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「消費税還元セールはダメ?販促を国が規制することのおかしさ」~問題は日本の商慣習と消費税アレルギー?~

「消費税還元セールはダメ?販促を国が規制することのおかしさ」~問題は日本の商慣習と消費税アレルギー?~

川瀬 太志

ハイアス・アンド・カンパニー取締役常務執行役員。都市銀行・大手経営コンサルティング会社・不動産事業会社取締役を経て現職に。住宅・不動産・金融の幅広い経験を元に、個人の資産形成支援事業を展開中。

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こんにちは!ハイアス&カンパニーの川瀬です。

4月になりました。いろんなことが変わりますね。
1年後の4月にはいよいよ消費税も上がりそうです。



■「消費税還元セール禁止!」ってなんかヘン?

1年後の消費増税に向けて政府は環境整備を進めています。
でもこれはどうなんでしょうね。

『消費税の価格転嫁を推進 特措法案を閣議決定 「還元セール」を禁止』
(2013年3月22日 日本経済新聞)
<政府は、2014年4月の消費増税に合わせ、商品やサービスの増税分の価格転嫁を円滑にする特別措置法案を閣議決定した。大手スーパーなどによる「消費税還元セール」を禁止する。仕入れ側が納入業者に値下げを迫り増税分の上乗せを拒んだ場合は公正取引委員会が是正を勧告する。転嫁拒否の実態を調べる調査官を各省庁に置き、監視体制を強化する。>
<小売現場での価格表示は、税額を含めた価格表示を義務付ける「総額表示義務」を時限措置として緩める。「100円+税」のように、本体価格と税を分けて示す外税方式の価格表示を認める。>

「当店は消費税を上げません」とか「消費増税分を値引きします」など、お客様から消費税はもらわないというようなイメージを打ち出す「消費税還元セール」が禁止されるようです。
「消費税還元セール」はダメだけど、「春のフレッシュセール」はよくて、「全商品8%引き」は今後の検討だそうです。ちょっとよくわからないですね。
当然、スーパー業界などは一斉に反発です。
<政府・自民党が「消費増税還元セール」を禁止する方針を打ち出したことに対し、小売業界では反発が広がっている。ある大手スーパーは「消費者の重税感を減らすことにもつながる『還元』をセールでうたえないのはいかがなものか」と不満を隠さない。>(同記事)



■そもそも消費税とは?

そもそも消費税がどうやって課税されるのかについておさらいしたいと思います。
消費税というと、私たちはなんとなくひとつひとつの商品に5%かかっていて、レジで払うときに課税されているようなイメージがありませんか?
経理をやっている方ならわかると思いますが、実際はそうではないですね。
おさらいですが、消費税は個々の商品やサービスに課税しているわけではなく、そのお店や会社の一定期間の売上高に消費税率をかけたものから、仕入高に消費税率をかけたものを控除するという税制ですね。

計算式でみると、
消費税額=売上×消費税率-仕入高×消費税率
=(売上高-仕入高)×消費税率

一定期間の売上高から仕入高を引いた額、つまり付加価値に対して課税されます。
「消費税」というから、消費した時点であたかもレジで課税されているかのようなイメージがありますがそうではありません。同じ制度をとっている欧米諸国では一般的に「付加価値税」と呼ばれています。

消費税が上がると企業にとっては仕入額が上がることになります。企業にとっては、光熱費とか原材料費とか賃借料などと同じ仕入コストのひとつです。仕入コストというと、電気代は10%くらい上がりそうだし、円安で小麦などの輸入原料もちょくちょく上がっています。でもそういう仕入にかかるコストが上がった時にその分を販売価格に転嫁するのか、それとも企業で吸収するかはそれぞれの企業の戦略やコスト構造次第です。
商品でも、利益率が低い商品は価格を上げるけど、利益率の高いものは吸収できるから値上げしないということも当然あります。

小麦の原料費が上がればパンは値上がりするし、タバコ税が上がればタバコ代は上がります。でも消費税は「価格転嫁しにくい」というムードがあるのは確かです。
だからといって本来、市場経済で自由な経済活動を行っている各企業の価格設定や販売促進にまで政府の規制が入るというのは、ちょっと国をあげて消費税にナーバスになりすぎなのでは?とも感じます。

また、消費税だけに使われる「100円+税」といったいわゆる外税方式も本来はおかしな表記です。
お店側は消費税を上げると「増税分以上に定価を上げたのではないか?」と消費者から疑われるのを嫌がって、「便乗値上げはしていません!」ということを示すために「外税方式」にしたがります。

でもこの外税方式は消費者にとってはいくら払えばいいのかわかりにくい表記です。せっかく2004年の法改正で総額表示方式(内税方式)に統一されたのにまたわかりにくい外税方式の復活です。
タバコやお酒、ガソリンなども価格の半分くらいは税金ですがいちいち内訳も表記しないし、外税表記でもありません。



■問題は価格転嫁ができない取引構造

ただ政府が法律まで作ってナーバスになるのもわからないでもなりません。
政府の狙いは立場の弱い中小企業などの納入業者が仕入れ側の企業に商品を納める際、価格の引き下げを要求されて、消費増税分を価格に転嫁できないといった事態を防ぎ、消費税をスムーズに増税することです。
価格を上げない、というと消費者はメリットを感じますから「消費税還元セール」をやるスーパーは売上を伸ばすかもしれません。実際、前回増税時の1997年には大手スーパーがこれで成功しました。

その際に価格転嫁しなかった消費増税分を納入業者である中小企業に負担をさせるのは問題です。商流全体での仕入原価は消費増税分だけ確実に上がっています。商流のどこかで確実に負担が増えているのに価格転嫁しなかったら、業界全体の利益は減ることになります。
利益を減らしながらの価格競争は体力勝負になります。

その負担を担うことが多い中小企業が利益の減少をカバーするために人件費の削減や人員整理をして、失業が増える、もしくは結果的に倒産が増えたりするような事態にでもなれば当然景気への悪影響が出ます。景気が良くなっていくことはありません。

つまり、原価が上がるならそれを価格転嫁するなりして適切な利益を確保しないと最終的には自分たちの首を絞めることになります。大手企業が下請に負担を押し付けるような関係は、健全な経済取引の関係ではありません。下請に不当な負担を強いることは下請法でも禁じられています。だから、公正取引委員会が常に監視をしているわけです。

負担の押し付けなど利益を減らしての価格勝負は、日本経済のためにはなりません。
それとは別の話で、商流システムや物流の近代化などによる原価構造の合理化で原価を下げた結果として原材料や税負担などのアップを吸収するのは美しい企業努力です。

だから本来は、消費税がアップしてもその分が吸収できる企業は価格を上げなくてもいいかもしれません。そもそも価格設定などは自由なものだし、商品をどう売るかも自由なものですから、すべての商品を一律に上げる必要もないし、4月1日に一斉に上げる必要も本当はないんじゃないかなとも思います。

スーパーの消費税還元セールが「下請イジメの上に行われる」という前提に立っているから法規制されるわけですが、それはちょっと情けない話です。これは消費税の問題というより日本の経済構造の課題です。ここの部分については「付加価値税」が頻繁に変わっても右往左往しない欧州諸国のような成熟さがほしいものです。



今回は以上です。

日本がもっと良くなりますように。



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