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少し前の話になってしまいますが、3月5日(土)の「7daysニュースキャスター(TBS)」で池上彰さんがチュニジアやエジプト、リビアなどの革命について解説していました。まさか池上さんが「Facebook革命」とか言わないよなあと思いながら見ていたんですが、さすが池上さん。そう、その通り!と口に出してしまうほど完璧な解説でした。
チュニジアの「ジャスミン革命」から始まったソーシャルメディア礼讃の革命報道ですが、僕は正直どうかなと思って見ています。TwitterやFacebookの良さに気付く人が増えるのは良いことです。でも、その良さはたくさんあるうちの一つであって、全てではないからです。
以前、Facebook country growth managerの児玉太郎さんが、日経トレンディのインタビューでFacebookは「インフラ」であると話していました。当たり前ですが、インフラは革命なんか起こしませんし、ジャンヌダルクのごとく「Follow me!」などと言ったりしません。。革命にFacebookが活用されたのは事実かもしれませんが、外野がその1点だけを切り取って、まるでそれが革命の全てだったと決め付けるのはとても危険なことであり、何より多くの血を流して目的を達成した人々に失礼です。
アラブ地域を中心に活動しているアメリカのライターJillian C. Yorkさんが「Not Twitter, Not WikiLeaks: A Human Revolution」という記事で、TwitterやFacebookがなくても、インターネットがなくても、「ジャスミン革命」は起こっただろうと書いています。実際、いくつかのブログを見でも、チュニジアでは国民の不満がいつ爆発してもおかしくない状況だったことがわかります。
・「カルタゴへ 世界史の中へ」(トイモイの公式日記 WORLD IS YOURS)
・「新しいチュニジアへ」(saraha-blog)
・『「砂漠に種を蒔く」ージャスミン革命がもたらす希望』(飛幡祐規 パリの窓から)
では、ソーシャルメディアは「ジャスミン革命」にとって意味のない存在だったのでしょうか。もちろん、そんなことはありません。前述のJillian C. YorkさんはTwitterでこう述べています。
「テクノユートピアになってはいけません。Twitterは情報を拡散させるのに役立ちましたが、この革命はオフラインで起こったのです(Don't get all techno-utopian. Twintter's great for spreading news, but this revolution happened offline.)」
Twitterが情報を拡散させたとある通り、革命の火がくすぶっていたとき、我々がその煙に気付くことができたのはTwitterやFacebookのお蔭でした。
・「facebookのチュニジア人の友達のプロフィール写真がほとんどチュニジア国旗になってコメントがあふれている。」
・「最近、喪章のついた血みどろのチュニジア国旗のアイコンをfacebookでよく見かけます。」
そして、ここで最初の池上さんの話に戻るわけですが、池上さんは「ジャスミン革命」が成功し、他の地域に飛び火した要因が「アルジャジーラ」にあると説明しました。僕も称えるならソーシャルメディアではなくアルジャジーラではないかと考えています。
アルジャジーラは、アラビア語と英語でニュースを24時間放送している衛星テレビ局。本社はカタール・ドーハにある。(Wikipedia)
エジプトはチュニジアからの流れがあったので、最初からその様子が各国のメディアを通じて世界に届けられていましたが、チュニジアの情報が世界に流れたのは12月17日の衝突から年が明けて、もう少し経ってからでした。日本人でも、気付いたらチュニジアという国が大変なことになっていて、気付いたら革命が起きていたという人が多いのではないでしょうか。このチュニジアの変化を最初から報道していたのがアルジャジーラでした。
アルジャジーラは、TwitterやFacebookを情報ソースとした報道を展開しました。これは画期的なことだったと思います。リアルタイムの、そして生の情報がマスメディアに集まり、何が正しいかが判断されて、世界に広がって行ったのです。同時に、この情報は当事者たちの元に戻り、盛り上がりを加速させました。ソーシャルメディアは、確かに活用されました。アルジャジーラの存在があったからです(※)。
いつか、どこかの国の権力者が作ったソーシャルネットワークのページに人々が集まり、抗議の書き込みで炎上し、政権幹部もそれに加わり、政府が転覆するようなことになれば、それこそが「ソーシャルメディア革命」と言えるでしょう。そんな未来が来るまでは、「ソーシャルメディア」がインフラとして人々に根付き、すくすく元気に育つのを見守っていたいなあと思っています。
※アルジャジーラを無条件に絶賛しているわけではありません。念のため。
・アル・ジャジーラのプロパガンダに注意(カレイドスコープ )