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社会科学とネコ耳女【一次選考通過作品】

社会科学とネコ耳女【一次選考通過作品】

「誠 ビジネスショートショート大賞」事務局

ビジネスをテーマとした短編小説のコンテスト「第1回 誠 ビジネスショートショート大賞」(Business Media 誠主催)。ここではコンテストに関するお知らせや、一次選考を通過した作品を順次掲載していきます。


 ベッドの中で王様のブランチに出ているモデルたちを眺めていたらインターフォンの音がした。

 

 Amazonで何か買った覚えもないしどうせNHKの集金か何かだろう。この部屋に訪ねてくる人がいる可能性なんかは最初から全く考える必要がない。そう思って無視していたがやたらとしつこく鳴り続ける。

 

 NHKじゃなくて宗教の勧誘だろうか。いったいどんな顔したバカが俺みたいなやつに神様を信じさせようとしたのかと思って一応インターフォンの画面を覗きこんでみた。

 

 そこにいたのはネコ耳のカチューシャをつけたハーフ顔の美女。それはもう王様のブランチなんか霞むほどの。デリヘルにしては雰囲気に品があるし、なぜこの人が自分の家のインターフォンを鳴らしたのか全く意味がわからない。

 

 「...はい?」

 

 興味がわいて恐る恐る受話器をとる。

 

 「あら良かった。野木さんのお宅ですよね?上がってもよいですか?」

 

 「え?あー...なんで自分の名前を?」

 

 「まあまあ、詳しい話はお部屋でさせて頂けます?」
 

 「はぁ」

 

 オートロックをあけて数分の間に最低限の部屋の片付けをすると、ドアが開いて彼女が入ってきた。インターフォンの白黒画面ではわからなかったが、ネコ耳も、ワンピースも、そして瞳の色も快晴の空のような色。ネコ耳をつけているのにコスプレのような安っぽさがなく、日本人離れした外見なのにその自然な笑顔は俺みたいなものですら話しかけるのをためらわせることがない。

 

 「あの...何の要件ですか?」

 

 「あら、2000年前後に生きる日本人に青いネコ型の何かを見せたらすぐに意図が伝わるって伺ってきたけど。」

 

 「はぁ、まあ、青いネコ型っつったら確かに一つしか思い浮かばないですけど」

 

 「要するにそういうこと。私はあなたを幸せにしに来たの」

 

 「未来からですか?」

 

 「それは内緒にしないといけないルールなの」

 

 「はあ...」

 

 「で、何か願い事とかない?たいていのことは叶えてあげられるけど」

 

 やべーこの外人女たぶん頭おかしい。俺の心はは厄介な問題に巻き込まれないうちにとっとと帰ってもらった方がいいという結論に傾きつつあった。

 

 「じゃあ空を自由に飛ばせてもらったりとか、できるんですか?」

 

 「ええ、もちろんよ。最初に頂くお題としていくつか想定していたものの一つだわ」

 

 「は?」

 

 無理難題をふっかけたつもりなのにどういうことだろうか。

 

 「空を飛ばせた後はどうせ金持ちにしてくれ、とか言うんでしょ?それももちろん用意してあるから一応通帳とハンコだけ持ってきといて。ほら、運動しやすい服に着替えてくる!」

 

 「え?なんか未来の道具とか使うんじゃないんですか?」

 

 戸惑う俺をネコ耳女は少しイライラした様子でせかせる。

 

 「当たり前でしょ?もし私が未来人だったらタイムパラドックスやら何やらでそんなもの気軽に出せるわけないじゃない。外に車を待たせてあるからさっさと準備して」

 

 「車?空飛ぶのに?」

 

 「あーめんどくさい」

 

 そう言うと彼女は手に持っていた白いハンドバッグからいきなりスタンガンを取り出し、自分の脇腹に押し付けた。

 

 薄れゆく意識に浮かんだことは、ただただ「斬新な強盗かな」というバカな感想だった。

 

 次に目が覚めかけたのはエンジンの爆音のせいだった。

 

 今時暴走族でも鳴らさないような騒音。体中に感じる強い風。そして背中に感じる柔らかくて暖かい感触。目の焦点があって周りを見回すと自分がどこかの河原にいることもわかった。

 

 「あら!気がついたの!」
 

 騒音に負けないよう張り上げる女の声が耳元に聞こえる。それがさっきの頭のおかしいネコ耳女の声であることに気づくまでに数秒の時間がかかった。

 

 「何なんだよ!これ!」
 

 「聞こえない!いいから力抜いておいて!」

 

 女がそう言うと一際強い風が吹き抜け、自分の足が宙に浮く。エレベーターが上昇するときのような股間がふわっとする感覚とともに自分の視界がみるみる地上から引き上げられた。
 

 「ほら!飛んでるでしょ!?どっちに行きたいか言ってみなさいよ!あなたは自由よ!」

 

 女は相変わらず爆音に負けないよう声を張り上げる。
 

 「全然飛んでる感じしねーよ!宙吊りにしてるだけじゃねーのか?」

 

 そう言って女の方を振り返る。気がついてみると自分や女の体中にはワイヤーが繋がっているし、身体感覚としても空中に持ち上げられている感じしかしない。
 

 「違う違う!モーターパラグライダー!上見てよ!」

 

 「ああ!?」
 

 確かに上を見るとパラシュートのようなものがある。そしてご丁寧にネコ耳のついたヘルメットをかぶった女の背中には騒音の元凶となっているバカデカい扇風機のようなものが背負われていて、そこからの強風をパラシュートが受けて飛んでいるらしい。

 

 「それにこの高さまで宙吊りとかムリじゃない!?」
 

 視界はいつの間にか、ちょっとしたビルの屋上くらいまで上昇していた。

 

 女は高度に満足したのかエンジンを切り、右へ左へ悠々と旋回しはじめる。
 

 「パラグライダーで空飛べるとか当たり前じゃねーか」

 

 爆音から開放された俺はようやく少しだけ落ち着きを取り戻し、女に苦情を言う。

 

 「あら?これは空を自由に飛ぶというのとは違うの?ほら、右のワイヤーを引っ張ってみて」

 

 言われた通り右のワイヤーを引っ張るとパラグライダーは右へ旋回する。

 

 「このモーターだってね、1990年に実用化されるまではこの世に存在していなかったし、その後20年も改良を重ねなければあなたを乗せて気軽に飛んだりはできなかったはずよ。これはあなたが子供の頃から見て『未来の道具』ではないのかしら?きっとあなたが漫画で見てきた『空を飛ぶ道具』だって実際使ってみたら宙づりにされている感覚しかないんじゃなくて?」

 

 「それは...」

 

 確かに今の自分の状態と照らし合わせてみると、空を飛んでいる時の自分の身体感覚なんて想像もしていなかったが、頭にプロペラをつけても、背中に翼やロケットをつけても、そういう感じなのかもしれない。

 

 「私が未来人かどうかなんてどうでもいいわ。なぜならあなたの願いを叶える『未来の道具』はとっくに出揃ってるんだもの」

 

 「いやいや、それはウソだろ。じゃあなんで俺はいつまで経っても金がなくて、仕事ができなくて、彼女が出来ないんだよ」

 

 「あなたが道具を使ってないだけよ。いいわ、下に降りてあなたをお金持ちにする道具を見せてあげる」

 

 そう言うと猫耳女は両方のワイヤーを引っ張り、静かに地上へ降下した。

 

 着地地点にはキャンプ用の簡素なテーブルとホワイトボードが置かれていた。ネコ耳女がパラグライダー用のスーツを脱いでジーンズとTシャツというラフな姿になると、ペンをとってホワイトボードに向かう。

 

 「さて失礼とは思ったけどあなたが気絶している間に通帳は見せてもらったわ。予想通り全く貯金は出来ていないのね」

 

 「大きなお世話だ」

 

 「もちろん気にすることはないわ。これから解決すべき課題を明らかにするってだけの話。あなたのお給料は手取りにして17万円、それと3か月に一回通勤のための定期代が支給されてる。家賃が5万6千円、水道光熱費通信費と合わせても毎月固定費は全部でせいぜい7万円。ここまではいいかしら?」

 

 「ああ、そんなとこだろうな」

 

 ネコ耳女の言い方にイラっとしたが事実として間違いではない。

 

 「問題は残り10万円を何に使っているかってこと」
 

 「そりゃあ飯食ったりしてるんだろ」

 

 「OK、あなたの昼食代は基本的に会社に売りに来ているお弁当屋さんか近所の牛丼屋さんに使われている。平均して500円ぐらいかしら?出勤日数が20日として1万円ね。それにあなた一応自炊してるんでしょ?財布のレシートから判断するに毎週平均5千円ほど食材とお酒を買い出ししてるから合計2万円。残りの7万円は?」
 

 ネコ耳女は次々にホワイトボードへ金額を記入していく。

 

 「そりゃあ飲み会に使ったり...」
 

 「たいして付き合いのある友達もいないのに?」

 

 「職場の飲み会だってあるしたまには昔の友達と会うし、毎月1回ぐらいはいくだろう」

 

 「そうね。一回あたりいくら?」

 

 「そりゃあ二次会とか三次会とか行ってたら1万円ぐらい...」

 

 「あなた二次会参加して何かこれまで得たものあるの?それとも職場の雰囲気的に全員強制参加の流れなの?」

 

 「いや...それは...」

 

 ムカつくが確かにこの女の言う通りだ。一次会で帰る人がいても、二次会で何話した覚えもなく翌日二日酔いで寝ているだけの結果になったとしても、ただなんとなく自分は先に帰ることができない。

 

 「まあでもこれ以上友達づきあいなくすわけにもいかないでしょうから月一万円ぐらいはよしとしましょう。残り6万円は何に使っているの?」
 

 「そりゃあ、趣味とか...」

 

 「趣味!?毎日テレビ見てコンビニで雑誌を立ち読みして、ケータイでまとめサイト読んだりするぐらいしかすることがないのにお金がかかるの?」
 

 「いや、でもたまに本だって読むし...」

 

 「買ってきたまま枕元に積むことは読むとは言わないわ。仮にそうだったとしても毎月一冊も本を買うわけじゃないでしょ?」
 

 「いや、あとはコンビニでコーヒー買ったり...」

 

 「そうなの。財布の中に突っ込まれたレシート見る限りあなた無駄遣いしすぎよ。毎日何回も数百円ずつ買い物してるじゃない。そんなにお菓子がないと生きていけないの?」

 

 「いや...別に...そういうわけじゃ...」

 

 「お菓子が食べたいなら食べたいでスーパーでお徳用のやつのまとめ買いでもすればいいじゃない」
 

 「いやでもお菓子はともかくコーヒー飲まないと頭が働かないっていうか...」

 

 「なるほど、じゃあそんなあなたには一つめの未来の道具。紙のフィルターなしでコーヒーが入れられる魔法のコーヒードリッパーといつまでも温度がキープできる魔法の水筒をプレゼントしてあげましょう。あ、コーヒー豆ぐらいは自分で買ってね」
 

 ネコ耳女が白いハンドバッグから取り出したのは東急ハンズの紙袋だ。開けると中には確かに彼女の言う『未来の道具』が入っていた。

 

 「...ただの便利コーヒーグッズと魔法瓶だよな?」

 

 「ええ、でもあなたがコーヒーを飲むために一日何度もコンビニやスターバックスによる習慣を改めれば、たいして食べたくもないお菓子に使うお金だって節約できて貯まるはずじゃない?

 

 「そうだけど...」

 

 「そして通帳を見ると私面白いことに気付いたの。あなた給料日の前と後でお金の下ろし方がずいぶん違うじゃない」

 

 「いや、そりゃそうだろ。給料日前とか金ないし...」
 

 「お金がなければコーヒーだって我慢できるんでしょ?」

 

 「え?ああ、まあそう言われてみれば...」

 

 「そうなのよ!21世紀初頭の人類は既に何のストレスもなくお金を貯めるやり方を知っているはずなの!」

 

 「は?」

 

 いきなりあがったネコ耳女のテンションに自分は少し驚いた。

 

 「実はこの時代のアメリカではね、あなたみたいにお金を貯められない労働者はずいぶんと問題になってるの。日本と違って国の強制的な年金のシステムなんてないし、貧富の格差も開いているし。でも経済学者のリチャード・セイラーたちによればごく簡単なやり方で、何のストレスもなくお金を蓄える方法が既に存在しているの」

 

 「そんな方法あるのか?」

 

 「ええ、本当に簡単。まず強制的に、生活費に困らない程度の金額で毎月積み立てを行うの。もちろんこの積立てはいつ解約しても構わないわ。それと、昇給する度にその半分とか1/3とかの一定割合で積み立て額に加えていくの。これだけ」
 

 「は?そんなのすぐ金に困って解約して終わりじゃないの?」

 

 「いいえ、あなたはさっき言ったはずよ。お金がなければなかったで我慢するって。それに多少節約するのがしんどかったからってわざわざ銀行で手続きして、積立てられたお金を崩したいとは思うかしら?」

 

 自分がそういう状況に置かれたら、と考えてみる。確かに銀行で手続きするのとかめんどくさいし、せっかく貯まった貯金を崩すぐらいならコーヒーやお菓子ぐらい我慢したいと思うかもしれない。

 

 「...いや...めんどくさいから我慢しそう...」

 

 「でしょ?きっと我慢しているうちに使いたいとさえ思わなくなるかもよ。セイラーによればこのシステムが導入された会社では、従業員から全く何の苦情もなく彼らの貯蓄率を4倍にできたそうだし」
 

 「そうか...」

 

 確かに言われてみると、この方法ならお金が貯まりそうな気がする。
 

 「そこであなたに用意したもう一つの『未来の道具』が積立式投資信託の申込書。今話した感じだと毎月5万5千円ぐらいは楽勝な気がしない?食費と合わせて4万5千円は使っていいんだから、最悪どうとでもやり繰りできそうだと思うんだけど」

 

 「お、おお、なんか出来る気がする」
 

 「それと、あなたの会社、このご時世に毎年二回ちゃんとボーナス出してるけど、そこからお給料の一か月分ずつぐらい貯められそうな気がしない?」

 

 「えーと、うん、言われてみれば確かにボーナス後って普段にもまして無駄遣いしてる気がするし、大丈夫かもしれない」
 

 「じゃあ最後に計算してみましょう。あなたは毎月5万5千円ずつ強制的に積み立てる。そして年に二回、ボーナスが入ったら速やかに月給分17万円をその口座に振り込む。さてあなたが毎年貯金できる金額はいくらかしら?」

 

 そう言うと彼女は数学教師のような顔で俺にペンを渡し、ホワイトボードの前へ行けと視線で促す。
 

 5.5万円×12は66万円、それと17万円×2で34万円、合わせて...。

 

 「百万円!?」
 

 「そう。あなたは今、毎年百万円分無駄遣いをしていて、少しやり方を変えるだけでそれだけの貯金ができるの」

 

 「すごいなぁ...百万円か...」
 

 百万円なんて数字、宝くじにでも当たらなければ手にできないと思っていた。

 

 「でもそれだけじゃないわ。あなたはこの百万円を運用するの。日本と、欧米と、新興国の3つのインデックスファンドにリスクヘッジしてね。投資については今後もお勉強してもらうとして、参考までに私が選んだやり方だとこの数年世界経済がたいへんだった時期にも関わらず年間5%ぐらいは利益も出せていたわ」
 

 「5%?じゃあ来年にはこれが105万円になってるっていうこと?」

 

 「そう。そして再来年にも100万円貯めるとして合計205万円。その次の年にはさらにこれが1.05倍になって215万2,500円。もちろんあなたが昇給したら積み立て額だって増えるでしょうけど、そうじゃなかったとしてもあなたが定年退職する36年後にはいくら貯まっていると思う?」

 

 「えーと...」

 

 ホワイトボード上であたふたと計算しようとすると、彼女はハンドバッグからノートパソコンを取り出してエクセルを開いた。
 

 「いい?Aの列には毎年の積立額である百万という数値を入れる。Bの列には『一つ上のセル×1.05+一つ左のセル』という数式を入れる。前半がこれまでに貯まったお金に利子をつけて、また一年分の積立額を合計して、っていう意味ね」

 

 「ああ、わかった」
 

 ネコ耳女は入力した2つのセルをコピーし、36行分に貼り付けた。

 

 最後の行に現れた「100,628,139」という数字の並びを見てもピンと来ない俺は阿呆のように一、十、百、千、万...と指を指して数える。

 

 「...一億!」

 

 「そうよ。あなたは無駄遣いをしないだけで一億円を貯めることができるの。もちろん、ライフステージの変化によってはここからマンションを買って家賃を節約することもできるでしょうし、子供の学費に使うことだってあるかもしれない。この5%の運用益だって絶対に保証できる数字ではないけど」

 

 「...いや、それにしても一億円?」

 

 百万円ならいざ知らず、一億円なんて宝くじとプロ野球選手の年棒ぐらいでしかイメージできない数字だ。
 

 「ええ。あなたはそれだけのチャンスがあるの。毎日寝る前自分で魔法瓶にコーヒーを入れるだけでね」

 

 「すげえ!」
 

 「ええ、21世紀の初頭の時点で既に、人類は個人で気軽に空を飛ぶ技術を確立しているだけでなく、ストレスなくお金を貯めるシンプルな方法も、それを年間数パーセント程度増やす方法も、科学的な研究を通して明らかにしているの」

 

 「科学?貯金や投資の仕方も科学なの?」
 

 「ええ、社会科学だって立派な科学よ。今この瞬間にも世界中の学者たちは人の行動や社会の動きをきちんと統計学的に立証しようとしているの」

 

 「そうなんだ」
 

 「そう、あなたたちが言うSFみたいな魔法の道具に頼らなくても、既に人間のほとんどの悩みは解決できるはずなの」

 

 「じゃあ、俺が仕事できないとか、出世できないとか、彼女ができないとかも?」
 

 「ええ、全部が全部じゃないけど、大きなヒントになる研究成果はこの時点でもいくらでも公表されてるわ」

 

 「すげえ!マジか!早く教えてくれよ!」

 

 「そうね...でもその前に...」

 

 「何?なにか準備が必要なの?」

 

 「いいえ、せっかくだから今日はしばらくこの空を楽しみましょうよ。せっかく私も練習してきたのに、まだ30分も飛んでないのよ」

 

 ネコ耳女は少し恥ずかしそうにそう言って下ろしたモーターパラグライダーを指さす。
 

 「あはは、そうだな。また俺も乗せてくれるの?」

 

 俺は初めて見たネコ耳女の人間くささについ笑ってしまった。
 

 「ええ、それがあなたの願いならね」

 

 ネコ耳女は取り繕うようにすました顔をすると、興奮を隠し切れない様子で置いてあったパラグライダーへ向けて駆け出した。

 

(投稿者:ヒロモトミツノリ)

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【事務局より】「第1回 誠 ビジネスショートショート大賞」の一次選考通過作品を原文のまま掲載しています。大賞や各審査員賞の発表は2012年10月17日のビジネステレビ誠で行いました。