(負債額1000万円以上)は、前年同期比3.2%減の6311件だった。上半期としては3年連続の減少で、過去20年間で最も少なかった。』

「景気がこの20年間でもかなり良い!」などという実感はあまりないのではないかと思います。それでも企業の倒産件数が減少しているのは、「中小企業金融円滑化法などの政府の資金繰り支援策や、東日本大震災からの復興需要が寄与」(同記事抜粋)しているからです。
特にずっと構造不況業種であった建設業などの倒産が減少しているようです。
倒産がないのは良いことですから、このままいけばいいですね。


■でも先行き見通しは?

でも一方で、多くの企業は先行きに不安を感じていて、取引先が倒産する場合に備えているようです。

<中小倒産防止共済の新規加入、15年ぶり高水準 昨年度> (日本経済新聞2012年7月30日付)
『中小企業の連鎖倒産を防ぐための「中小企業倒産防止共済」の利用が急増している。2011年度の新規加入件数は約3万3000件で15年ぶりの高水準となった。』

「中小企業倒産防止共済」とは、取引先の倒産に備える共済です。掛け金を積み立てておいて、万が一、取引先が倒産してその会社への売掛金や受取手形などが回収できなくなったときには掛け金の10倍の貸し付けを無担保かつ無利子で受けられる仕組みです。
私もかけだしの銀行員の頃、融資先にはよくこの共済に入ってもらってしていました。銀行にとっては取引先の連鎖倒産の防止になりますからね。
この共済が、昨年、貸付限度額の引き上げ(3200万円→8000万円)や返済期間の延長(5年→7年)などの制度拡充がありまして、それも利用増加の要因となっているようです。


■今後、政府の支援は無くなっていく・・・

上記2つの新聞記事は何を意味しているのでしょう?
政府としては、リーマンショックなどの一時的な不況を乗り切るために金融円滑化法などの救済政策を行ったおかげで一時、倒産は減らすことができました。しかしこれら企業救済政策はもう終わります。
金融機関に、経営が悪化した企業への融資条件の緩和を促した「金融円滑化法」は、来年の3月に終了する予定です。その後には倒産が増えるだろうから経営者はそれに備えておくように、ということなのでしょう。だから倒産防止共済の制度拡充などを行っているのだと思います。
また同じくリーマンショックの時に実施した信用保証協会の100%保証も緩やかに終わっていきそうです。

<保証中小向け金融、100%保証の対象業種を縮小 危機対応にメド>
(日本経済新聞 2012年6月5日付)
『中小企業庁は信用保証協会による中小企業向け保証制度を縮小する検討に入った。リーマンショックを受けた政策として2008年度に制度を創設し、東日本大震災後も保証を続けていたが、危機対応にメドがついたと判断、今後見直しを進める。』

「信用保証協会」とは融資を受けにくい企業の借入を保証して融資を受けやすくしてくれる公的機関です。通常は借入額の80%までを保証しています(残り20%は金融機関が負担)。しかしリーマンショックを受けて2008年度には緊急危機対応としてすべての業種で100%保証を実施してきました。

保証協会の緊急融資で資金を確保して、リーマンショックから震災危機までを乗り切った企業も少なくなかったと思います。
ただ一方で信用保証協会が保証した融資で返済不能になっている融資は2008年から20011年で約4兆円にも上ります。そのいわゆる「焦げ付き融資」のおよそ7割がこの「100%保証」の融資です。
保証協会は公的機関ですからその運営資金の元々の出どころは税金です。いつまでも危機的状況から抜け出すことができない企業にこれ以上税金を使って救済し続けることはしないというのが政府の判断なのだと思います。


■「倒産か、存続か」は経営者の決断次第

私は銀行とコンサルタント会社で働いてきましたので、数多くの倒産に立ち会ってきました。
倒産はつらいものです。
従業員は働き口を失いますし、取引先は売上収入を失います。そして経営者は信用を失い、時には人としての誇りや尊厳までを失う場合もあります。

企業の先行きには、「成長」か「停滞」しかありません。
成長はいいですが、停滞の場合には経営者は何らかの手を打たねばなりません。
特に停滞が一時的なものでなく、市場の縮小などの経済構造的なものに起因するものだとすると、経営者は縮小を余儀なくされている既存事業に代えて新規事業に取り組んだり業態を転換したりして新たな成長を目指すのか、もしくは廃業するかの決断を迫られます。

既存事業が構造的な不況下にある場合には、単なる「組織の縮小」(コストカット)という決断はあまり良い結果をもたらしません。なぜなら多くの場合、組織の縮小よりも、既存事業の縮小スピードの方が速いからです。

でも経営者は「新規事業や新商品開発、業態転換などはリスクがある」として、「組織の縮小」だけを優先して実施する傾向が強いように思います。

それは銀行にも責任があります。
なぜなら銀行は再建計画としては、コストカットしか信用しないからです。
でも構造的な苦境にある企業にとって大事なのは明らかにコストカットではなく新規事業や業態転換にチャレンジして成長を目指すことです。
新規事業や業態転換は不確実性が高いとして民間の銀行では判断できない部分があれば、そこは公的に補償する、というのが金融円滑化法であり、保証協会の100%保証だったわけです。


■モラトリアムの期間にすべきことは何か?

金融円滑化法は、通称「モラトリアム法案」と呼ばれています。
経済危機に対して企業の何にモラトリアム(猶予)を与えたかというと、経営体質の改善にかかる時間に対して、です。
今までの事業が時代のニーズに合わない場合には思い切って業態転換や新商品開発、新規事業の立ち上げなどにチャレンジする時間に対して、です。
政府も社会構造的に落ち込みが明らかなのに、新たに手を打つこともせずに支援だけを頼っている企業を公的資金を使って延命させるようなことはもうしません。残念ながら、生き残りの指針が見えないのなら、経営者は倒産に至る前に静かに廃業を決断するべきです。

政府の予想に反して来年3月に金融円滑化法が打ち切られても倒産が増えないことを期待したいですね。経営者の皆さん、頑張りましょう!

今回は以上です。
次回、もっと日本が良くなっていますように。




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