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融資無しでやばい事業は、融資を受けてもやばい
»2013年9月 8日
そろそろ脳内ビジネスの話をしようか
融資無しでやばい事業は、融資を受けてもやばい
株式会社プラムザ 代表取締役社長。システムコンサルタント。1998年に28歳で起業し、現在も現役のシステムエンジニア、コンサルトとして、ものづくりの第一線で活躍しつつ、開発現場のチームとそのリーダーのあり方を研究し続けている。
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昨日の深夜からTBSオンデマンドで半沢直樹の全7回を連続で見てしまいました。そのおかげでオリンピックの選考結果の発表の瞬間を微妙に逃してしまうという失態を犯してしまいまして残念な気分でいっぱいです。
しかしなるほど。このドラマがここ数年では異例の高視聴率を叩き出しているというのもよくわかります。脚本よくできてますね。役者もとても個性的な人が集まってます。
基本的に専門性の高い大組織を舞台にしての派閥抗争劇という意味では、1990年代に放送された「振り返れば奴がいる」に似てる気がします。あのドラマもハラハラさせられました。そしてあのころの松下由樹サンは若く可憐でしたねー。
振り奴はともかくとしまして、すっかり半沢直樹ファンになってしまった私は、もう今日の録画予約もしっかりして、これからは乗り遅れることの無いようしっかりついていく所存ではありますが、これまでの7回を見た時点で、お金を借りる立場の側の経営者として思ったことなどを書いてみようと思います。
藤沢数希氏は元外資系金融マンの立場から「なにが面白いのかわからない」との感想を書かれていまして、それが軽く叩かれていましたので、チキンな私はあらかじめ言っておきますが、私は別に
「こういうことがリアルじゃないからつまらない」
と言ってるわけではありません。むしろこんなことを言ってたらドラマ的には分かりにくくてつまらなくなると思いますので、ドラマの面白さ云々とはまた別にしてお読みいいただければと思います。
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事業資金の融資は、株式投資のナンピン買いや企業の自社株買いと似ているところがあります。
これらに共通することが何かおわかりになりますでしょうか?
それは、一見損失や被害を垂れ流しているという痛みに対し瞬間的な鎮痛効果をもたらす処置をしているものの、同時にさらなるリスクを拡大してしまっているということです。
このドラマを見ていると、事業が傾いた経営者が、銀行マンに泣きついて融資を受けようとし、見捨てられれば困り果てて最悪は自殺、審査が通ってくれればほっと一息して「ありがとうございます!!」、みたいなシーンが随所に出てくるのですが、これは現場の経営者の立場からすると「そんなことはないだろ」と思ってしまいます。
融資無しでやばい事業は、融資を受けてもやばい。(いや、むしろ、よりやばい)
です。
融資とは、ただの借金であって売上が上がったわけではないので、損益計算書的にはまったく動きがない、というか、あるとしたら金融機関への支払利息や保証協会への支払手数料やら印紙代やらの費用の増加だけです。(これがバカにならないほどでかいです。)
一方で、貸借対照表的には、確かに融資分の現金は増えますが同額の借入金も増えますので、ほとんど動きはありません。
キャッシュが増えるのでとりあえず延命はされてますが、事業が破たんした時のリスクは増えてまして、個人保証を入れさせられている中小企業の経営者的にはこの状況で「ほっ」と出来ることはまったくないです。
むしろ「退路を断たれた。さらにやべぇ。」という気持ちになると思います。「ちくしょう、あの銀行マンが断ってくれていたら諦めがついたのに」とさえ思うかも知れません。
やはり大事なことは、自殺に追い込まれるような状態まで突き進まないことだと思います。
よく成功された社長とかで
「なぜ私が成功したかって?それは成功するまで諦めなかったからだ、フォッフォッフォッ!」
とか言ってしまう人がいますが、とんでもないことです。そんな自分を客観視できていない成功者に執心して起業すると、大変なことになります。そういう話はしょっちゅうあちこちから聞きます。
大事なことは、何か不測の障害が発生した時に「帰還不能地点」の手前で引き返す勇気を持つことです。これは会社経営に限らず、中期短期のプロジェクトにおいても同じですね。
最後まで何が何でも諦めない、みたいなことをするから、失敗すればどん底まで落ちて自殺するような事態に陥るのです。
「このネジは世界に一つしかない!!」のであれば、動くべきはお金があったときです。経営破たんの寸前に銀行マンに泣きついて、仮に融資を受けられたとしても、そのカツカツのお金で新機軸を打ち出すことは無理です。
ここでも言いましたが、お金がなくなると、人と金が離れて行って、脳は真っ白になり、取りえるオプションの幅が狭まってしまいます。
学生時代麻雀打ちだった私が当時欲しかったのは、冷静に状況を見て親身になってアドバイスしてくれる雀荘のママの存在です。
「ママさん、すみません。また負けちゃって...。もうちょっとアウト(*1)お願いします。」
と言った時
「ぼうや、今日はついてないのよ。熱くなってもいいことないからもう帰りなさい。」
と言ってくれるママさんが嬉しいのです。
客層のいい雀荘には必ずママさんとかオーナーさんとか、そういう優しい人がいました。
「いいわ、いくらでも貸しましょう」
なんていう店は、全然ありがたくないです。怖いです。破滅します。
と、こんなことを思ったわけですが、繰り返しになりますが、こんな話はドラマには織り込めないと思いますし、織り込んでも全然面白くないと思うので、私の言うことは気にせず半沢次長は今の調子で、大和田常務への執拗な恨みの気持ちを持ち続けていただければと、かように思います。
もうすぐ第8話が始まりますね。
(*1)... 店からの借金。