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スマホで失うもの  その4  乱れる

スマホで失うもの  その4  乱れる

樋口 健夫

アイデアマラソン研究所所長 ノートを活用したアイデアマラソン発想法考案者であり、電気通信大学講師。現役時代は三井物産の商社マン。 企業の創造性トレーニングでは、ジャパネットたかたの全社員運動、アサヒビールでの研修などを続けている。独創性を命と考えている。

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スマホで失うもの  その4  乱れる

 京都に市電があったころ、私は受験生だった。私は市電が大好きだった。京都の市電は左右に実によく揺れた。ローラースケートに乗っているような感じで揺れたのだ。私は市電をローラースケートのように思って、市電では座らないで、仁王立ちして、揺れに乗って、体を動かしてスケートを楽しんでいた。


 京都の市電がなかったら、私はきっと志望の大学に入学していなかっただろうと思う。受験の暗記の専用勉強場は、市電だったからだ。
 高校までの市電の定期を持っていたので、私は朝、毎日1時間早く出て、暗記すべきものを京都の市電で2回か3回余分に往復して済ませた。もちろん学校への往復の市電は当然、勉強に充当した。
 英語の豆単(小さな英語辞書)の丸暗記。全部覚えた。古語の辞書、日本史年表、地理の必要データ全部。さすがに数学や国語は机上で勉強した。
 電車に乗っていると、背景が変わるのが、すごく気分転換になって良かった。よく覚えられた。
 その代わりに、私は乱視をもらった。本当に阿呆だった。あんなに揺れる電車での暗記作業は、視力にとっては最悪だと、知るべきだった。
 私は揺れる市電の定期しか持たなかったから、仕方がなかったのかもしれない。それからずっと乱視のめがねをつけて50年になる。

 数十年前に、携帯式のゲーム機が出た時、「これは視力に最悪だ」とすぐに思った。私の子供たちにも持たせなかった。小さな子供が携帯式のゲーム機を持っていて、車内で集中しながら遊んでいるのを見ると、悲しくなる。子供たちの望むがままに、携帯のゲーム機を買い与える親たち!


 携帯のゲーム機と子供たちの視力低下、乱視の増加は、多分相関関係を証明できるだろうと思われる。
 世界中での子供たち、いや青少年に対しての視力の問題は、これはもう大変な悪影響となっているに違いない。
 自分で自分の視力を乱した私だからこそ分かるが、あんなに揺れる交通で細かい辞書を読んだことの愚行と同じことが、子供たちのゲーム機、そのゲーム機の画面が動画で、素早く、より素早く動くことは、目にはひどい仕打ちだ。

 モバゲーは、もっと小さな画面となった。さらにどこぞの3Dのゲーム機は、目を3Dで見るためのレンズ部の筋肉を引っ張るさらに強烈な視的ストレスを与えて、最悪だと思っている。
 これが現在は、スマホになった。電車でも7割8割の人たちが画面を掻いている。歩きながらでも、食べながらでもスマホをひっ掻き続けることで、視力の破壊が続くのだろう。利用者は全員乱視をプレゼントされることになるだろう。

 機器メーカーはどのように責任をとるつもりだろうか?音楽の知的所有権にあれほど敏感で、厳格すぎる適用をしていた某社。音楽愛好家のことを考えなかったために、一気にアップルに負けた日本の某社も、ゲームでは強気だ。子供たちの視力低下や乱視製造、乱視乱造にどのような考えを持っているのだろうか?

 ゲームにはめるように誘い込んでいて、「十分に休みながら遊んでください」で十分なのだろうか。私もスマホは(大画面だが)持っているが、メールをみることが主である。ゲームなんか絶対に遊ばない。本当にやばい。