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プレゼンが退屈になることを防ぐ「ヤマ場演出法」

プレゼンが退屈になることを防ぐ「ヤマ場演出法」

開米 瑞浩

社会人の文書化能力の向上をテーマとして企業研修を行っています。複雑な情報からカギとなる構造を見抜いてわかりやすく表現するプロフェッショナル。

当ブログ「開米のリアリスト思考室」は、2015年4月6日から新しいURL「​http://blogs.itmedia.co.jp/kaimai_mizuhiro/」 に移動しました。引き続きご愛読ください。


 こんにちは。文書化能力向上コンサルタントが本業の開米瑞浩です。原子力や憲法の話はあくまで余技ですのでお間違えなく・・・・。

 というわけで久しぶりに(汗)、本業の話を書くことにしましょう。

 「文書化能力」というのは、要は分かりにくい複雑なハナシを分かりやすく書く力のことです。そこで、基本的には「書く」ことをテーマとして研修を行っていますが、書いた上でそれを口頭で説明する、つまりは

    プレゼンテーション

 が必要な場面もビジネス実務上は多いので、プレゼンの実習も含めてくれないか、と依頼されることがあります。

 今日はそんなプレゼン実習をやる中で気がついたことを書きます。名づけて

    退屈なプレゼンを防ぐ「ヤマ場演出法」

 こんな工夫をすると、ツカミの3分で聴衆の興味を引きつけ、「なになに? その先聞きたい!」と思ってもらえる、ごくごく基本的な手法についてです。

 たとえば、
Aをしたので、これこれの仕組みでBになった。
その上でCをしたところ、BとCがこれこれの仕組みでDになった。
その上でEをしたところ、DとEがこれこれの仕組みでFになった。
・・・(以下延々と続く)
そして最終的にZの結果がもたらされたわけです
 と、因果関係を順番に時系列的に辿っていくような説明があったとしましょう。

 因果関係というのは原因があって結果が起きるものですし、時間軸に沿ってたどっていこう、というのはごく自然な発想なのですが、困ったことにこの「時系列追っかけ法」は聞き手にとってわかりにくく退屈になってしまうケースがよくあります。

 ある程度背景事情を分かっている聞き手だとそうでもないのですが、話題になっている分野について詳しくない人がこれを聞くと、

AからB、BとCでD、DとEでF・・・・
えっと、Zの話じゃなかったっけ・・・・
いつになったらZにたどり着くんだろう・・・・

 といった「もどかしさ」「不安感」を与えやすいんですね。

 そこで、どうするか。私が個人的に「ヤマ場演出法」とたった今名づけた方法なんですが、こんな手があります。

今回、Zという現象が起きたことはみなさんご存じですよね。
そこで原因を調べてみたところ、その前にX(エックス)という事態が起きていたことがわかりました。
Xですよ、X。これ非常にマズイですよね?
そこで、問題はなぜXが起きたかです、これを突き止めなければなりません。
そのポイントは3つありました。AとKとLです。
ではAから詳しくご説明しましょう。・・・・(以下略)
 と、こういう流れです。イメージチャートを書くとこんな感じ。

2013-0116-01.PNG

 聞き手はゴールの「Z」については知っていて、どうしてそうなったか、その謎を解いて欲しい、という意識でいることが前提です。関係者の誰もが知っているような「大事件」が起きた時はよくこういう状態になります。最後の「Z」のことはよく知られているけれど、途中経過がわからない、というわけですね。

 こういう時は、BCDEといった細かい話は後回しにして、

ゴールの直前から話を始めて、
先にヤマ場を明示します

 それが↓この流れ

今回、Zという現象が起きたことはみなさんご存じですよね。
そこで原因を調べてみたところ、その前にX(エックス)という事態が起きていたことがわかりました。
Xですよ、X。これ非常にマズイですよね?
そこで、問題はなぜXが起きたかです、これを突き止めなければなりません。

 ここでポイントは、「ヤマ場」として選ぶ「X(エックス)」という事態の選択です。Xについて触れるときに、

Xですよ、X。これ非常にマズイですよね?
 と聞き手に問いかけて同意を求め、「うんうん、そりゃマズイわ・・・」と思ってもらわなければいけないので、そういう、「知識の無い人にでもわかりやすい、マズイ事象」を選んでください。(興味を引ければいいので、良い話の場合は逆に「おっ、そりゃいいねえ!」という事象を選びます)

 その上で、

そのポイントは3つありました。AとKとLです。

 と、また次のヤマ場を列挙します(別に3つである必要はないですが)。これでだいたい聞き手の意識の上でこんな「大まかな見取り図」ができます。

2013-0116-02.PNG

 「詳しい経過はわからんけど、だいたいこういう流れなんだな」・・・と、ここまで来ると「で、詳細は?」という意識が生まれるので、その段階でやっとAからKをつなぐBCDEという細かい部分を聞く気になってくれるわけです。

2013-0116-03.PNG

 そこまでいけば、「では、詳しくご説明しましょう」という話が通じます。
 しかしこの地ならしがないままでいきなりABCD・・という話をすると、「えっと・・・この話、どこに向かってるの?」という不安を引き起こしやすいのですよ。というのは、因果関係の入り組んだ話というのはどうしても、「一見するとゴールと関係なさそうに見える経緯」を語らなければいけない場合が多いからです。

2013-0116-04.PNG

 BCDという細かい話が素人目にはなかなかZと結びつかないように見えても、「ある程度背景事情を分かっている聞き手」の場合は、類推してくれるのでなんとかなるのですが、前提となる知識や文脈を共有していない人に話をする場合はこのへんの配慮が必要です。

 「ヤマ場」というのは本当に「山」のイメージだからそう呼んでます。
 一つ向こうの山にたどり着くためには、いったん谷に降りなければいけない。

 ということが、山に詳しい人なら当たり前にわかるのですが、素人を連れて行くときにはその前提が共有されないので、「分かりやすいヤマ場」を先に見せておく必要があるわけです。そうすれば、「ゴールの山へ向かうために、いったん谷に降りる」説明への抵抗がなくなります。

 というわけで、「ゴールの直前のヤマ場は何か?」を、まずは探してみてください。


【お知らせ】
名古屋で文書化能力向上のワークを行う公開講座を開催します。(プレゼンのワークはありません)
アイデア・思考を見える化させる「読解力×図解力」 スキルアップ研修
→ 122日 中部産業連盟主催 講師:開米瑞浩