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CSRというブランドプロモーション

»2011年9月 5日
CSR幸福論

CSRというブランドプロモーション

安藤 光展

CSRコンサルタント、ブロガー。著書『この数字で世界経済のことが10倍わかる - 経済のモノサシと社会のモノサシ』(技術評論社)ほか。

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‖ CSRというブランドプロモーション
「CSRは単なるPRではなく、ビジネスにおける戦略そのものである」


企業の戦略論の大家M.ポーター氏が、2006年[戦略と社会:競争優位とCSRのつながりについて]を発表。2006年度マッキンゼー賞。著者は、前作の邦題「競争優位のフィランソロピー:社会貢献コストは戦略的投資である」を共著したクラマー氏。この中での発言です。


このころにも彼は、実践的な活動や競争の文脈において、シェアード・バリュー(社会とともに価値を分け合う方法)が重要だとも説いています。昨年発表のCSV(クリエイティング・シェアード・バリュー、共通価値の創造)論文でさらに細かく解説しています。
こんな状況もありまして、CSRはPRや慈善事業ではなく、経営戦略なんだとしています。ただ、よくわからない。経営戦略そのものが何か漠然としている単語ですからね。現実的な考え方として、僕が提唱したいのは、CSRは経営戦略であり、「ブランドプロモーション」ではないか、ということです。



‖ ブランドプロモーションとは?
ブランドプロモーションとは、ファン作りのためのプロモーションのこと。


ファン作りと言っても、手法はたくさんあるし、そもそも「ブランド」という単語が理解を阻害する要因。範囲が広いし、手法もたくさんあるし、拡張性が高い単語。でも、商品広告のことをブランドプロモーションとは、どう考えても言えない。企業広告(ブランディング広告)ならば、ブランドプロモーションとも言える。言い換えれば、CSR広告といったところでしょうか。

どんなにブランドが確立できていたとしても、CSRのプロモーションの手法を間違えれば「偽善だ」などと言われ、逆効果になることもしばしば。CSRにおけるプロモーションの難しい所です。

しかしながら、CSRとはポーター氏の言うように、企業の経営戦略そのもの。松下幸之助、渋沢栄一。もっと前で言えば、二宮尊徳、石田梅岩など。江戸時代の商家家訓(「三方よし」など)も、今なお語り継がれる経営理念ですね。その考え方は、自身(企業)の価値観を的確に表現し、ブランディングされ、それ自体がプロモーションとなっています。語り継がれるものがあるって、ブランドですよねぇ。

また、僕は、CSRは「pragmatic idealists(実用主義の理想主義者)」だと考えています。つまり、ちゃんとお金を儲けながら、楽しみながら、世のため人のためになることをする企業活動、のことです。ただマーケティング視点で、ファンを増やそうとする動きとはまた違います。またブランドプロモーションは、広告ではありますが通常の広告コミュニケーションとは異なります。

難易度としては難しいほうだと思いますが、CSRを考え・実行することで、それそのものがブランドプロモーションになると考えています。では、その具体的な方法を紹介していきます。



‖ソリューション・フォーカス・アプローチ
ミッション・オリエンテッド・アプローチ(理念重視指向)とソリューション・フォーカス・アプローチ(問題解決指向)の交わる先に、CSRやがあると考えています。


具体的なブランドプロモーションの内容でいうと、この二つの考え方が非常に重要です。そもそも理念のない企業活動をしている会社なんてないとは思いますが、形だけの企業理念の会社が多いのもまた事実。売上げがあがるプロモーションなのかどうかとかではなく、「自社が出すべき商品・サービスなのか」、「この商品・サービスで、誰の"困った"を解決できるのだろうか」というビジョンが必要だと思うのです。


まさに、上記の2つの考え方はCSRに直結します。ゆえに、その考えを貫く事で、「ブランドプロモーション」に成り得るのではないかと。また、ミッション・オリエンテッド・アプローチは、非常にCSR的なフレームワークです。例えば、「エコ活動として、木を植えたい!」といった、ただの思いつきからCSR活動をスタートするのではなく、企業理念から考えて、自社がすべきCSR活動とは何だろう?といった行動も導く事が可能になります。


商品・サービスありきではなく、あくまで企業ミッションから考え始める。こうすることによって、CSR活動のブレもなくなりますし、自社のアイデンティティ・存在意義も出てくるのです。手段と目的のメタファー(比喩)を思い出して下さい。CSR活動はあくまでも、企業ミッションを達成するための手段です。目的は「企業ミッションを達成すること」ですね。手段からのアプローチですと、ツールに踊らされたり、迷ってしまいデザインやコミュニケーションにブレがでてくる。そうならないための、フレームワークです。ブランドメッセージが定まっていなければ、ブランドには成り得ません。



‖ ビック・アイディール
もう一つフレームワークをご紹介。「ビック・アイディール」は広告会社オグルヴィ・アンド・メイザーの社会的課題解決型ブランディングメソッドのことです。さすが、オグルヴィさん。色々な広告・マーケティング業界誌・Webなどでも紹介されていますね。CSRブランディングにおいて非常に重要な示唆になると思いますので今一度振り返りましょう。3つのポイントにまとめてみました。



1、「ブランド×××は、もしも○○○ならば、世の中がもっと良くなると信じている」
このフレーズに自社の想いをあてはめるだけ。社会において、自分たちが果たすべき役割は何か、自分たちができると信じることが重要なのです。

2、ポジショニングの検討
たどり着くまでの過程では、競合他社の分析も行う。しかし、それはあくまで他社との比較からではなく、自分たちを見つめ直し自分たちが信じていることから導き出されるもの。僕が何時も言っている、「宝探し」をしましょう、ということですね。

3、「文化的テンション」と「ブランドの理想像」の構築
文化的テンションとは、消費者のニーズをはるかに超越した、ブランドが取り組むべき社会課題のこと。ブランドの理想像とは、その課題の解決に対し、ブランドがどう貢献できるかのビジョン・ミッションのこと。



ブランドが確立できていなければ、ブランドプロモーションはできません。CSRにおけるブランドプロモーションは、まだまだ実例も少なく、これからというジャンルだと思います。人によってはCSRコミュニケーションとも表現します。


中小零細企業でも、大企業でもブランドプロモーションの重要度は高くなる一方ではないでしょうか。極端にいうと、独創的な社会的価値がない企業は、世の中からなくなっても、多くの人は困りません。類似の商品・サービスはどの業界でも多いし、人の役に立たない、もしくは環境負荷が高い、顧客以外の誰かを不幸にするなどの商品・サービスなんて誰が望むのでしょうか?




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安藤光展

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