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最初のステンレスプールを造ってしばらくした頃、ゼネコンの所長から電話がかかってきました。
ある温水プールの塗装が剥がれてきたので、修繕してほしいということだったのです。
塗装の修繕(タッチアップ)なんてやったことはありませんが、「はい!もちろんできますので、お任せください!」と即答です!(笑)
電話を切ってすぐに、プールの塗装を依頼した塗装会社に電話して、「塗装のタッチアップってどうやるんですかね?どれくらいかかりますかね?」と聞き倒します。
話をしていると別に難しいことではなく、同じ塗料を部分的に刷毛で塗っていくだけでしたので、簡単にできそうです。
もちろん、ホームセンターのペンキを塗る程度ではなく、耐水塗料ですので素人がやるべき作業ではありませんが、素人がやることにしました。(笑)
全面塗装とかは無理ですが、話を聞いていたらできそうでしたので、自社で全部やることにしたのです。
まずは見積もりを出してくれということでしたので、とりあえず現場を見に行きました。
塗装が剥がれまくっているとか、そんなにひどい状況ではなかったので、「まあ、大丈夫やな!」となって見積もり計算です。
ここで、いくらにするのか頭を捻りました。
うちの会社はステンレスプールメーカーですが、あくまでもプール本体のメーカーですので、建設工事ではプール周辺の工事一式を請け負う会社が親会社になります。
元請けであるゼネコンから見れば、うちの会社は二次下請けということです。
今回も普通なら一次下請けに依頼があります。
一次を飛ばして二次下請けであるメーカーに依頼があったとしても、私の会社が造ったプールではありません。
それなのに、私に直接依頼があったのです。
これにはかなり驚きました。
ろくに実績も経験もなく、どこの馬の骨かもわからない会社が建設業界に入ろうと思えば、当然ながら一番下の下請けになります。
下の下の、そのまた下には下があり、さらに温泉を掘り下げるように下があり、大きな建設現場では六次下請け、七次下請けとかもあります。
下の下の下・・・から見れば、上なんて本当に雲の上の存在です。(笑)
私の会社がメーカーになったのは奇跡的ですが、さらに今回は大手ゼネコンと直接取引できるチャンスです。
請負金額としては少額ですが、大手ゼネコンに取引口座が開けるなんて普通ならありえないことなのです!
しかも、電話があった時点でほぼ決まりという状態です。
私の言い値で決まるのは間違いありませんが、万が一ということもありますので、今回は確実に契約することを最優先にし、間違いない金額で見積もりを出しました。
所長の反応を見て「もうちょっと高くしておけば良かったなー」と思いましたが、予想通り即決でした。
こうして、どこの馬の骨かもわからない会社が、プール建設業界に参入して1年も経たずに大手ゼネコンと契約することができたのです。
いま考えても、「よくそんなトントン拍子で行けたもんだなー」と思います。
この業界では当たり前とも言える裏金は一切使っていませんし、接待も一度もしていません。
以前のプールの工事期間は2ヶ月くらいありましたが、私は頻繁に現場に行っていたわけではありませんし、所長と会うのも数えるほどのことです。
でも、その短期間で仲良くなって人間関係ができていたことで、普通ならありえない仕事が飛び込んできたのです。
人脈の大切さを身を持って体験したのでした。