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差別体験を考える~オバマ大統領とミシェル夫人のインタビュー

差別体験を考える~オバマ大統領とミシェル夫人のインタビュー

マツムラ ユキ

仕事、家庭、子育てに自分育て。はた、と気がつけば海外生活20年。マルチカルチュラルな環境で、自転車操業的な毎日を送るワーママ。


アメリカミズーリ州ファーガソンのマイケル・ブラウンさん、ニューヨークのエリック・ガーナーさんなどの相次ぐ死亡事件、それに続く大陪審による白人警官不起訴処分。アメリカで鳴りを潜めていた人種間問題に火がついた2014年だった。

オバマ大統領とミシェル夫人のインタビューが、アメリカの娯楽雑誌「People」に載った。人種差別に関する自身の体験を語っている。オバマファミリーがホワイトハウスに住んで6年。ミシェル夫人によると、それ以前のオバマ大統領は、シカゴのサウスサイドに暮らすひとりの黒人であり、他の大勢の黒人同様、タクシーをつかまえるのにも苦労していた、という。黒人に対する露骨な乗車拒否がいまだにはびこっている悲しい事実がそこにある。

タキシード着用のフォーマルなディナーで、オバマ大統領が「コーヒーを持ってきてくれ」と頼まれたこともあったという。オバマ大統領のようなエリートでさえ、このような扱いを受けるのだから、ノンエリート黒人たちに対する扱いは、容易に想像できる。

私が住むバンクーバーは、中国人をはじめとするアジア人の多さで知られている。そのなかでも勤勉・真面目・責任感の強さなどで評判のよい日本人として暮らしている私は、他の人種と比べて差別されることは少ない。それでも、有色人種というマイノリティー(少数派)グループに属するゆえの差別は経験している。自分の英語を馬鹿にされたことは何度もある。

名が知れたホテルのフロントに勤めていた時のこと。英語で応対しているのに「英語を話せる人間をだしてくれ」と、言われたことがある。その頃の自分の拙いしゃべりを考えると、相手の気持ちもわからなくはないが、緊急でも重要でもない用件だったのにも関わらず、アクセントがあるだけで相手にされなかった。

専門学校のスタッフランチの場で。クイズでみんなが盛りあがり、私も積極的に参加していた。そこでスタッフの一人がこう言った。「今度は、Yukiが何言ってるのかみんなで当てようぜ~」。私の英語を、思いっきりちゃかしたわけだ。笑いものにされ、これには傷ついた。その学校の生徒の8割は留学生であり、高い授業料を納める留学生でもっているような学校だったのに、経営陣のESLの人間に対する本音に、かなり失望した。

それなりに英語のレベルもあがってきたここ数年でも、こんな経験をした。ある学生が私の書き英語、話し英語をこき下ろしたメールを友達にあてて書いた。こともあろうに、彼女はそれを私に送ってしまったのだ。痛恨のミス(?!)というヤツである。「ご指摘ありがとう」という私の返信に平身低頭した彼女だが、担当教授からはたっぷりお説教をくらった。周りにすすめれてチクったのはもちろん私だが、仕返ししたかった訳ではなく(そんなに暇じゃない)、彼女の将来を思ってのことだった。

在日、同性愛者、障害者など、マイノリティーに対する差別は日本にも存在する。だが、大多数に属している限り、差別された経験を持つ人はそんなに多くはないのではないだろうか。『自分がマイノリティーな存在になってはじめてわかること』が、たくさんある。

それでは皆様、ごきげんよう。