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アイスケースで涼むのは禁止です
»2013年7月19日
とあるコンビニオーナーの経営談議
アイスケースで涼むのは禁止です
とあるところで、とあるコンビニのオーナーをしている、「川乃 もりや」です。事情により、匿名です。とあるコンビニの元社員が仕事や感じたことを、時にはコンビニの内情のあれこれをブログにしちゃいます。みなさんお付き合い下さい。
当ブログ「とあるコンビニオーナーの経営談議」は、2015年4月6日から新しいURL「http://blogs.itmedia.co.jp/kawarimonoya/」 に移動しました。引き続きご愛読ください。
ココ数日話題となっているのが、従業員が(オーナー家族という情報もあるが、確定情報でも無さそうなので"従業員"という表記にしておく)アイスケースに入り込んで遊んでいる写真をSNSに投稿し、炎上、店舗が閉鎖したという内容だ。
コンビニ本社側の対応として下記のような文書が、掲載されている。
このたび加盟店との契約解約及び当該店舗の休業を決定いたしましたのでお知らせいたします。下記対応の実施を決定いたしました。(1)FC契約条項に基づく◯◯店とのFC契約解約(2)当該従業員を解雇させ他従業員の再教育を実施(3)上記に伴い、当該店舗を当分の間休業【7/15(月) 17時より】※近隣のお客様には大変ご迷惑をお掛けし申し訳ございません。再オープンの日程は決定次第お知らせいたします。(4)全社員及び全国の加盟店に対し、お客さまに心をこめてよい商品を提供させていただくという基本的な姿勢と、安心・安全な商品を提供する指導を再度徹底あらためて、お客さまに多大なるご心配・ご迷惑をお掛けしましたことを深くお詫び申し上げます。
このコトに関して、様々な意見が交わされているようだ。
行為については擁護する気はサラサラ無い。しかし、コンビニ契約を交している身としては、数点気になることがあるので、それについては後に記していこうと思います。
まずは、上記の本部対応で分かり辛いだろう箇所について解説しておこう。
(4)全社員及び全国の加盟店に対し、お客さまに心をこめてよい商品を提供させていただくという基本的な姿勢と、安心・安全な商品を提供する指導を再度徹底
については、言わずもがなだと思うので、解説は無し。
分かり辛いのは、(1)(2)の関連についてだろう。解約したのに再教育?
(1)は、本部とオーナーとのFC契約を解約したということだ。ココまでは問題無いだろう。
(2)の該当従業員の解雇までも問題無いだろう。その後の、他従業員の再教育実施という部分が分かり辛い。
まず、通常閉店する場合には、従業員に予告解雇と行為が実施される。労働基準法により、1ヶ月前に通告することが決められている。
ところが、今回の場合予告する暇もなく閉店に至ったため、従業員とオーナー間、また本部も介入した中で、話し合いが行なわれるだろうが、他店舗へ移動するということが行なわれる可能性がある。その為の、再教育だ。
通常であれば、1ヶ月分の給与を支払い予告なしの雇用契約解除となるのだが、従業員の生活もあるため、本部が介入して従業員の労働場所の確保が行なわれるのだろうと予測できる。
(3)の休業と再開についても触れておこう。
オーナーと解約したのに、また店を再開するの?と思われる方もいるだろう。これは、店舗の契約状態による。
該当店舗は、未定ではあるものの再開すると言ってる。これは、店舗が本部契約している物件であるということだ。
コンビニ店舗には、大きく2つの契約がある。店舗物件がオーナーの持ち物である場合。この場合は、コンビニ本部との契約が終われば、店舗は閉鎖する(自力でコンビニをやらない限り)。
もう一つ、本部が物件を賃貸契約し、オーナーが経営を行なう形だ。この場合、同一店舗であっても、オーナーが変わることがある。通常では、オーナーの引退であったりするのがほとんどである。また、物件は確保したが、オーナーが付かなかったりするとき、一時的に直営店営業する場合がある。後に、オーナー経営へと移行される。
以上、一般の方には不明だろう点をまとめてみた。
では本題に入ろう。SNSでの不祥事拡散から即時解約という事例だが、いくつかの疑問が湧く。
◯本部は一方的に解約ができるの?
以前、コンビニ本部が契約解除をおこなう時で書いたのは、オーナー側が明らかに契約違反を起こしただろう場合だ。
この事例では、両者言い分はあるものの、契約書というモノが土台となって解約行為が行なわれている。
今回は、不適切な行為がSNS上で拡散、それに対する罰という形での閉店だ。
どこのチェーンも契約書に、チェーンの評判を貶めたら解約という項目があると思うので、上記店と同様、契約書上においての対応という意味では、コンビニ本部の対応にブレはない。
しかし、今回の件は、広義的意味では、店舗へのクレームと同類だ。クレームは、どんな店舗でも発生する。そのクレームが入ったから=チェーンの評判を貶めたとするには、早計ではないだろうか(それほどSNSの拡散力というものにパワーがあるのだろう)。最終的に民事で争われた場合、コンビニ本部も無傷ではいられないと筆者は考えている。
店側から見ればある意味、横暴な対応と言える(しかし、近隣の同一チェーン店舗にしてみれば、巻き添えを食う可能性が高いので横暴でもなんでもないと考える。もし、筆者の店舗の近くで同様なことがあったら「さっさと閉めろ」と、本部に詰め寄るだろう)。
例えば、店舗に対して通常のフローでクレームが入った場合と比較してみよう。
すごくやる気のない店で「あの店やる気あるの?」と、いう本部社員も認めるようなクレームであっても、いきなり解約にまで話は進まない。
幾度かの指導をし、それでも改善見込みのない店であった場合、解約という道が開ける。
本部側から解約を進める場合、最悪裁判ということになる。その為には「日常において継続的に指導をしたが、ダメでした。」と、いう記録が必要になるからだ。だから、1発アウトということは無いと言ってもいい。
以上の点から、コンビニ本部といえ一方的に店舗閉鎖をするのはハードルが高い行為だ。そこで、更なる疑問が湧く。
◯今回の不始末による閉店なのだろうか?
21歳ローソン店員、アイスケースで寝そべった FB投稿で炎上→解雇:社会:スポーツ報知の内容に下記のような記載がある。
04年にオープンした同店の今後については「新しいオーナーさんの問題もありますし、再開のメドは立っていない」と話した。
2004年オープン。対象チェーンの契約期間は10年である。
ということは、満了解約まで半年から長くて1年半という状況だ。半年前であれば、すでに、更新契約の準備が整っているだろう。更新を決定してからの取消となると、色々と障害が出てくる。だから、更新は決定していない状態なのだろう。
もしくは、更新しないことが決定していたのかもしれない。その場合、様々なハードルが一挙に無くなると言える。筆者はこのパターンである確率が高いと考えている。
SNSに投稿した様子から、店舗は通常の管理状態には置かれていない。いくら管理の行き届きにくい深夜時間帯であっても、バイトが悪さをするというのは、お客さんがいない時に事務室で漫画を読む程度だ。しかし、今回はSNS投稿で完全に遊んでいる。しかも、売り場内でだ。そのような状態で契約を更新することは、本部側からしてみれば有り得ない。
同時に言えることは、店舗側からも更新は望んでいないのだろうということだ。だからこそ、売り場で遊ぶことを黙認していたのだろう。ここまで言い切れるのは、アイスケース内で寝そべるなどということは、一人がやろうとしてもできないからだ。従業員のみんなが、売り場で遊ぶことに慣れているのだろうと思われる。
以上のことから、店舗(オーナー)は遅くても1年半後には、元々無くなる予定でいたと想像できる。その場合、最初の疑念である本部により一方的な解約であったのだろうか?というところの印象が変わってくる。長くなってきたのでまとめてみよう。
改めて断っておくが、この内容は筆者の妄想である。
◯オーナーには、すでに経営努力をするモチベーションは消えていた。
◯契約期間は残り半年〜1年半である。
以上から、ハードルの高い"契約解除"というより"合意解約"がされたのではないだろうか。
何が違うの?と思われるだろうが、大きな違いがある。
前記の商品やシステムが勝手に停止されてしまうような"契約解除"だと、店舗にとって最大の負債である商品を売り切ることができない。故に、解約後の負債が大きいのである。
"合意解約"なら期間を区切って閉店するので、商品を売り切ることができる。店舗にある商品は売価ベースで、500万円前後あるものだ、それらを金に変えることができるのとできないのとでは、雲泥の差である。
いやいや、店はいきなり閉まったんだから、合意とか不合意は関係なくない?と、思われるだろう。
不確定情報だが、店舗から商品が搬出されたという情報がある。これが事実ならば、商品を直営店舗へ移動したということだ。合意解約だからこそ、商品を移動したのではないだろうか。
ある意味の取引だ。
◯本部としては何としてでも炎上を止めたい。店舗もそこは同意だろう。
◯対お客さんへの最高のアピールは、店舗の閉鎖である。
◯オーナーは近いうちにヤメることが決まっていた。しかも、今やめれば商品は本部持ち?
本部「いつヤメるの?」
オーナー「今でしょう!!」
オーナーにとっては渡りに船といった状況だ。閉店には値引きセールが付き物だが、商品を直営店舗へ移管してくれたのであれば、値引きを一切せずに売り切ったと同様の価値がある。
筆者の憶測が正しければ、該当オーナーは通常に閉店する場合に比べて、金銭的には幸運な閉店を迎えたと言える。
再度断っておく、これは筆者の妄想である。
最近では馬鹿発見器と言われるSNSだが、筆者の妄想が外れてれば、オーナーは泣く泣く閉店を迫られたわけだ。筆者の店舗では以前からSNSの使用に対する注意を事ある毎にしていたので、多少の安心感は持っていたが、間違いなく対岸の火事ではない。と、いうより、筆者自身が火の元になる確率のほうが高いだろう(汗)
改めてSNSの使用に注意しようと固く誓うのであった(笑)