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釣りバカ日誌のハマちゃんに名刺管理は存在したのか?

»2013年5月13日
新規事業の罠

釣りバカ日誌のハマちゃんに名刺管理は存在したのか?

平野 健児

新卒でWeb広告代理店入社後、新規事業支援で独立。無料家計簿アプリ「ReceReco」、WebサイトM&A「SiteStock」等、多数の新規事業を立ち上げ、運営。

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 最近、帰ってきた堀江さんが「名刺は不要、日本は無駄が多いよ」と書いていたのと、誠ブログのお題が「名刺管理」だったので少しそれについて書いてみます。名刺と言えば、私には結構忘れられないシーンがあって、かの釣りバカ日誌の9とかだったと思うのですが、ハマちゃん(西田敏行)が佐々木課長(谷啓)に取引先の偉いさんが実はハマちゃんの釣りの弟子だと明かすシーンで、佐々木課長が「お前!それ本当か!俺なんてずーーっとご挨拶に伺い続けてようやく最近お名刺を頂戴したばかりだぞ」と驚愕しているシーンで、当時高校生だった私は「おー、名刺ってのは『お』を付けた上に『頂戴する』ものなのか、たかが紙なのにすげー。」と思ったものです。その後、社会人になり研修等で名刺交換についても一通り学ぶわけですが、その際も「名刺というものは言うなればその方の分身です、極力名刺入れの上に置かせて頂きましょう」と教えられ、「おー、ついに出たな、さすが『お名刺』だな!俺もついに釣りバカ日誌の会社員生活か。」と思ったものです。
 で、当時から10年以上経った現在の私の名刺観?及び名刺管理はというと正直今回の堀江さんの意見に近いです。連絡手段が電話と手紙しかなかった頃なら名刺は情報携帯ツールとして大変便利だったでしょうし、調達側も今程ネットでサクッと安価で注文することも難しかったでしょうが、現在の様にその場で携帯のメモリを見たり、スマホを使っていればメールボックスごと検索することが可能で、大学生でも持っていたり、Facebookの様な実名性SNSまで普及すれば、名刺の出番や価値はどうやっても減少します。もちろん、ビジネスマンがネクタイまでは外せてもジャケットはそうそう脱げないのと同様、名刺がすぐに無くなるとは思えませんし、またムキになって無くしても若干時間が短縮される程度のメリットしかないのであれば、とりあえずは商習慣に従う方が無難だと思います。
 なので、個人的には名刺は一応しきたりということでその場でぞんざいに扱ったり無くしたりしなければとりあえずOKという感じで、連絡する可能性がある人であれば早めにお礼メールを送って連絡先をメールボックスに保存したり、本当に今後個人的にも仲良くさせて頂きたければFacebookでも友達申請しています。それはある意味、釣りバカでいうところのハマちゃんが「お名刺」を大事にするよりも本人に気軽に連絡できる「親密さ」を大事にしたのと同じ方向性と言えるのかもしれません。
 ただ一方で、新規事業的な観点でもう少し今の時代を踏まえるとまた違った「名刺管理」も存在しています。例えば会社視点です。上記のやり方だとあくまで私がやり取りした人の情報は私に紐づいているため、他の人はアクセスできませんし、私がその会社を辞めてしまえばその貴重な窓口情報は会社には残りません。昔と違って終身雇用が前提で無くなった現在、それはリスクでもあります。まさに、Sansan社のリンクナレッジの様なサービスはそこを的確に突いていると言えます。また、Sansan社と言えば、個人向けに出しているEightもあります。こちらは今のところは、上記の今の時代の個人の名刺管理の必要性の壁を越えられているかというとまだそこまでは難しく、私も何かあった時のバックアップ用途で利用しています。ただ、Facebookとの連携や自分が入力しなくても相手が使っていれば自動で名刺を追加してくれる等の「育つ」という要素にはポテンシャルがあると思います。そしてそれはネットワークの経済性によって大きく使い勝手が変わってくるということを意味するはずですので、最近資金調達もされた同社が「データ化した名刺は新時代のビジネスプラットフォーム足りえるのか」という命題にどう挑まれるのか、新規事業に携わる者として今後、楽しみでもあります。
 と、こういうことを書き綴っていると、京都の映画館で釣りバカを見て笑っていた高校時代からずいぶん遠くに来た気がしますので、今晩は久しぶりにDVDでも引っ張りだして、今は亡き三国さんと谷啓さんの名演でも鑑賞したいと思います。

「どこかで会ったことがある?」「いや、ないわ」「そう、残念だ」
駅馬車