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マイ月経営【一次選考通過作品】
「誠 ビジネスショートショート大賞」事務局通信
マイ月経営【一次選考通過作品】
ビジネスをテーマとした短編小説のコンテスト「第1回 誠 ビジネスショートショート大賞」(Business Media 誠主催)。ここではコンテストに関するお知らせや、一次選考を通過した作品を順次掲載していきます。
イ(インタビュアー):この度は「マイ月経営」がビジネス部門売上第一位となりました、おめでとうございます。
サ:ありがとうございます。
イ:販売部数の目標とか有りましたらお聞かせ下さい。
サ:そうですね、一時期流行った、外国人の経営本は抜きたいですね。あれは学者が経営者にインタビューして書いたものでしょ。学者の勝手な解釈ばっかりで、とても現実に落とせるとは思えない。私は身を持って体験してきた事を書いています。机上の空論に酔っている人に負けたくはないです。
イ:ご自身の本が売れた要因はなんだと思われますか。
サ:実体験であるからこそ読者に親近感が与え、自分の仕事に落としやすいんだと思います。内容は日常生活の中に経営を取り入れていくドタバタコメディですからね。経営手法が、覚えたてのギャグとか手品みたいに明日から使えます。明日やってみたくなる経営手法、それがこの本のテーマですから。
イ:この本も経営手法が生かされたのでしょうか。
サ:この本こそが経営のノウハウの塊と言っても良いです。この本も、読んで面白い娯楽性と、経営の教科書としての役割、手品の本みたく初めての人が読んでも直ぐに出来るようなものをと、三つの側面を意識して書きました。
経営書は読みにくい。それを元に読みやすくした物語がヒットしましたが、面白いだけで身につかない。この本は経営の真髄が、面白く、やり易く、しっかり身に付くようにと書きました。
イ:マーケティング戦略を行なってから書かれたのでしょうか。
サ:よくマーケティングで女子高生の欲しい物を作ったりしますが、そんなものは売れません。女子高生は気づくのが早いだけです。珍しいものに飛びつくのが早い。実際には、物や人の価値なんか分かりはしないのです。ましてや商品開発能力なんてまるでない。女子高生の高感度センサーが捉えたものを、丹念に精錬し、価値の分かる人が唸るようなものにしてようやく売れる物ができます。サービスもですが。
人間は欲深い生き物です。「ほしい」「したい」「いきたい」のです。だから、物珍しさで惹きつけて、一度体験すると病みつきになるくらいの、奥深さがないとリピーターはつきません。
この本はマーケティング戦略よりも、良い作品、良い商品になるように重点を起きました。
時代の流れ、必要とされているものは何かと感じるのは皮膚感覚に頼っています。
イ:他のビジネス本や経営書はどのように思われますか。
サ:ほとんど嘘とは言わないですが、役に立たないです。
経営学には需要曲線とかあります。安いものには多くの需要があり、高いものには需要がないというやつですが、今はそういう時代じゃないですよね。安くてもそこそこ良い物があるし、高機能だって一年経てば過去のもの。そもそも、需要そのものが無いんです。満たされた社会と言ってもいい。
では、どうやって需要を掘り起こすかというと一つの物に二つ以上の価値を与えてること、付加価値です。絵画だって価値が上がるのは、素晴らしい絵に、投機商品という価値がつくから高くなるんです。
携帯電話はいくつもの価値が結びついてます、電話、メール、インターネット、カメラ、音楽プレーヤー、テレビ、財布などなど。ただ、身近な生活という近い範囲で括られています。
これからはダイナミックな付加価値の融合が、売れる物のカギになると思います。身近なところで言えば、装飾品に愛という観念を結びつけた婚約指輪。装飾品と婚約指輪では意味が全然違いますよね。そういった別の分野との融合が加速すると思います。
満たされていなかった時代の経済学を古代経済学として、満たされた社会での経済学を新経済学として分けて考えたほうがいいと思います。
イ:この本では日常を書かれていますが、逆に今の日本社会の問題点を経営の視点で見るといかがでしょうか。
サ:間違った民主主義が浸透しているのが一番の問題だと思います。
A案、B案に別れた場合、対立するでしょ。数の論理で少数派を黙らせるのがこの国の民主主義になっちゃってる。A案とB案があったら、頭を使ってA案もB案も含むC案を考えましょうというのが本来の民主主義だと思います。
「俺達は数が多いから偉い、だから他のやつは黙ってろ」じゃ、絶対君主制と変わらないと思います。ああいうの見ていると、人間の尊厳を貶めていると感じます。
人間は頭が良いし欲張りだからA案もB案も含むC案を作る方が良いです。会議でも話し合いでも、もっと頭を使おう。
イ:では、日常生活で一番心掛けていることは何でしょうか。
サ:改善意識です。日常生活から改善を心がけています。言葉だって無駄が多くなると内容が伝わりにくい。動作も無駄が多いと品がなくなります。一挙手一投足まで改善意識をするように心掛けています。
イ:たくさんの失敗例も載ってますが、失敗した時どうやって立ち直ってきたんでしょうか。
サ:例えば新聞の折込チラシでお客から問い合わせがあるのは0.2%と言われています。であれば、一日100回失敗すれば10日で二人捕まえられる計算です。できるだけ早く998回失敗することです。一発必中なんて、まず有り得ません。
「質より量」「量より質」と言いますが、両方共、間違っていると思います。成功しないのは質が低いからです。質を高めるにはある程度の失敗例が集まらないと改善できません。いかに質の高い失敗を短時間に数多くこなせるかがキーになると思います。
「今の失敗は質が低かったからだ、もっと質を高くしてどんどんやって行こう」と、いつも思っています。
イ:最後に、あなたを目指す後輩たちに一言お願いします。
サ:お金を貰えれば、アンタじゃなくてもいいという商売が未だに主流です。もう、需要がある時代じゃない。オーダーメイドで作り上げる「あなたの為に」という商売じゃないと、お客さんは来てくれません。
一人ひとりをよく見てあげてください。私を見てもらえる、自分の意見が届くと思ってこそ、親しみが湧きます。
でも、近づきすぎてはダメです。友達だと思われたら、お金を払ってもらえなくなります。
イ:ヒモ生活を綴った、自叙伝「マイ月経営(げっけいのいとなみ)」の作者、サァ乙女・股シャブロウさんでした。ありがとうございました。
サ:ありがとうございました。
(投稿者:早乙女又三郎)
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【事務局より】「第1回 誠 ビジネスショートショート大賞」の一次選考通過作品を原文のまま掲載しています。大賞や各審査員賞の発表は2012年10月17日のビジネステレビ誠で行いました。