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私は今でこそ気が付けば、ビジネスのキッタハッタの世界にどっぷり浸かって、こんなブログも書かせて頂いておりますが、出身学部は文学部で学科は日本史、しかも専攻は大正〜昭和初期で卒論テーマは「神戸旧外国人居留地の永代借地権問題」というまあITビジネスとは対極にありそうなものでした。とはいえ、当時教授に口酸っぱく言われていたことで(当時は遊びに夢中で理解できてませんでしたが。。)今思えば大事なことだと思えるのが、「研究史の整理」です。これは要は有り体に言えば、一つのテーマに関して大概の場合、従来研究というものが存在するので、きちんとそれを読み解いてからそれに対して、どういうスタンスを取るのかを決めて論旨を展開しましょう、というものです。で、新規事業に置き換えた時にこれにあたる行為が何かというと、「他人のビジネス(新規事業)の研究」ではないかと思います。詳細なやり方はいくつかあるのでまた別の機会に書きたいと思いますが、要は他の人がビジネスをやった時に上手く行った要因、失敗した要因を調べて、自分がやる時の糧にしましょうという、実戦練習に入る前の基礎トレみたいなものですね。これを普段からちゃんとやっておくと、いざ本番になった時にいわゆる「引き出し」を多く持っている状態になり、有利にコトを進められる可能性が高まります。まあ、それがイコール成功に結び付かないところが新規事業の難しさ、面白さの一つだったりもしますが。
そして、ここからが今回の本題ですが、そんな大切な他者事例からの学びですが、一つだけ見極めに気をつけておきたいのが
そこで実際に採用されている成功者の戦略が成功の本質だとは限らない
ということです。
ここでひとつ、例え話をしましょう。ある小学校で沢山の生徒が体育館に集められています。壇上には校長先生(毎朝校門の前で生徒に「おはよう」と挨拶しています)が一人。そしてこう切り出します。「これからジャンケン大会をします!先生とジャンケンして勝った人と引き分けの人は立ったまま、残念ながら負けちゃった人は座って下さい。最後まで残ってた人は我が校のジャンケンチャンピオンです!」こうして始まったジャンケン大会、それなりに盛り上がり10回も繰り返せば誰かが優勝します。そこで壇上に上がった生徒に皆の前で校長先生はこう言います「Aさんが我が校のジャンケンチャンピオンです。おめでとう!今朝もAさんは朝気持ちの良い挨拶をしてくれました。もしかすると神様がどこかで見ていて、いざという時にご褒美で味方してくれたのかもしれませんね。」はい、ここでストップです。ここで出てくる事実は「Aさんは10回ジャンケンして負けなかった」と「Aさんは校長先生に気持ちの良い挨拶をした」です。では、気持ちの良い挨拶をすることがジャンケンの必勝法と呼べるかというと、教育的見解を別にすると残念ながら無関係です。ではこれを少し、本題に戻して大人(ブラック?)な例え話をもうひとつ。「校長先生」を投資家、「生徒」を起業家、「気持ちの良い挨拶」を「●●(アドテクでもビッグデータでもスマホでもお好きなバズワードを入れて下さい)に関する独自ノウハウ」に置き換えてみて下さい。投資家は最後にこう言いだします、「私どもが出資するこのA社は●●に関する独自ノウハウを有しており、それを競争源泉として奇跡の10連勝を目指し、また実現しました!そしてこのA社が今度上場します。皆さん一株どうです?」いやー、一気にキッタハッタ的になりましたね(笑)
もちろん、これはあくまで例えなので、本来ジャンケンとビジネスを同列にすべきではありません。ですが、新規事業に関していえば出たとこ勝負のジャンケン的な要素は常に付きまとうのもまた事実だと思います。例えば、一昨年、昨年大ヒットした新規事業と言えば、LINEは外せないと思いますが、それ程メジャーで情報に溢れているLINEが成功した要因を正確に分析するは可能でしょうか?「スタンプ?」「震災後の絆ブーム?」「旧livedoor由来の底力?」「ベッキーCM投入のタイミング?」「グローバル対応?」等々、よく見かけるだけでも沢山ありそうです。そこで、自分が新規事業を始める際の参考にしようとした時に、上述した見極めが重要になってくるわけです。LINEの成長要因を「震災後の絆」だとすると、読み物としては納得性が高いかもしれませんが、新規事業の参考にするのであれば、そこはきちんと噛み砕いてそれにリソースを乗っけても大丈夫なのかをシビアに見極めなくてはいけません。とはいえ、そうした洞察眼はよほどのビジネスセンスが無い限り、一朝一夕には身に付きません。結局のところは日々仕入れたビジネスネタを自分なりに噛み砕いて、時には周囲の人とブレストしてみてハラオチさせていく、因数分解の様な地道な作業が一番の近道だと信じて、今日も私の孤独なネットサーフィンが始まるのです。
三月の風と四月のにわか雨とが五月の花をもたらす。
西洋のことわざ