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「分類」でないと見つけたり ~正解のない迷宮「分類」に深入りするな~(1/2)

「分類」でないと見つけたり ~正解のない迷宮「分類」に深入りするな~(1/2)

野原 淳

キングジムファイリング研究室でファイリングや机の整理のしかたなどの指導・提案をしています。

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 「ファイリングとは分類すること」そう考えている方は多いと思います。「分類に悩んでいる」という相談はとにかく良く頂きます。

 現時点で私が行き着いた結論から申し上げますと、分類には正解がありません。

 こんにちは。キングジムファイリング研究室の野原です。今日は、皆さんお悩みの、分類についてお話ししたいと思います。

 

永遠にゴールにたどり着けない、「分類」の迷宮

 多くの方が「ファイリングとは分類すること」と考えているように思います。分類すれば探しやすくなるのだと。

 一定ラインまではそうかも知れません。しかし、あくまでも一定ラインまでです。ゴールまではたどり着けません。

 なぜなら、分類に正しい答えはないからです。もし正解に行き着いたと思っても、それはあなたにとっての正解であって、他の人から見たらそうとは限りません。しかも、今の正解が、これからも続くとは限りません。あなたも成長し、考えが変わります。時間の経過によって業務の改廃、部署の統廃合、会議名称の変更などが行われ、状況も変わります。

 だから、分類にこだわリ過ぎると、担当者が変わるごとに分類を変えたり、時とともに分類の体系を変えたりしなければならなくなるのです。時間をかけて考えても、できたときにはもう古い、ということだってあるのです。

 「会議」「領収書」という分類があった時、会議のために買ったお茶代の領収書はどちらに入れれば良いのでしょう。

 「営業会議」と「戦略会議」という会議が一つになって「営業戦略会議」となることもあります。

 「業務改善」として始めたものが、うまく行ったので自社の新商品にしようと発展した案件は、どこに分類しましょう。

 特に最近は、他部署とプロジェクトを組むなど、フレキシブルになり、分類しにくいケースがどんどん増えているのです。AにもBにも当てはまらない、AでもあるしBとも言える、そういった中間的な書類がどんどん生まれてくるのです。

 このような分類に直面した時、人によって判断が異なります。Aのファイルに綴じる人もいれば、Bのファイルに綴じてしまう人も出て来ます。しかし、これはどちらが間違えているとは言えないのです。

 このことに気づいた時、私の分類に対する優先順位は一気に下がりました。分類の迷宮をさまようのではなく、迷宮の規模を小さくしてしまう方が、効果があると思ったのです。ファイリングは分類することだという考えからは一歩引き、捨てることだと考えたとき、すっきりとまとまったわけです。ファイリングは「捨てること」という方向に考えを転換した瞬間でした。

 

分類は変化し続ける

 ですから、分類は定まらないもの、そういうものとして扱うのです。

 そもそも、オフィスは特定多数の人たちが働いている場所です。不特定多数の人が働いているわけではありません。皆さんもそうだと思いますが、オフィスで良く使うファイルの場所は大体覚えていて、いきなりそこに取りに行っていると思います。

 「えーと、あのファイルは経理の、売掛金の...」なんて、探し方はしていませんよね。図書館とは違うのです。

 しかし、分類をしないわけにもいきません。紙ファイリングの場合は、やはり何らかの分類ごとに並べるわけですから、分類は必要です。

 分類の中でも、安定性が高いものとそうでないものに分けられると思います。

 安定性の高そうなものは、比較的分類もしやすいはずです。書類名でも、案件名でもいいですし、そう言ったものにとらわれなくても結構です。通常業務で使い良い、少しでも多くの人が利便性を感じる分量のままりを作り、名前を決めましょう。

 不安定性が高い分類は、もうこれは変わるものだと思って取り組みます。

 書類量が少なくて、一つの小分類を構成しきれない場合は、「その他」「一般」などのような名前があっても構いません。やっていくうちに書類が増え、一つの小分類を形成できるようになったら、そこから格上げすれば良い話です。

 こういう2冊とか3冊しかないファイルにいちいち名前をつけていると本当に分類名がたくさんできてしまいます。少ないものは概して不安定性が高いです。「その他」「一般」で様子を見ましょう。

 

分類にとらわれすぎない

 こうした作業で変に学問的になる必要は私はないと思います。

 どうせ作るなら完璧なものを、という気持ちは分かりますが、こと分類に関してはそれが迷宮の入口です。

 若干変でも、結果的にみんなそれに慣れてしまっている、変えたらみんな分からなくなる、ということってありますよね。それを本当に変える必要があるかは、慎重な判断が必要です。ファイリングは便利になるためにやるものです。変えれば慣れるまでに時間を要します。前の方が良かった、という人も出てくるでしょう。

 ほとんどの方は、ファイリング学者や分類学者を目指すわけではありません。開発は開発の、経理は経理の、営業は営業の、つまり主業務のエキスパートであるべきです。

 ファイリングは重要です。でも、主業務ではありません。ファイリングは主業務を適正に遂行するための一つの手段であって、ファイリングが目的ではありません。

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 ところが、分類の迷宮に入ってしまうと、そういうことは全てどこかへ行ってしまい、分類を作り上げることが目的になってしまいます。結果、見た目はいいのですが、実際は誰も使えないような分類が出来上がるのです。これには気をつけないといけません。