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音楽体験 その6 船上の追っかけ

音楽体験 その6 船上の追っかけ

樋口 健夫

アイデアマラソン研究所所長 ノートを活用したアイデアマラソン発想法考案者であり、電気通信大学講師。現役時代は三井物産の商社マン。 企業の創造性トレーニングでは、ジャパネットたかたの全社員運動、アサヒビールでの研修などを続けている。独創性を命と考えている。

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音楽体験 その6 船上の追っかけ

 横浜からホノルルまでの巨大なクルーズ船に乗った時、初日から、ヨメサンは船内のプログラム表を見て、朝から夜中までの参加行事を決めていた。
 私はゆっくりしたかった。日頃仕事でがたがたしている。クルーズの間くらいゆっくりと考える時間を持ちたいと思った。朝食の後、ヨメサンはどこかに出かけ、私は一人で本とノートを持って、どこかで座っていようと思い、船室を出て、中央階段から上部レベルに歩いて行った。
 階段の踊り場で、四重奏が演奏をしていた。女性1人と男性3名で、曲名は覚えていなかったし、分からなかった。楽譜も何もなく、4名は淡々と演奏していた。ごく自然だった。


 ただ、誰も聞いていなかった。私は踊り場の昇りの階段の端にチョコンと座って演奏を聴き始めた。曲が終わると拍手をした。演奏家たちは、軽く私に会釈をして、また次の演奏に入っていく。私が座って聞き始めたら、ぼつりぼつりと演奏を聴く人が増えてきた。ただ、そのような人も、数曲聴くと、立ち去っていく。みんな船内では忙しいのだ。
 1時間ほどの演奏が終わり、私は彼らに挨拶して、デッキに向かった。昼食を食べた後、プログラム表を見ると、四重奏の演奏スケジュールが出ていた。午後3時からトップのデッキでティータイムコンサート、5時からイブニングコンサート、そして、夕食後ミッドナイトコンサートと書かれていた。何を思ったか、私はこれに合わせることにした。そのスケジュールに、演奏の場所に行って、彼らの目の前に座って、聴きはじめた。


 船内はすべてカーペットが敷いてあった。そこに座り込んで聞いていると、一人の演奏家が私に折り畳みの椅子を持ってきてくれた。私が聴いていると、誰か他の人も気が付いて一緒に聴きはじめる。私が聴くまでは、誰も立ち止まらないのだ。
 夕方のコンサートで、演奏後立ち話をした。彼らは元ニューヨークフィルのオーケストラのメンバーで、引退した後、このクルーズ船の中で演奏することを条件に世界一周をしているとのことだ。超一流の演奏家たちだった。私はこれにはまった。次の日の予定で、早朝演奏会、階段踊り場演奏会...と、全部調べて、全部出かけて聴きはじめた。彼らは様々な曲を、自分たちで楽しそうに、完全に息が合って演奏していた。
 私が聴きはじめると、他の乗客が立ち止まる。
 3日目の夕食は、フォーマルの食事だった。船内でもっとも広いダイニングルームで数十の大きなテーブルに、数百人の乗客が食事を始めた時には、中央の吹き抜けの舞台で、その四重奏団が演奏していた。曲が終わるごとに、大きな拍手が上がる。私とヨメサンのテーブルには、他に6名ほどが席についていた。

 スープが終わり、メインディッシュが出てくる前に、演奏が一区切りとなった時、燕尾服を着たバイオリンの演奏家が、バイオリンを持ったまま、舞台から降りて、こちらにやってきた。数百名が見ていたかどうかは知らないが、私の席に来たのだった。
「何かご希望の曲はありますか」と、にこにこしながら私に尋ねた。周りの乗客がこちらを見ている。なんか、知り合いなのか、VIPなのかと思われている注目の感じ。
「ラプソディ・イン・ブルーをお願いします」と言うと、「喜んで」と、言いながら会釈。舞台に戻って、演奏が始まった。数百名の乗客の中で、特別扱いを受けて、私は感激の頂点だった。

 そして、その次の日も、船内の決まった場所で、演奏を聴いていた。もうホノルル到着の前日だった。次の日の昼には下船となる。夕方のコンサートの後、四重奏の一人が私に封筒を渡して、「これは特別の招待状です。私たちの演奏を聴き続けていただいて、本当にありがとう。あなたと、あなたの奥様に。明日の朝ですが...」という。

 中の招待状には、「ゲーム室にて朝7時から、特別コンサート」と書かれていた。
朝、私たち二人が行くと、2つだけ椅子が置いてあり、4名が「何を演奏しましょうか。お好きな曲をどうぞ」というので、私はチャイコフスキーのバイオリン協奏曲を頼んだ。
 すでに、船はホノルル港に近づいていた。

 

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