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今回はCSR(企業の社会的責任)の考え方の中でも、
ソーシャル・マーケティング(社会貢献型マーケティング)について、
考えてみましょう。
まず、マーケティングとは何でしょうか。ドラッカー氏がマーケティングの定義を確定させたとも言われていますが、彼によると「セリングをなくすこと」がマーケティングの定義だそうです。つまり、「買わないことを選択できる第三者に、喜んで自らの購買力と交換してくれるものを提供する活動」であり、こちらから売りに行かなくても買ってくれることです。また、「マーケティングの狙いは、顧客というものをよく知って理解し、製品が顧客にぴったりと合って、ひとりでに売れてしまうようにすること」とも言っています。
東日本大震災以前の2007年ごろから「ソーシャル・マーケティング」が大きく注目され始めていますが、ちょっと考察してみましょう。
CSR視点のマーケティングのポイントは
1、コーズマーケティング
2、エシカル
3、信頼度
です。順を追って解説していきます。
‖ コーズマーケティング
では、CSR視点におけるマーケティングとは何でしょうか。最近では「コーズマーケティング(コーズ・リレーテッド・マーケティング)」が挙げられます。コーズマーケティングとは、寄付付き商品・サービスのマーケティング戦略です。社会問題に自社のブランド・サービスを関連づけてキャンペーンを行い、経済的・人的に支援することで、結果として営業利益を上げるマーケティング活動として、注目を集めています。
企業の提供する価値や理念、フィロソフィーを再確認するという根本的なところから始まり、その企業の固有性を持ったCSRマーケティングを構築することが大切です。自社以外の誰でもできることを実践しても、消費者は振り向いてくれないでしょう。ちょっと乱暴な言い方ですが、オリジナリティのない企業はそもそも社会からなくなっても多くの人は困りません。類似のサービスが他でもあるからです。
特に東日本大震災以降、様々な調査で企業のCSR的側面に注目が集まっています。ヤマト運輸、ユニクロなどはコミュニケーションもうまく、ブランドイメージを格段にあげました。NTTレゾナントの調査では、震災前より3割以上の人が、「企業の社会貢献事業」を重視し始めたなんて結果も出しています。日本企業のすぐそこに、"ニーズ"があるんですね。
例えば、ボルビックが「1l for 10l」キャンペーン(日本で1リットルの水を買うと、アフリカに10リットルの水が提供され、水問題に苦しむ人々を救うことができるという内容)で売上げを拡大させました。最近はうまく結果につながっていないようですが、続けることも意義あることとし、今年もキャンペーンをしています。露出が震災への配慮のためか若干減っている気もしますけど。
東日本大震災以降、アパレル業界はチャリティTシャツということで、売上げの一部または全額を義援金にまわすという方法論をとり、数千万から数億の売上げを上げた有名人、企業もいたようです。BtoC事業が多く、BtoBの動きでは一部留まっているようです。上記の例は一部の事例ですが、環境活動へのコミットメントも含め、企業のCSRの取り組み・マーケティングが非常に重要なポジションにきていることは確かなようです。
‖ エシカル
エシカルとは、倫理的な、という意味です。現在では「エシカル=環境保全や社会貢献」という意味合いだと思って下さい。震災による被災地の商品を買って応援しよう!という、応援消費もエシカル消費の一部です。アパレル・ジュエリー・日用品などの直接消費材に多いようです。あまり、BtoBでエシカルというのは聞きません。BtoCの社会貢献型マーケティング用語として、ロハスと同じようなポジションのようです。
「エコ」や「グリーン」などの単語は、環境への配慮を表すことができますが、社会問題全体を扱うことはできない。できたとしてもごく一部。また「ロハス」の場合も、社会問題全般を扱うにはやや範囲が狭い。ライフスタイルの総称でもありますし。個人に使う場合が多く、BtoCマーケティングで使われるようです。エシカルは、これらの言葉がカバーできなかった社会問題や社会的責任、を一言で言い表せる。かなり範囲の広い考え方。マーケティング的には、使い勝手が良いということでしょうか。
エシカルなどの、CSR視点からのマーケティングは、海外(特に欧米)だけでなく、日本でも徐々に広がりを見せています。ソーシャル・マーケティングの一つとして、マーケター・プランナーは一度調べておく事をおすすめします。
‖ 信頼度
立教大学経営学部准教授の高岡美佳氏が面白い例え話をしているので、引用させていただく。
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匿名の出品者が発信する商品情報(文章や画像)のみを見て、多くの人が購入(行動)するのは、商品の品質・価格などの属性情報がしっかりと伝わっているだけでなく、その匿名の出品者名の後ろに載っている取引回数を、信頼情報として受け止めているからである。つまり、後者について、CSR活動に置き換えてみると、環境に配慮した製品であるという情報の発信者が正しいことを述べている、という信頼情報が消費者に届いていないから、「本当に環境に良いものかどうか、信用できない」「企業の活動内容が見えない」という評価で終わってしまっているのである。
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ここは、ソーシャル・コミュニケーション、ブランディングと関係してきますが、信頼のできないCSR活動ほど意味のないものはないと考えています。ステークホルダー(関係者)とコミュニケーションが成立していないと言いますか、一方的な関わり方では、信頼をもらい購買につなげることは難しいでしょう。
マーケティング・コミュニケーション戦略を考えるときも同じ事。ただ一方的に「社会にイイものですよ!」と言っても響かない。逆に、ミッションとストーリーがあれば、共感を引き出し、消費者も企業も自社に引き込むことができる。このあたりの詳細は、ポーター氏の「戦略的CSR」や、コトラー氏の「社会的責任のマーケティング」を参考にしていただきたい。CSR活動を単なるチャリティーというポジションから、企業理念の具現化というポジションまで昇華できたら、CSR的マーケティングは半分成功したと言えるかもしれませんね。
いかがでしたでしょうか?
CSR視点のマーケティングのポイントは、コーズマーケティング、エシカル、信頼度の3つと言いましたが、実は他にも大事な要素がたくさんあります。上辺だけなぞって、プロモーションするのではなく、企業のストーリーエッセンスを表現することも大切です。
社会貢献して、自社も儲かりながら、社会にも良い影響を与えるマーケティング。どの企業も気付き・考え・実践することができたら、世の中もっとハッピーになりますね。皆さんも「儲かるCSR」を実践していきましょう!
安藤光展
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