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事故がなくても、我々は常に被曝(ひばく)をしている! けど大丈夫。放射線をタバコにたとえると?
理系博士研究者の一人が考えるビジネスマインドと実践例
事故がなくても、我々は常に被曝(ひばく)をしている! けど大丈夫。放射線をタバコにたとえると?
ポスドク&非常勤講師生活を経て、私立大学の教育・研究職に従事する一方でポスドク時代に不動産投資を開始。職場の行き帰りの生活だけでは極めて危ういことを知るに至り、現在は会社・社会・国に過度に依存しない生き方を少しずつ実践中。
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● 放射線、放射能、放射性物質 の違い
放射線にまつわる色々な用語が飛び交っているのですが、どうも、使い方に誤りのある報道やツイートもあるので(減っては来ているようですが)、気が付いたものを少しだけ述べたいと思います。
馴染みのない方には、はっきりいって分かりにくいものばかりと思います。
放射性物質とは、放射線を出す物質を指します。放射線は、例えば、レントゲン写真のX線がその代表です。
放射能とは放射線を出す能力のことを言いますが、放射性物質が外へ出た(漏えいした)という意味でもマスコミ等では使われています。
放射線をタバコにたとえてみたいと思います。平たく言うと、
- 放射線 = タバコの煙
- 放射能 = タバコの煙を出す能力
- 放射性物質 = タバコそのもの
です。「セシウム(放射性物質(放射性同位元素))が漏れた」という報道があった時に、周りの状況がよくわからないとすると、この情報だけでは、
- 煙を かいだ だけなのか?
- タバコそのものが 外へ出たのか?
- 煙は、通常時に比べて どれくらい 煙かったのか?
が分からないのです。
● 「被曝した」という矛盾表現
ニュースで報道されている 「被曝」したという表現も矛盾しています。
我々は常に被曝し続けていますし、放射性物質が漏れているような環境で暮らしています。自然界に放射性物質(放射性同位元素)が多く存在するからです。生命の源、太陽のエネルギーの源でもあります。
なのに、被曝したと言っているのは、自然はOKで、人工物はダメ という無意味な根拠に基づいています。
ですから、人工物からの放射線被曝だからダメというのではなく、純粋に、その放射線の量で評価しないといけません。ざっくりですが、飛行機に乗れば、宇宙からやってくる放射線の影響(正確には、2次放射線が主)で、地上にいるよりも10倍くらいの被曝量になります。少々の放射線レベルの増加でびっくりするのであれば、飛行機には乗れません。
我々は常に、タバコの煙をかいで 生きているということです。
今回の話は、タバコの煙が少しきつくなったという話なのです。
本物のタバコの煙なら、喫煙者の方もいますし、そうでない方もその煙を少々吸ったとしても直ちに健康に害がでるということはありませんが、もし、その煙の量が多かったらどうでしょうか? 長期的に見れば、肺がんのリスクが高まるでしょうし、吸った瞬間に咳き込んだり、気管がやられたりするでしょう。
それが、放射線被曝に対するリスクなのです。
● 被曝を軽減するには?
そう考えると、
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20110312-OYT1T00667.htm
この読売新聞の記事がよく理解できるはずです。
つまり、
〈1〉放射線を遮る = 煙が来ないように壁を作る。
〈2〉放射線源から距離をとる = 煙から離れる
〈3〉被曝する時間を少なくする = 煙をかぐ時間を少なくする
という意味です。 実際には、放射線に限った話ではありません。
補足すると、〈1〉なら、外にある喫煙所を敷居で覆い(小屋の中にするなど)、外に直接煙が来ないようにする。という意味でもいいと思います。但し、実際には、煙(放射線)自身のある程度を防ぐことができますが、たばこ(放射性物質)自身はほぼ防ぐことができます。
〈2〉は、距離の2乗で煙の量は減って行きます。例えば、放射線源の位置から1km離れたところと比べて、10km離れたところでは、放射線の量は、100分の1になります。但し、空気には、〈1〉の効果も期待できるので、より減るのと、風向きによっては、増減があります。駅前の喫煙コーナーから見て、自分が風下にいれば、より煙は流れてくるので、注意が必要だということです。ですから、原発の位置からの風向きが気になるわけです。
● Gy(グレイ)、Sv(シーベルト)の違いは?
もう1つ、Gy(グレイ)とSv(シーベルト)の違いですが、どちらもJ/kg (ジュール/キログラム)という単位で表されます。例えば、タバコの銘柄によっても、ニコチンの量が違いますね。ここでは単純に、ニコチンの量が多ければ害が大きいと仮定させてください。その時に、ニコチンの量が一番少ないタバコを基準として、1本あたりの害について評価します。タバコを何本吸ったかに相当する指標がGy(グレイ)で、トータルのニコチンの量に相当するのがSvです。
つまり、ニコチンの量が一番少ないタバコを1本吸った場合は、Gy=Sv となりますが、ニコチンの量が倍のタバコを1本吸ったならば、Gyはそのままですが、Svの値は倍になります。というわけです。
ニコチンの量は放射線の種類によってことなりますが、現状で、問題にしているのは、ニコチンの一番少ないタバコだけなので、Gy=Sv として差し支えないわけです。
● 放射線被曝も微分積分
もう1つ、単位の話をしますと、Gy/h、Sv/h というのは、1時間あたりのGy、Svを表しています。つまり、1時間その場にいたら、それ数値分の被曝をするという意味です。もし、1分しか、その場にいなければ、被曝量は、60分の1で済みます。〈3〉の効果です。 単位時間あたりの被曝量が多くなければ、トータルの被曝量を気にするだけでOkです。放射線被曝も思いっきり、微分積分の話です。
放射線は目に見えないだけに、少しでも放射線に対する恐怖心が和らいでいただけたなら幸いです。
最後に、極めて危険な状況の中、最後の砦として決死の覚悟で作業に当たられている原発の職員のみなさんのご無事を祈らずにはいられません。
(以下もご参照ください。)