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「分類」でないと見つけたり ~正解のない迷宮「分類」に深入りするな~(2/2)

「分類」でないと見つけたり ~正解のない迷宮「分類」に深入りするな~(2/2)

野原 淳

キングジムファイリング研究室でファイリングや机の整理のしかたなどの指導・提案をしています。

当ブログ「ファイリングは捨てることと見つけたり」は、2015年4月6日から新しいURL「​http://blogs.itmedia.co.jp/jun_nohara/」 に移動しました。引き続きご愛読ください。


 皆さんこんにちは。キングジムファイリング研究室の野原です。前回に引き続き、分類についてのお話をしたいと思います。さっそく行ってみましょう。

 

良く使うものを近くに置こう

 「契約書」「見積書」「企画書」...。

 分類を作るようお願いすると、皆さん大体こういう分類を作り始めます。

 おそらくこういった分類が良いのは、オフィスではなく、部署横断的に、もっと多くの人が利用する別室の資料室のようなところのように思います。誰の席が近いとか言う概念がなく、異なる仕事の人どうしが利用するので書類名くらいしか共通の分類方法がないようなケースです。

 しかし、そのような施設をお持ちの所はあまりないと思います。

 そうでないとすると、便利になるための分類の自由度をかなり上げることができます。その上でこれまで話してきたことを総合して言うと、「よく使うものを近くに置こう」となります。

 「これはこういうふうにまとまっているよ」と一言で説明できるくらいの書類のひとまとまりを作ります。難解な分類はいけません。あくまでも共有であることは踏み外さなければ、必ずしも書類名や案件名にとらわれる必要はありません。これを、良く使う担当者の近くに配置すればいいのです。

 ひとまとまりの量はどのくらいがいいでしょうか。

 量は10冊~20冊くらいがいいと思います。大体キャビネット1~2段分です。分類の最小単位がキャビネット1本から溢れるようなら、もう少し小さな区切りを考えます。分類の最小単位にたどり着いても、キャビネットをまたいで探しているようでは使いづらいです。

 このまとまり一つ一つに名前をつけます。「こういうふうにまとまっているよ」といったものがその名前です。だいたい業務ごとになるので、我々はこれを「業務名」と呼び、ファイリング的にいえば、「小分類」に当たるものです。

 では、大分類や中分類は?

 これは殆どの場合、組織名を流用します。たとえば、部署名を大分類、係名を中分類などとします。多くの紙ファイリングの場合、部署や係をまたいで使用されるというケースはあまりありません。最小単位の小分類が使いやすいまとまりになっていて、担当者の近くに配置されていれば、ほとんどのケースはうまくいきます。

 ただし、うまく行くといっても100%はありません。これまでもずっと言って来たように、分類は人それぞれ解釈が違います。全員が良い分類というのは求めすぎなのです。

 時間をかければその分良いものが出来るならいいのですが、時間をかけて作ったものでも、かえって不便になったという人は少数であれ必ず出ます。そっちの良いようにすれば、今度はこっちが使いづらくなる。だから良く使う人を優先し、あまり使わない人には慣れてもらうわけです。

 一定以上の精度が望めないなら、一定以上の時間をかけてもしょうがないのです。

 一方、量を減らすと目が行き届くようになる、というのは全ての人に対して言えることです。そういう方にエネルギーを注いだ方がいいですよね。

 

見出しで補う

 分類は正解がありません。でも、書類はどちらかに綴じなければなりません。もちろん、コピーして両方に綴じることは、絶対にしてはなりません。

 多くの人がこうであろう、という方に綴じても、違う方に綴じようとする人は出るでしょう。これを是正するために、中に何を綴じるのか、見出しのサブタイトルに表示します。

 「営業会議」というタイトルのファイルの中に何を綴じるのか。タイトルの下に少し小さめの文字で「会議案内」「配布資料」「議事録」と記載するのです。そうすれば、営業会議の資料を送付した際の総量の領収書は、別のファイルに綴じるんだと分かります。じゃ、こっちかな、と、「領収書」というタイトルのファイルを見た時にサブタイトルに「会議資料送付」などと記載されていれば、そこであることが分かるでしょう。

 人による分類の判断にはゆれが生じるので、見出しによって是正するのです。

 

分類は意味がないのか?

 そういうわけでもありません。

 目の行き届く書類量を維持した上で、一言で言い表せる小分類(=業務名)が全体の7割でも決まれば、かなり便利になるでしょう。外出先などから電話で指示してファイルを探しもらう時などには重宝すると思います。

 また、分類を決める作業によって、重複業務や、本来その部署でやるべきでない仕事や無駄な業務が見つかることもあります。

 キングジムのファイリングでは小分類を業務名と呼んでいますが、「業務」名とした時、どうしてもこの部署でやるべきことじゃない、というものが出てくるわけです。今までなんとなくやっていたけど、やっぱりおかしい、と。

 こういう活動によって、一つの業務そのものがざっくりなくなったら、分類を考えた効果は大きいですね。仕事がなくなれば書類もなくなり、管理する時間もコストもリスクもなくなります。スペースが生まれ、本来業務に充てる時間が増えます。

 また、世の中は、分類せずにタグを付ける方向にシフトしています。どういうタグを付けるべきか。この問いに、分類の勉強が生きてくることは間違いありません。

 

 さて、今回は皆さんに分類についての考えを変えて頂こうと思ってお話しさせて頂きました。

 ファイリングを指導する立場にあって、このような考え方は、異端なのかもしれません。しかし、ファイリングの目的はやはり、皆さんの業務がラクになることだと思うのです。限られた時間の中で成果を出さなければなりません。

 決して分類を否定しているわけではありません。目的が何かを考えた場合、時間を割くべきは完璧な分類を作ることではなく、目が行き届く量を維持することなんだと思っただけです。その要件を満たした上で分類をおこなうのであれば、効果は期待できます。