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緊急ブログ上程 第一弾 「ねむけおばけ」対策 バスの運転手を見張れ

緊急ブログ上程 第一弾 「ねむけおばけ」対策 バスの運転手を見張れ

樋口 健夫

アイデアマラソン研究所所長 ノートを活用したアイデアマラソン発想法考案者であり、電気通信大学講師。現役時代は三井物産の商社マン。 企業の創造性トレーニングでは、ジャパネットたかたの全社員運動、アサヒビールでの研修などを続けている。独創性を命と考えている。

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バスの運転手を見張れ!

飛行機関連のトラブル・珍体験を連載中ですが、バス事故について緊急提案します。

8月9日に米国ユタ州で起こったバス事故で、日本人観光客が多数死傷された事故では、居眠り運転が原因とのこと、私は海外での、すべての長距離のバス旅行には、運転手の居眠り運転を防止する見張りを添乗員とお客が交代で「任務」に付く必要があると訴えてきただけに、非常に残念だ。


◎トルコのバスの居眠り運転(平成18年10月17日、HISの観光客1名死亡、23人負傷)
◎パキスタンでの居眠り運転(昭和59年9月9日、日通航空の観光客4名死亡)
◎韓国の京釜高速道路での居眠り運転(昭和59年9月12日、日旅サービス、1名死亡、28人が負傷)

私自身が今までバス旅行すると必ず運転手を見張ること、あるいは運転手の近くに座っている人に、運転手を見張るようにアドバイスしてきた。私は居眠りを「ねむけおばけ」と名付けた。
私自身、自ら運転手を見張って、居眠り運転を始めた運転でも、4回、事故を防げたと思っている。


一度は、近ツリのパッケージのパリ往復だった。3月ころで、サベナ航空でブリュッセルに到着した。私はフランス人の老人の友人に面談に行ったのだが、私以外は添乗員と数夫婦以外、全員が若い女子大生というすごい旅行で、ブリュッセル市内観光の時は、まるっきりボディガードのような感じがした。ブリュッセルからパリまでバスで向かった。運転手も元気で問題なかった。
パリまで、私の友人が迎えに来てくれて、数日後に指定のホテルに戻り、同じバスで、高速道路で、ベルギーに戻る途中、私は運転手の見晴れる一番前の右側に座った。途中の高速道路では、私以外、添乗員を含めて全女子大生たちは寝ていた。
運転手は、年配の男性で、これからノンストップでブリュッセルに向かうとマイクで言っていた。
私は運転手を見張った。運転手の視線、目の横が開いているか、運転がふらふらしていないか、眠気を感じると、ラジオを掛けたり、窓を開けたり、お茶を飲もうとしたり、頭を掻いたり、様々な癖がでる。
何と言っても運転がふらふらする。出発して2時間ほどして、運転手に色々な兆候が出始めた。右目の端が閉じていたり、運転が少し、ほんの少しふらついたりして、ラジオを掛けたり、自分の魔法瓶に手を伸ばそうとした。
(こりゃ、いかん)と、私が彼の魔法瓶のコーヒーを入れてあげると同時に、
「トイレに行きたい」と運転手に伝えた。運転手がニコっと笑ったのをおぼえている。
「了解。探しましょう。止まれるところを」と、街道の横のホテルに停止して、トイレストップ。添乗員には、「居眠り運転しかけていた」と伝えた。
 添乗員が、
「ありがとうございます。私の仕事でした」と、助かったという顔で言われていたのをおぼえている。運転手もトイレに行った。その間に、私は女子大生の中でチョコレートを持っている人を探して、チョコレートを運転手にあげた。
これで事故はなかった。事故が起こらないと何も問題はなかった。

二つ目は、モロッコの南部のマラケッシから、カサブランカを通って、北の端のタンジールまでのバスに乗った時、この時は、初めから運転手を見張りに最前列に座った。
マラケッシを朝の4時に出る。出発後2時間ほどで、夜が明けてきたころ、運転手が眠気を感じ始めた。私は秘蔵の日本から持ってきた明治のブラックチョコレートを開けて、大きな塊を、運転手のところに持って行って
「どうぞ」とチョコレートを出したら、すごく喜んだ。すると、運転手の後ろのおじさんが、
「俺にもくれ」というので、
日本語で
「ばーか」と言っておいた。
その後、
「トイレに行きたい」と言ったら、
「良い休憩所がある。停止しよう」と運転手が生き返った。
停止した場所は小さなレストランがあったので、私はコーヒーを2杯買って、運転手に持ち帰った。本当に喜んでいた。
カサブランカまでの運転では、彼は鼻歌を歌っていたほどだった。カサブランカで運転手が変わった時、時間に余裕があったが、運転手が私に、コーヒーをおごってくれたのが印象的だった。 

3回目は、モントリオールからケベックシティまでのバス旅行で、運転手が居眠りを始めているようだった。私は真後ろだったから、よくわからない、まさか運転手の顔を見に行くわけにもいかなかった。となりのフランス語だけの女性に、ジェスチャーで、運転手がいねむっているのではと、伝えたら、彼女が運転手に「大丈夫か」と尋ねて、運転手が大丈夫と答え、私は運転手に日本ののど飴をあげた。


 こうして、私は生還してきた。
 私はサウジアラビア半島での運転などで、自分が長距離を運転すると、必ず眠くなるのが分かっているので、人も眠くなるものだと信じている。なるべく単独で長距離は運転したくなかったし、助手席に座る人には、「私が居眠りをしないように、見張って欲しい」と言い切った。運転している者は、眠くなっても、我慢したり、言い出せなかったりする傾向がある。特にバスの運転手は、「眠いから15分停車して寝ます」とは言えない立場がある。これが事故の元となる。

私は息子たちの学校からの日本国内でのスキーの夜間バス旅行でも、クラスで運転手を見張ることを条件として許可をしてきた。スキーでは、特に帰り道と夜行が危ない。
 
 三井物産時代に、部内全員で那須温泉までバスをチャーターして、旅行した。部長から全員参加した。その帰り、現地を出たのが午後2時で、私以外全員が寝ていた。
 運転手は、
「これから東京の大手町まで直行します」と言って高速に入った。
例によって、高速道路で、居眠りの兆候を見せた。私は運転手のところに行って、
「トイレに行きたい」と頼んだ。
「はい、じゃ、パーキングで止まりましょう」と、了承。
例によって、私は運転手にコーヒーを買って帰った。すごく喜んでいた。旅が終わった後も、運転手が私にお礼を言っていた。それを聞いた部長が、
「助かったよ。ありがとう」と、言っていた。国内でもバスの長距離は危ない。


 この夏休み前に、トルコのバス旅行に参加された友人夫婦にも、居眠り運転の恐ろしさを伝えておいた。

教訓 長距離のバス旅行は、絶対に見張りを徹底し、運転手に休息を取らせたり、場合によっては15分でも仮眠を取らせるのが安全だ。もう2度とこんな悲惨な事件を起こしてはならない。パッケージツアーで、全世界のバス旅行には、日本人の団体が同時に何百台、ひょっとすると何千台ものバスに乗っているのだろうか。長距離を運転している者は、誰も眠くなることを忘れてはいけない。旅行会社は、その準備をして乗る必要がある。「ねむけおばけ」は全世界どこにでもいる。