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音楽珍体験  その9 空港のマリンバ演奏

音楽珍体験  その9 空港のマリンバ演奏

樋口 健夫

アイデアマラソン研究所所長 ノートを活用したアイデアマラソン発想法考案者であり、電気通信大学講師。現役時代は三井物産の商社マン。 企業の創造性トレーニングでは、ジャパネットたかたの全社員運動、アサヒビールでの研修などを続けている。独創性を命と考えている。

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音楽珍体験  その9 空港のマリンバ演奏

 

 ナイジェリアのラゴスに駐在していたとき、ガーナのアクラに出張した。ナイジェリアとガーナは近くの国だ。2つの細長い国を挟んで、ほぼ1時間ほど離れている。
 ガーナは水力発電のプロジェクトの調査だった。仕事は無事に終わって、その日の午後の便でナイジェリアに戻る。朝の時間があまり、木下商店に買い物に出かけた。大きな木の下に、土産物を並べているから、我々は木下商店と呼んでいた。


 たくさんの木彫りの人形、首飾りなど、ほぼナイジェリアで見かけるものと似ている。その一番奥に大きな木のマリンバがあった。幅1メートル、木の鍵盤、短い鍵盤から長い鍵盤まで、20数本が並んで、鍵盤の下には、瓢箪が共鳴器としてたくさんぶら下がっている。叩いてみた。(もちろん書き表せないが)澄んだ音、「ポン、ポン、ポン、ポン」すごく良い音、癒される音がした。
 その時、無性に欲しくなった。タイプで結構早いのだから、叩く楽器なら何とかなると、(今でも)思っているのだ。値段も訊いた。忘れたが、かなりした。私は夢中になって、全力を挙げて値切って。買ってしまった。完全な衝動買いであった。

 そして気が付いた。大きい。こんなに大きな、壊れやすいものを飛行機で運べるか。載せてくれるか。預け入れ荷物とするのか、手荷物とするのか。買ってそのままマリンバを担いで空港に向かった。

 飛行場に到着したのは午後1時。ガーナ航空ナイジェリア・ラゴス行きの便の出発時間は午後3時だった。カウンターでこの便が遅れていることを知らされた。ロビーで待つようにとのこと。

 カウンターの目の前で、ロビーと言っても、何も無い。椅子も無いところに、私はスーツケースとマリンバを置いて、他の乗客と一緒に座り込んでいた。2時間、3時間と待っていたが何も起こらない。ただ待つ以外に方法もなかった。みんな待ちくたびれていた。ただ待つ以外に方法はない。どうなっているのかカウンターの職員も分からないでいた。


「すみませんが...」と私に声を掛けてきたのは、カウンターで荷物をあつかう若者だった。ガーナ航空の作業服を着ていた。「そのマリンバをちょっと演奏させてもらえませんか」と言う。
「どうぞ」と、私は鞄に入れていた2本の打棒を渡した。打棒の先にはゴムのひもが巻き付けてある。


「私の村にこれとまったく同じものがあったのです。私はいつも、これで演奏していました」、彼はどこからか、低い丸い腰掛けを持ってきて、マリンバを空港のロビー側に平行に置き、叩き始めた。最初の打鍵、一撃で、空港の細長いロビーの乗客全員(といっても数十人)がマリンバ奏者と私の顔を見た。それから叩き出される音は、すばらしかった。


 すぐに空港内の全乗客、航空会社の空港職員、小銃を持った警備の兵隊、タクシーの運転手が全員、私たちの周りを取り囲んだ。誰も演奏を阻止する者はいない。1時間以上も、延々と即興演奏が続いていく。みんなうっとりとしている。
 アフリカ人にとっての音楽は、もう体に染み着いていて、音楽が体の中で共振するのだろう。うっとり具合が半端じゃない。
曲が続くと、足をふみ、肩を揺らして聴いている。踊りそうだ。


 聴衆の中には、白人も何人かいた。終わった時、奏者の顔は流れるような汗。割れるような拍手。感動したおじさんが、奏者を抱きしめた。
 ふっと見ると、マリンバの上に、お金が置いてある。ドルもあった。現地の通貨もあった。私は全部、その若者に渡した。
 これだけ熱の入ったおまじないをしても、飛行機は来なかった。外は暗くなって、ガーナ航空の職員が「今日は、もう来ません」と言う。「私たちの車で、町に戻りませんか。タクシーもいなくなっていた。私をホテルに送ってくれた。次の日の昼に空港へ行くと、係員とマリンバ奏者が100倍愛想が良くなり、「これは預かれませんので、機内に手荷物として特別に持ち込みをしていただくように、(当時はスチュワーデスと呼んだ)依頼をします。大丈夫です」


こうして、ナイジェリアに持ち込み、日本に持ち込んだが、夏の高温多湿と冬の寒さ乾燥に耐えられず、共鳴器の瓢箪に皹(ひび)が入ったので帰国後、35年後に廃棄した。すごく惜しい。良い音だった。
 その音は、かすかに私の脳の底に残っている。

 

 

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