誠ブログは2015年4月6日に「オルタナティブ・ブログ」になりました。
各ブロガーの新規エントリーは「オルタナティブ・ブログ」でご覧ください。

掻けば掻くほど、掻きたくなる その1

掻けば掻くほど、掻きたくなる その1

樋口 健夫

アイデアマラソン研究所所長 ノートを活用したアイデアマラソン発想法考案者であり、電気通信大学講師。現役時代は三井物産の商社マン。 企業の創造性トレーニングでは、ジャパネットたかたの全社員運動、アサヒビールでの研修などを続けている。独創性を命と考えている。

当ブログ「読むBizワクチン ~一読すれば身に付く体験、防げる危険~」は、2015年4月6日から新しいURL「​http://blogs.itmedia.co.jp/idea-marathon/」 に移動しました。引き続きご愛読ください。


掻けば掻くほど、掻きたくなる その1

 

 国民の大半が、「習慣性指掻き症」に罹ってしまった。

 

 スマホの普及はここまで来たか。先日の空いていた電車では、私以外の全員が指掻きをしていた。私も掻きたくなったが、正気を保つために、掻かなかった。

 

 私もボタン式の携帯と大きなサイズのタブレットのドコモ・メディアスを持っているが、これはメールを見るのがほとんど。メールの回答も、急ぎでなければ、急げば効果があるということでなければ、回答は研究所に戻ってから出す。わざわざ使いづらいタブレットのつるつるキーボードガラスでポツポツ入力するのは、苦しいし、時間の無駄だ。しかし、大至急の場合は、それでも回答をタブレットで入れるし、つなぎは大切だ。

 

 電車でも、プラットフォームでも、歩きながらでも、どこでもスマホを指掻きしている。これを英語ではSpaced outと呼ぶ。囚われの身なのだ。もう没我の状態、幽体離脱(OBEOut-of-Body Experience)に見える。もちろん、誰にも迷惑を掛けているのではない。車内であなた以外全員がやってるのを見渡すと、お寺でお坊さんが経典を黙読したり、戒名を板に書いているような一種の霊気を感じることができる。

 

 すき間時間があれば、ついついスマホを見てしまうのだろう。その「ついつい」が、ずっと続いて、一日がついつい終わってしまう。まったくすき間の無い生活をしている人たち。これは完全に異常な世界だ。横に小さな子供がいても、恋人がいても、指掻きは止まらない。

 

 すき間をスマホで食われると、本を読む時間がどんどんなくなる。それ以上に、掻きつづけていると書く時間はまったくなくなる。考える時間もないかもしれない。たぶん、家ではトイレにも、風呂でも指掻きをしているのだろう。

 

 この指掻きをしている向こうの世界、未来の世界はどうなるのだろう。これからずっと指掻きをする人生を過ごすのだろうか?ああ怖い。