誠ブログは2015年4月6日に「オルタナティブ・ブログ」になりました。
各ブロガーの新規エントリーは「オルタナティブ・ブログ」でご覧ください。
「日本は中福祉・中負担の国?」~選挙争点の見極めポイントとは?~
»2012年12月11日
世の中の動きの個人資産への影響を考えてみる
「日本は中福祉・中負担の国?」~選挙争点の見極めポイントとは?~
ハイアス・アンド・カンパニー取締役常務執行役員。都市銀行・大手経営コンサルティング会社・不動産事業会社取締役を経て現職に。住宅・不動産・金融の幅広い経験を元に、個人の資産形成支援事業を展開中。
当ブログ「世の中の動きの個人資産への影響を考えてみる」は、2015年4月6日から新しいURL「http://blogs.itmedia.co.jp/hyas/」 に移動しました。引き続きご愛読ください。
こんにちは!ハイアス&カンパニーの川瀬です。
もうすぐ選挙ですね。
今回の選挙のテーマのひとつである消費税。
今回は日本が高齢化社会を迎えるにあたり税収と社会保障をどうするのか?という話です。
■「増税なし!保障充実!」←ホントにできる?
日本の財政再建はもうまったなしでこれ以上の先送りはできません。
そもそも財政赤字になるのは、歳入よりも歳出が大きいからですね。(「歳入<歳出」)
だから財政再建するには、歳入を増やすか、歳出を減らす、もしくはその両方をやる、しかありません。
高齢化の進展→生産年齢人口の減少→国力低下→GDP減少→税収減少→「歳入の減少」
そして、
高齢化の進展→年金・医療費の増大→「歳出の増加」
・・・というように、日本は高齢化を起点として社会構造が変化したことで「歳入<歳出」が常態化しています。社会構造が変わったのだから税制も社会福祉も根本の体系から考え直す必要があるわけです。
結論を先に言えば、私は選挙で国政を託す政治家を見極めるポイントは、「歳出削減をはっきりと言っているかどうか」ではないかと思っています。歳出削減といっても、議員定数削減みたいな「まずは身を切れ!」といった精神論に近い財政インパクトの小さいものではなくて、年金支給額や社会福祉や生活保護などの削減や医療費の国民負担の増加など根本的な政策の話です。
でも、こういった国民に対して負担を増やすようなことはウケが悪いから、どの政党も選挙の時にはまず言わないものです。でも、日本の財政がコトここに至ってはこういう現実をはっきりと言える政治家こそが必要だと思います。
「増税はしない!そして社会保障もきっちりやる!」
そんな矛盾した話はないでしょ、ということはもう誰でもわかっているわけですからね。
■「日本は中負担・中福祉の国」ってホント?
昔、麻生総理はこう言いました。
「日本は北欧のような『高福祉・高負担』ではなく、アメリカのような『低福祉・低負担』でもない。『中福祉・中負担』を目指す」と。
日本の歳入と歳出のバランスを国際的にみてみましょう。
実態はどうなんでしょうか?
以下はOECDの統計で各国の負担と受益のバランスです。
(OECD統計:GDP比の受益と負担のバランス:2000年~2008年の平均)
・OECD平均 :総収入 42.6% 総支出 43.1% 差-0.5%(支出超過)
・北欧平均 :総収入 55.4% 総支出 49.9% 差+5.5%(収入超過)
・EU平均 :総収入 41.9% 総支出 44.1% 差-2.2%(支出超過)
・アメリカ :総収入 33.2% 総支出 36.1% 差-2.9%(支出超過)
・日本 :総収入 32.3% 総支出 37.7% 差-5.4%(支出超過)
「総収入」とは税収などの歳入。国民にとっては負担です。
「総支出」が社会保障などの歳出。国民にとっては受益です。
「高負担・高福祉」の北欧では国民負担はGDPの約55%。そのかわり受益もGDPの約50%です。
支出より収入が約5%も多いですから財政黒字です。
国民にとっては高負担な政府ですね。
一方、「低負担・低福祉」の代表格であるアメリカは、国民負担は約33%に対して受益は36%。
負担は低いかわりに福祉も低い。そして約3%の支出超過ですから財政は赤字ですね。
さて、日本です。
政府支出はGDPの37.7%と北欧よりは低いですが、アメリカよりは多くなっています。確かにこれだと「中福祉」ですね。
ところが、国民負担は32.3%。これは「低負担低福祉」を標ぼうするアメリカよりも低い負担です。
つまり、日本は「中負担・中福祉」ではなく「低負担・中福祉」な国なのです。
急速に進む少子高齢化にともなって社会保障支出が急増しているとはいえ、負担と受益のバランスが悪すぎます。支出超過が-5.4%ですから超財政赤字です。これではすごい勢いで政府の借金が増えるのも無理はありません。
これはOECD統計です。世界各国はこういう数字を見ています。
世界から見れば、日本はまだまだ国民負担が甘いと見られています。日本は税金という形で直接的に国民に負担をさせているのではなく、国民からの借金という形で間接的に国民に負担を強いているわけですが、もっと国民負担をさせる余地があると見られているのでしょう。だから国債発行残高がGDP比1.8倍くらいあっても国債が暴落しないのです。
とはいっても、同時に「もうそろそろ限界なのでは・・・」と思われているでしょうけどね。
■まずは景気回復、そして体質改善
財政状況から見れば、本当は「消費税を増税するのか、しないのか」ではなく、今の負担は低すぎるから増やさざるを得ないというコンセンサスの上で、消費税なのか所得税なのか、課税ベースをどう拡大するのかも含めて税のあり方を議論するべきです。
まさに国の体質改善が必要な時ですからね。
また、社会構造が変化しているのですから、「景気回復をすれば増税は不要」ということではありませんが、それでも景気拡大は絶対に必要です。
景気が良くなれば、企業業績が良くなって、雇用が回復します。給与収入も増えて税収が増えます。将来の収入見通しが明るくなれば将来不安も軽減されて老後の不安も軽減されます。年金や医療の制度改革に伴う負担増なども受け入れやすくなります。GDPが増加して国力が高まれば、安全保障や外交問題も好転することでしょう。
経済成長なしに分配を変えてもじり貧です。経済を拡大させることは最優先で取り組むべき政策であることは疑う余地がありませんね。
今回は以上です。
もっと日本が良くなりますように。
-------------------------
今回の記事はいかがでしたか?
「ハッピーリッチ・アカデミー」の「カワセ君のコラム」では、過去のバックナンバーをご覧頂けます。
また、ハッピーリッチ・アカデミー会員に登録して頂くと隔週でメールマガジンにてお届けします。