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どこでもポメラ その3 イン・ベッド・ライティング

どこでもポメラ その3 イン・ベッド・ライティング

樋口 健夫

アイデアマラソン研究所所長 ノートを活用したアイデアマラソン発想法考案者であり、電気通信大学講師。現役時代は三井物産の商社マン。 企業の創造性トレーニングでは、ジャパネットたかたの全社員運動、アサヒビールでの研修などを続けている。独創性を命と考えている。

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どこでもポメラ その3 イン・ベッド・ライティング


ポメラの良さは、その単機能の入力専門機だということにある。

ここではメールを見ることも、Webにうろうろすることもない。それが最高に良いところなのだ。だから、入力専門機を必要と感じていない人には、これがなぜ良いのかが分からないだろう。文をつくることが人生であると考えれば、この機械は最高だ。

 

毎朝、起きると、小さな魔法瓶に昨晩のうちに入れておいた煎茶のまだ熱いのを飲む。これで私の1日が起動する。
 枕元のアイデアノートに入れてある紙切れを見る。

 紙切れには、今、書こうとしている本の一章、エッセイ、論文の一部などのタイトルやシナリオのリストがあり、その中からタイトルを選んで、枕元のポメラを手にする。
 ベッドで体を起こし、枕の上に、もう一つ枕を縦において、背中に置き、両足を折って、布団をかぶせて、ポメラを上布団の斜面に広げて、文を入力し始める。

DSC04391.jpg 

 毎朝、起きるのを30分早めてでも、ベッドの中で、半時間エッセイを書くことをルールにした。

 私の人生では、考えて書くことに2種類ある。
 一つは、過去29年間ほぼ毎日書いてきたアイデアマラソンである。思考の断片、小さなコンセプト、気づきなどを、ノートに書き留める。
 
もう一つは、執筆用の文を書くことだ。それも最初は、海外駐在していた時に、書き出したエッセイである。

 最初はエッセイをノートに書いていた。ワープロができて、原稿とエッセイはワープロに、そしてパソコンに入力するようになった。この時も、どんな原稿やエッセイを書くかは、事前にノートにアイデアマラソンの発想として書くようにしてきた。
 アイデアマラソンの発想とエッセイを書くことが、私の人生の両輪となっている。

 今までは、新しい1日が始まったら、アイデアマラソンの発想を書いていた。
 1日の私のアイデアマラソンの発想は50個である。毎日50個書くことを決めたのは、1999年の1月1日だ。それ以来、毎日、絶対に続けてきた。
 アイデアマラソンを朝一番に書き始めると、大学に出かけたり、講演などに出かけると、夜帰って来た後も、まだアイデアマラソンが完成していないことが多く、その日は、アイデアマラソンで始まって、アイデアマラソンで終わってしまうことになることもあった。
 アイデアマラソンは絶対に実行するのだから、夜どんなに遅くなっても、終わらせるとして、書き物はそのようには行かない。
 このように以前は、アイデアマラソンの毎日50個を書き留めるのを最優先していた。それが終わったら、エッセイを書いていた。
 
毎日のアイデアマラソンの実行を終えていれば、iPad以前は、ほんのちょっとした時間でも、ノートPCを立ち上げて、文を書く時間を作っていたが、iPadがそのちょっとした時間を奪ってしまった。
 ポメラを入手して、順序を逆転させたのだ。

 毎朝、起きたら、枕元で入力することを最優先することにした。基本は朝の枕元で30分であるが、ほんの15分や20分でも、ちょっとした文を書くことは可能である。
 毎朝、文を入力するには、立ち上がりが数秒のポメラは理想的となる。この文を書いているのは、オーストラリア・メルボルンの国際学会での発表を終えた次の日の朝の、ホテルのベッドの上である。
 何か文を打ち込まないと1日は始まらない。何か発想を書かないと1日は終わらない。これが私の人生だ。